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復讐編
ep18 名前のない少女へ
しおりを挟むそうしているうちに学校に着いた
彼女を先導し保健室のドアを開けて中に入ると
「おかえりっ!」
美九、東真が明るく迎えてくれた
二人とも元気そうで嬉しく思う
「遅くなってごめん……」
自分は一言謝ったあと保健室に入った
無事で良かった、と微笑む美九の表情が変わる
「その可愛い子は、新しい仲間…!?」
さっそく少女に反応する
東真も遠目から興味深々に彼女を観ている
「彼女は疲れてるからあまり刺激しないように…
でも記憶を失っているから
誰かが名前をつけないといけないんだ」
そう自分は二人に説明し
横目で彼女を見ると
少女は恥ずかしそうにもじもじしていた
自分は
「でもその前に
彼女を少し治療してあげてくれると嬉しい
身体に少し打撲の痕があるから」
と続け少女が美九に治療してもらっている
ところを眺めながら
自分はガーゼと包帯などをとり
チェーンソーが掠った肩の傷を処置をした
しばらくしてまたドアが開いて
「大変だっ!……」
そう言って楽斗が勢いよく入ってきた
楽斗に警備を任していたのだ
「どうしたの?……」
恐る恐る東真が訊くと
20体以上のゾンビが向かいの家付近を
彷徨っているのを見たらしい
「結構近いね、、
今日の見張りは気を引き締めないとね 」
美九がそう言った
すると楽斗が
「誠士郎今から闘って倒さないか?」
と自分に提案する
あまりその案には賛成できない自分は
「そうしたいけど…
もう暗いしこのままいる方が安全だと思う
それに全体の数もわかっていない」
「そうか、、わかった」
そう言ったあとすぐに楽斗は横になった
自分は彼の呑み込みが早い所も流石だと思った
「ルーシーはどう?」
突然東真が意味不明なことを言いだす
しかしすぐに美九は察したのか
「うーん 響きはいいけどね、、」
その後十分くらい
少女の名前について東真と美九は話し合って
ノリノリな美九が遂に
「リータはどう?」
「いいねそれ! その子の雰囲気に
ぴったりだと思う!」
異議なしなのか東真も相打ちをうっていた
おそらく
美九は今まで女子が周りにいなかったから
相当嬉しいのだろう
かなりテンションが上がっている
そんなことを考えていると
突然、その無名の少女が
「セイシロウさんはどう思いますか?…」
いきなり聞かれたので
少し戸惑いつつも
「良い名前だと思うよ?… 」
「ならリータでお願いしますっ……」
リータは深々と頭を下げる
恥ずかしがってはいるものの内心嬉しそうだった
そんなリータの様子に安心したあと
自分がナイフを置いて寝ようとすると………
「きゃぁ"あ"あ"あ"っ"………!!、、」
付近から女性の悲鳴が聞こえた
この学校の何処かに生存者がいるらしい
「…………!?
誰かがゾンビに襲われているのか?、、」
自分はそう言って
反射的にナイフを掴み木刀を持つ
「でも……夜だよ?、、」
そんな自分を見て意図を汲み取ったのか
東真が怖じけるように言う
「生存者はできるだけ助けたいんだろ?
誠士郎は」
寝付けなかったのか楽斗が起き上がりそう言う
「ああ、、
でも東真の言う通り危ない……」
自分達はまだ夜の中での戦闘をしたことがない
理由は当然だけど
それはあまりにも 危険 すぎるからだ
人間は普段からかなり視覚に頼って動いている
ゾンビは聴覚に頼っているので
正直話にならない気がする
ゾンビは聴力で探知するから
たとえ 暗闇 でも普通に襲ってくるはずだ
「夜はゾンビの独壇場なのですね?…」
立ち上がったリータが透き通った声で言う
そして…
「なら
私の性質を利用してみてはどうですか?」
そう提案してくれた
「 ……… 」
自分は悩み沈黙する…
リータがゾンビに感知されないのは既知だけど
しかし仮にゾンビがリータを襲ったりしたら
その時に自分は助けられるのか…??
不安ばかり募るなか自分は黙っていると
「私の身の安全は考えなくて良いです…
セイシロウさんが助けてくれなければ
そもそも私はここに居ませんから 」
そう笑顔で伝えてくれた
その言葉を聞いてようやく自分は口を開く
「わかった、、
もし危なかったら絶対に逃げるように…
素早く駆けつけて助けるから 」
そうリータに伝えるのが精一杯だった
彼女が微笑みながら頷いてくれたのが嬉しかった
「よしっ! やってやるか……!!」
楽斗のその言葉を合図に
みんなは 武器を持ち保健室を出た
そのまま正面玄関の鍵を開けて
外に出て悲鳴のした方向へ急いで向かう
「もしかして…
運動場に逃げ込んだのかな?、、」
そう美九がつぶやくと
「確かに!
そっちのほうが広くて逃げやすそうだし 」
楽斗もソレに納得しているようだ
数十秒後、自分たちは運動場についた
自分たちの近くに街灯があったため
今は明るいけど………
「運動場はやっぱ見えにくいな」
その自分の発言をきっかけとして
今夜の作戦をみんなに伝えた
そしてリータの性質のことも
楽斗や美九はやはり驚いていた
そして
「悲鳴をあげた女性の姿も見えないね…
でもこれを使おう!」
と東真が答えると手に何かを持っていて
運動場の一部が明るく照らされた
「懐中電灯って学校にあったのか??」
楽斗が驚いたように聞く
「いや、
あのスーパーマーケットで盗ってた 」
と東真が答える
楽斗がそれを聞いて感心するなか
「あ! 木の上に人がいる………!!」
懐中電灯で照らして見つけたようだった
恐らく大量のゾンビに追われて逃げ込んだのだろう
そして次の瞬間………
「ひっ、、ひいっっ……!!」
東真がいきなり腰を抜かした
ひどく怯えた様子だったがなんとか言葉を振り絞り
「き、木の下に
沢山のゾンビがウジャウジャ群がってるっ…!! 」
そう震えた声で叫んだ
かなりショッキングなものを見たのだろう
しかし彼に構ってはいられない
( やるしかないっ!!、、 )
歯を食いしばって木刀を構えた後に
深呼吸をしたあとに
「いくぞ………楽斗っ!!
リータも後をついてきて……!
美九と東真は後方で待機し
ライトで照らしながら指示を出してっ…!!」
そう言って自分は駆け出した
~ ep18完 ~
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