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第二章
駒
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***
少し癖のある、淡い赤紫の髪。
まさかとは思ったが、珍しいその髪色を見てシャーロット・カルファではないかと疑った。
声をかけるとぴしりと固まったので、本人だと確信したのである。
どうやら自分と会ったことが、彼女にとって不都合なことらしい。
彼女の態度でそれを理解し、照明の消えたホールから外へ呼び出すことにした。
「来い」
そう言って歩き出すと、遅れてヒールの音がついてくる。
シュラは扉を開け、そのまましばらく歩き続けた。
(ここにいるということは、何か狙っているものがあるとみて間違いないか)
どうやってここを嗅ぎつけたのかは知らないが、場所が場所なので動き回られては面倒だ。邪魔をされる前に帰すべきだろう。
当然のごとく、反発してくるのだろうが。
密かにため息をついて立ち止まると、渋々といった体でついてきているシャーロットを振り返った。
いつもは結い上げられている髪は下ろされ、その身には漆黒のドレスを纏っている。そして顔を隠すための、鼻梁までを覆う仮面。
明かりの下で見た彼女の普段とは異なる装いに、シュラは一つの案を思いつく。
(一度…試してみるか)
シャーロット・カルファという人間が使えるかどうかの検証だ。上手くいけば、今回の作戦は楽に終わる。
「シャーロット・カルファ。作戦に協力しろ」
***
(やっぱり見逃してくれませんよね…!)
シャーロットはシュラを追いホールの外に出る羽目になった。
もともとオークション参加者がホールに集まっている間に劇場内を捜索する計画だったため、本来なら何の問題もない。
しかし要注意人物に呼び出されたというのがまずいのだ。
(今度こそ銃殺されたりして…)
びくびくしながらもついて行くと、シュラが体ごと振り返る。
彼はそのまましばし黙っていたが、やがて口を開いた。
「シャーロット・カルファ。作戦に協力しろ」
唐突に、さらっと吐かれた信じられない言葉に、シャーロットは自分の耳を疑った。
作戦とはユラの言っていたオークションを潰すためのものだろう。それに戦えない自分を参加させようと言うのだ。
これが冗談であったなら無理にでも笑ってみせたが、残念ながら彼がそういうタイプの人間ではないことは知っている。
「えっと…本気、ですよね」
「ああ。命の保証はないがな」
危険な作戦になるだろうことは容易に想像ができる。もちろん簡単に頷けるはずもない。
「いきなりすぎませんか?それに昨日命はかけられないって言いましたよね?」
「だが俺も言ったはずだ。おまえの意志は関係ないと。俺が使うと決めたら駒となる他ない。そうだろう?使用人を名乗りたいのならな」
シャーロットは押し黙った。立場上、彼の言うことは正しい。
そうは思いつつも納得がいかない、と睨みつけたが、対するシュラは薄く笑みを浮かべるだけである。
「おまえにもメリットはあるぞ」
「メリット?」
「今夜も様々なものが出品物として登録されている。ここにいるということは、おまえの狙いはその中のどれかだろう?」
確信を持ったような問いかけに、シャーロットははっとした。
『東の湖』
絵と聞いて劇場のどこかに飾られているとばかり思っていたが、もしもその依頼の絵画が今回の出品物だったとしたら。
「俺たちの目的はオークションの阻止。そのために劇場のどこかにある商品倉庫を探し出す必要がある」
「…なるほど。協力したら、わたしも商品に近づける。もちろん自由に探していいんですよね?」
返ってきたのは沈黙。それはおそらく肯定を意味している。
彼は暗に言っているのだ。協力するなら今回の勝手な行動は咎めない、と。
