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存命編
ep26 追憶の一夜
しおりを挟むアリシアside
そこから先は余り覚えていない
ただ私は彼の最後の言葉に従って走り続けた
(カミダさん…カミダさん、、! )
心の中で何度も彼の名を繰り返す
彼は逃げるのが得意だったがあの致命傷では……
「うっ…うう"っ、、 」
私は独りで泣きながら走り続けた
造船所跡地に帰り階段を駆け下り白い部屋に入る
バカみたいに身体が重かった
「忘れよう…全部、、」
私はそう呟いた後に目を閉じた
そして暗闇の中に入る
忘れられるわけがない…………………
目を覚ますと早朝だった
何かに取り憑かれたようにあの路地裏を彷徨った
どうしてもあの人を探してしまうのだ……
( カミダさん…… 何処なの………? )
大斧を持った怪物が破壊した民家を発見し
そのまま辺りを見回していく……
「 …… ナ、、イ、、、、? 」
周りにカミダさんの姿がなかった
息を飲んで私は前に進んでいく
うっすらと希望が見えてくる感じがしてきた
(やはりカミダさんは逃げきれた………?
動きの遅い奴に殺されるような人ではない…
もしかして今頃……
私を探しているかもしれ………………… )
私はただ理想論を語っていたに過ぎなかった
この世界が狂っていることを
何度も何度もカミダさんは教えてくれたのに……
私は絶句した
目の前には四肢を切断された彼の姿があった
その遺体の側には
何か変な模様の書かれたカードが落ちている
「う"っ… う"ぅ"っっ………
私を……独"り"に"し"な"い"でっっ……!! 」
私は号泣した
何度も何度も声を上げ続けて枯れてしまった
「彼を…クヨウしないと…………… 」
しばらくして彼の遺体を埋めることにした
私はカミダさんを抱いて独りで彷徨っていた
(これから彼は何処へ行くのかな…
彼には天国できっと…
安寧な日々が待ってるはず………… )
草原を見つけて脚を踏み入れたあと
穴を掘ったあとに彼の遺体をそこに入れる
その時に彼の上着のポケットから
あの手帳が落ちてきた
私はソレを拾ってポケットにしまった
「ゆっくり休んでください…
走りすぎて疲れたでしょう、、? 」
彼に最後の言葉を告げ
そして彼の遺体に土をかけていく
彼が言っていたクヨウの意味がわかった気がした
教えられた時はまるで理解できなかったソレを…
見送る側は寂しくて仕方がなかったのね…
私は左手で顔をこすり泣くのをやめる
これからを生きていく私の決意だ
「 私があなたの仇を取るわっ……… 」
次私と対峙した時が奴の最期………
そう心に刻み込んで独り私は歩きだした
「 、、、、、、、 」
無心で居ようともやはり頭から離れないまま
ただ前へひたすら歩いていくと………
「ココも建物が崩壊している…」
私は瓦礫や鉄柱が山のように
折り重なっている場所に辿り着いていた
ズキ"イッ……………!!!
突然頭が痛くなった
後ろから鈍器で何発も殴られているようだった
そして視界が歪み始めた
「、、、!?!? 」
徐々に足元がフラいてくる
やがて立っていることもままならなくなり……
ドサッ………………
私は倒れてしまった…
そして気を失った…………………
リータside
「っ… はっ… はっ…………! 」
私は飛び起きた
長く不思議な夢を見ていたようだった
「リータちゃん…起きた……?? 」
横でミクさんが優しく声をかけてくれた
私は………
「ミクさん…
おはようございます……… 」
私はフラついた足取りで立ち上がる
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「 気にしないで…まだ夜だよ?… 」
「それに顔が真っ青……
長く魘されていたし大丈夫、、?? 」
かなり心配をかけてしまったらしい
私はおぼつかない足取りで外へと向かい
「少しだけ……外に…………… 」
軽く目眩がするなか一言だけ応えて外に出た
綺麗な満月を見上げながら考える
先ほど見ていたのは
私が失っていた記憶だ…………
ようやく……
ようやく記憶を取り戻せたのだ………
私が何故ゾンビに襲われないのか…………
ソレは驚くほどに単純な理由だった
「私の名前は アリシア……… 」
私も彼らと同じ 怪物 だったのだ…
彼の仇を取らねばならない
今もこの世界の何処かで生きている奴を殺して…
「少し休んでて…… リータ 」
~ ep26(存命編)完 ~
・存命
生きていること
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