見事に彼の思惑に乗せられている気もするが、参加する以外の選択肢はなかった。
例え絵が商品ではなかったとしても、劇場を彷徨い探すことはいつでもできる。ならば今は腹を括って参加する方が賢明だろう。
(これが終わればラースを助けられるかもしれない)
シュラに会ってしまったが、目的さえ果たせれば報酬を得られる可能性はある。
「…そういうことでしたら参加します」
「もとより拒否する権利はないがな」
そう言ったときの冷淡な笑みに、何やらとんでもないことをさせられそうな予感がした。
その不安を表情に出さないように努めながら、自分の役割を尋ねる。
「何をすればいいですか?」
「そう難しいことはない。主催者側の人間に接触し、裏会に参加したいと伝えろ」
「裏会?」
聞き覚えのない単語に首を傾げると、シュラは少し声を潜めて言う。
「正式な競売の前に、直接主催者から商品を買うことができる会だ。客が商品倉庫に入れる唯一の機会といえる」
今回の作戦にとってはまさに絶好の機会。
これを逃す手はない。
「ですが、裏会ってそんな簡単に参加させて貰えるんでしょうか」
「顔を知られていないおまえなら、まず疑われることはないはずだ。それに、向こうが欲しいのは利益。最低でも五億ルドを払うと言えば参加できるだろう」
「五億…」
儲けることが目的の主催者にとっては最高の客かもしれない。
その役を任されたということだ。
「ですが参加できた後は?オークションを潰す作戦なのに、わたしだけ倉庫に行っても意味が無いですよね」
「簡単な話だ。おまえに俺の魔力を送り、それを辿ることでおまえの居場所、つまり倉庫の場所を把握する。あとは制圧して終わりだ」
魔力という単語が自然に出てきたことを、今は気にしている場合ではない。
重要なのは自分が囮だということだ。
万が一相手に知られたら、その時は死を覚悟するしかないだろう。
「…敵に怪しまれたら終わりということですね」
「そういうことだ。とはいえ気負う必要はない。おまえはただ、自分の目的を果たせばいい。俺たちがそれを利用させてもらうだけだ」
シュラはそう言いながら、シャーロットの両肩を掴んで引き寄せた。
突然のその行動に驚き仮面の下で目を瞠っている姿が、シュラの瞳に映り込んでいる。
「あの、シュラ様?」
「動くな」
囁くようにそう言われ、シャーロットは身を固くした。
間近にある彼の黄金色の瞳が一瞬煌めくと、刺すような冷気を肌に感じる。
次の瞬間、体の中を冷たい何かが駆け巡り始めた。
それは触れられている肩から全身に波打つように広がっていき、体温を奪っていく。
これが魔力というものなのだろうか。
まるで頭からつま先まで、全ての細胞が凍りついていくようだった。
「これでいいだろう」
やがてシュラが手を放すと、体が熱くなり、自分の体温が戻るのを感じる。
つい先程までの冷たさが嘘のようだ。
「…やはり適応が早いな。魔力はそれを持たぬ者には毒となり、最悪の場合死に至ることもあるらしいが」
それを聞き、シャーロットは血の気が引くのを感じる。
「そ、そういうことは先に言ってください!」
下手をしたら作戦に参加できず、依頼も果たせないまま、ここで死んでいたかもしれないということだ。
そう考えると黙ってはいられず、シャーロットはシュラに詰め寄った。
「わたしを使うと決めたなら、最後まで機能するように配慮してください。それが駒を扱う人間の役目ですよね?駒を動かす前に捨てるのは馬鹿のすることです!」
シャーロットはそう言い放ったが、当主に対する言葉としては間違っているかもしれない。
しかし自分の言った事が見当違いだとは思わないため、謝るつもりはなかった。
それを聞いたシュラは気分を害した様子はなく、それどころか、なぜかふっと笑った。
(え……笑った…?)
仮面で表情はよくわからないのに、それはよく見る不敵な笑みでも、冷笑でもない気がした。
単に、何かが面白くて笑ったように見えたのだ。
あまりにも意外で、シャーロットは思わず目を瞬く。
だがすぐに、いつもの無表情に戻ってしまった。
「おまえなら適応できる。その確信はあった」
「…?それはどういう…」
聞き返したが、シュラはそれには答えず、そのままシャーロットの横を通り過ぎた。
「おまえに明日が訪れるよう、最善は尽くそう」
「え…あ、当たり前です!見殺しにしたらあの世で一生呪いますから!」
すれ違いざまに放たれた言葉に、シャーロットは振り返ることなくそう返した。
「…それは鬱陶しいな」
そんな呟きと共にホールの方へと戻っていく靴音が聞こえなくなると、大きく息を吐き出す。
武器も策もない丸腰状態というのは、誰が見ても無謀だと言うだろう。
それでも自分は彼の望む通りに動くしかない。
「行きますか…」
少し癖のある、淡い赤紫の髪。
まさかとは思ったが、珍しいその髪色を見てシャーロット・カルファではないかと疑った。
声をかけるとぴしりと固まったので、本人だと確信したのである。
どうやら自分と会ったことが、彼女にとって不都合なことらしい。
彼女の態度でそれを理解し、照明の消えたホールから外へ呼び出すことにした。
「来い」
そう言って歩き出すと、遅れてヒールの音がついてくる。
シュラは扉を開け、そのまましばらく歩き続けた。
(ここにいるということは、何か狙っているものがあるとみて間違いないか)
どうやってここを嗅ぎつけたのかは知らないが、場所が場所なので動き回られては面倒だ。邪魔をされる前に帰すべきだろう。
当然のごとく、反発してくるのだろうが。
密かにため息をついて立ち止まると、渋々といった体でついてきているシャーロットを振り返った。
いつもは結い上げられている髪は下ろされ、その身には漆黒のドレスを纏っている。そして顔を隠すための、鼻梁までを覆う仮面。
明かりの下で見た彼女の普段とは異なる装いに、シュラは一つの案を思いつく。
(一度…試してみるか)
シャーロット・カルファという人間が使えるかどうかの検証だ。上手くいけば、今回の作戦は楽に終わる。
「シャーロット・カルファ。作戦に協力しろ」
***
(やっぱり見逃してくれませんよね…!)
シャーロットはシュラを追いホールの外に出る羽目になった。
もともとオークション参加者がホールに集まっている間に劇場内を捜索する計画だったため、本来なら何の問題もない。
しかし要注意人物に呼び出されたというのがまずいのだ。
(今度こそ銃殺されたりして…)
びくびくしながらもついて行くと、シュラが体ごと振り返る。
彼はそのまましばし黙っていたが、やがて口を開いた。
「シャーロット・カルファ。作戦に協力しろ」
唐突に、さらっと吐かれた信じられない言葉に、シャーロットは自分の耳を疑った。
作戦とはユラの言っていたオークションを潰すためのものだろう。それに戦えない自分を参加させようと言うのだ。
これが冗談であったなら無理にでも笑ってみせたが、残念ながら彼がそういうタイプの人間ではないことは知っている。
「えっと…本気、ですよね」
「ああ。命の保証はないがな」
危険な作戦になるだろうことは容易に想像ができる。もちろん簡単に頷けるはずもない。
「いきなりすぎませんか?それに昨日命はかけられないって言いましたよね?」
「だが俺も言ったはずだ。おまえの意志は関係ないと。俺が使うと決めたら駒となる他ない。そうだろう?使用人を名乗りたいのならな」
シャーロットは押し黙った。立場上、彼の言うことは正しい。
そうは思いつつも納得がいかない、と睨みつけたが、対するシュラは薄く笑みを浮かべるだけである。
「おまえにもメリットはあるぞ」
「メリット?」
「今夜も様々なものが出品物として登録されている。ここにいるということは、おまえの狙いはその中のどれかだろう?」
確信を持ったような問いかけに、シャーロットははっとした。
『東の湖』
絵と聞いて劇場のどこかに飾られているとばかり思っていたが、もしもその依頼の絵画が今回の出品物だったとしたら。
「俺たちの目的はオークションの阻止。そのために劇場のどこかにある商品倉庫を探し出す必要がある」
「…なるほど。協力したら、わたしも商品に近づける。もちろん自由に探していいんですよね?」
返ってきたのは沈黙。それはおそらく肯定を意味している。
彼は暗に言っているのだ。協力するなら今回の勝手な行動は咎めない、と。
見事に彼の思惑に乗せられている気もするが、参加する以外の選択肢はなかった。
例え絵が商品ではなかったとしても、劇場を彷徨い探すことはいつでもできる。ならば今は腹を括って参加する方が賢明だろう。
(これが終わればラースを助けられるかもしれない)
シュラに会ってしまったが、目的さえ果たせれば報酬を得られる可能性はある。
「…そういうことでしたら参加します」
「もとより拒否する権利はないがな」
そう言ったときの冷淡な笑みに、何やらとんでもないことをさせられそうな予感がした。
その不安を表情に出さないように努めながら、自分の役割を尋ねる。
「何をすればいいですか?」
「そう難しいことはない。主催者側の人間に接触し、裏会に参加したいと伝えろ」
「裏会?」
聞き覚えのない単語に首を傾げると、シュラは少し声を潜めて言う。
「正式な競売の前に、直接主催者から商品を買うことができる会だ。客が商品倉庫に入れる唯一の機会といえる」
今回の作戦にとってはまさに絶好の機会。
これを逃す手はない。
「ですが、裏会ってそんな簡単に参加させて貰えるんでしょうか」
「顔を知られていないおまえなら、まず疑われることはないはずだ。それに、向こうが欲しいのは利益。最低でも五億ルドを払うと言えば参加できるだろう」
「五億…」
儲けることが目的の主催者にとっては最高の客かもしれない。
その役を任されたということだ。
「ですが参加できた後は?オークションを潰す作戦なのに、わたしだけ倉庫に行っても意味が無いですよね」
「簡単な話だ。おまえに俺の魔力を送り、それを辿ることでおまえの居場所、つまり倉庫の場所を把握する。あとは制圧して終わりだ」
魔力という単語が自然に出てきたことを、今は気にしている場合ではない。
重要なのは自分が囮だということだ。
万が一相手に知られたら、その時は死を覚悟するしかないだろう。
「…敵に怪しまれたら終わりということですね」
「そういうことだ。とはいえ気負う必要はない。おまえはただ、自分の目的を果たせばいい。俺たちがそれを利用させてもらうだけだ」
シュラはそう言いながら、シャーロットの両肩を掴んで引き寄せた。
突然のその行動に驚き仮面の下で目を瞠っている姿が、シュラの瞳に映り込んでいる。
「あの、シュラ様?」
「動くな」
囁くようにそう言われ、シャーロットは身を固くした。
間近にある彼の黄金色の瞳が一瞬煌めくと、刺すような冷気を肌に感じる。
次の瞬間、体の中を冷たい何かが駆け巡り始めた。
それは触れられている肩から全身に波打つように広がっていき、体温を奪っていく。
これが魔力というものなのだろうか。
まるで頭からつま先まで、全ての細胞が凍りついていくようだった。
「これでいいだろう」
やがてシュラが手を放すと、体が熱くなり、自分の体温が戻るのを感じる。
つい先程までの冷たさが嘘のようだ。
「…やはり適応が早いな。魔力はそれを持たぬ者には毒となり、最悪の場合死に至ることもあるらしいが」
それを聞き、シャーロットは血の気が引くのを感じる。
「そ、そういうことは先に言ってください!」
下手をしたら作戦に参加できず、依頼も果たせないまま、ここで死んでいたかもしれないということだ。
そう考えると黙ってはいられず、シャーロットはシュラに詰め寄った。
「わたしを使うと決めたなら、最後まで機能するように配慮してください。それが駒を扱う人間の役目ですよね?駒を動かす前に捨てるのは馬鹿のすることです!」
シャーロットはそう言い放ったが、当主に対する言葉としては間違っているかもしれない。
しかし自分の言った事が見当違いだとは思わないため、謝るつもりはなかった。
それを聞いたシュラは気分を害した様子はなく、それどころか、なぜかふっと笑った。
(え……笑った…?)
仮面で表情はよくわからないのに、それはよく見る不敵な笑みでも、冷笑でもない気がした。
単に、何かが面白くて笑ったように見えたのだ。
あまりにも意外で、シャーロットは思わず目を瞬く。
だがすぐに、いつもの無表情に戻ってしまった。
「おまえなら適応できる。その確信はあった」
「…?それはどういう…」
聞き返したが、シュラはそれには答えず、そのままシャーロットの横を通り過ぎた。
「おまえに明日が訪れるよう、最善は尽くそう」
「え…あ、当たり前です!見殺しにしたらあの世で一生呪いますから!」
すれ違いざまに放たれた言葉に、シャーロットは振り返ることなくそう返した。
「…それは鬱陶しいな」
そんな呟きと共にホールの方へと戻っていく靴音が聞こえなくなると、大きく息を吐き出す。
武器も策もない丸腰状態というのは、誰が見ても無謀だと言うだろう。
それでも自分は彼の望む通りに動くしかない。
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