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やすみに連れられてやって来たのは、俺が自転車を停めた公園だった。
やすみは俺をベンチに座らせると、俺の正面に立ち尽くす。どうしたらいいのかわからない、そんな様子ではなくて、俺を気づかうように辺りの様子を警戒しているようだ。
どうやら、泰明が追って来てないかを確認しているようだった。しかし、その心配はないだろう。
あいつの性格を考えれば、わざわざ俺の事なんかを追って来るはずはないのだから。
でも、やすみのその気づかいはとてもありがたかった。
そのお陰か、過呼吸を起こしかけて、浅くなっていた呼吸も安定を取り戻しつつあった。
「涼君……大丈夫?」
呼び掛けに応え顔を上げると、心配そうな面持ちのやすみが俺の顔を覗きこんでいた。
「ああ……もう大丈夫だ。心配かけちゃったな」
「そっか。それなら良かった。本当に心配したよー。それに、あの人も追って来てないみたいだからもう大丈夫だよ」
やすみはいい終えると安堵したのを示すように瞳を閉じ、ひとつため息をつくと、俺の座るベンチへと腰をおろした。
「もうちょっとで、お母さん迎えに来るからさ」
「そうか……なんか、悪かったな変な事に付き合わせちゃって。俺は、もう少し休んでから帰るから、親が迎えに来たらやすみは気にせず帰っていいから」
「ん?なーに言ってるのよ。涼君も一緒に車で帰るの」
「いや、いいよ自転車もあるし」
言いながら園内に停めていた愛車を指差す。所々錆びて老朽化した自転車と今の俺どちらがよりボロボロなのだろうか?
「ダーメ。こんな状態なのに放って帰れないよ。自転車はここに停めておいてまた取りに来たらいいんじゃない?」
「いや、そうは言ってもここまで来る足が無いからさ、それにやすみにもやすみのお母さんにも悪いからいいよ」
言って立ち上がり、自転車へと近づく。そして鍵を解錠すると自転車へと跨がった。
「本当に大丈夫なの……?」
その言葉に嘘偽りはないようで、思案顔でこちらを見据えている。
俺は大丈夫だと親指を立てて合図を送り自転車のスタンドを外した。
「おっと!?……あれ?」
跨ってスタンドをおろした瞬間、着地の衝撃がモロに体に伝わってきたのだ。
自転車から降り、恐る恐る後輪を確認する。
いつもならタイヤ一杯に入っている空気が完全に全て抜けていた。そう、パンクだ。
「マジかよ……」
花火大会にやってくる直前、田んぼのあぜ道を走ってきた事を思い出した。
あんなにパンクはしないでくれと念じたのに、神様はいないのかもしれない。
いや、無理もないか。もともと自転車がボロボロなのだから。それに自転車で走るような道でもなかったし。
「どうしたの?」
「パンクしてたんだ。もうこの時間じゃ自転車屋も開いてないし困ったな」
「じゃあ、仕方がないね」
イタズラを仕掛けてまんまと成功した時の少年のような笑みをたたえてやすみは言った。
「なんかその言い方だと、やすみがやったみたいだな。それに、仕方がないってのはどういう意味だ?」
「ひどい、私がそんなことするはずないじゃない。そもそも、その自転車が涼君のだって事もしらなかったし」
心外だと口を尖らせ抗議するやすみ。
「いや、冗談だよ。やすみがそんなことするなんて思ってないから、ごめん」
「わかればよろしい」
言ってから舌を小さく出して、なんちゃってと続ける。
「あとね、仕方がないってのは、お母さんの車で私と一緒に帰る事」
やすみは、得意気に人差し指を立てる。
軽く状況を整理してみても、他に選択肢はないようだ。今日の体調では、とてもじゃないが歩いて帰れる距離ではない。
「……そうだな。お言葉に甘えさせてもらうよ」
「うん。うん。それがいいよ。うん」
それからほどなくして、やすみの母親が車で現れた。
やすみの母親とした会話は、挨拶と家の場所を伝えたくらいのものだったのだけれど、やすみが自転車の件を話したせいで後日、公園まで車で送ってくれる事になったのだった。
やすみは俺をベンチに座らせると、俺の正面に立ち尽くす。どうしたらいいのかわからない、そんな様子ではなくて、俺を気づかうように辺りの様子を警戒しているようだ。
どうやら、泰明が追って来てないかを確認しているようだった。しかし、その心配はないだろう。
あいつの性格を考えれば、わざわざ俺の事なんかを追って来るはずはないのだから。
でも、やすみのその気づかいはとてもありがたかった。
そのお陰か、過呼吸を起こしかけて、浅くなっていた呼吸も安定を取り戻しつつあった。
「涼君……大丈夫?」
呼び掛けに応え顔を上げると、心配そうな面持ちのやすみが俺の顔を覗きこんでいた。
「ああ……もう大丈夫だ。心配かけちゃったな」
「そっか。それなら良かった。本当に心配したよー。それに、あの人も追って来てないみたいだからもう大丈夫だよ」
やすみはいい終えると安堵したのを示すように瞳を閉じ、ひとつため息をつくと、俺の座るベンチへと腰をおろした。
「もうちょっとで、お母さん迎えに来るからさ」
「そうか……なんか、悪かったな変な事に付き合わせちゃって。俺は、もう少し休んでから帰るから、親が迎えに来たらやすみは気にせず帰っていいから」
「ん?なーに言ってるのよ。涼君も一緒に車で帰るの」
「いや、いいよ自転車もあるし」
言いながら園内に停めていた愛車を指差す。所々錆びて老朽化した自転車と今の俺どちらがよりボロボロなのだろうか?
「ダーメ。こんな状態なのに放って帰れないよ。自転車はここに停めておいてまた取りに来たらいいんじゃない?」
「いや、そうは言ってもここまで来る足が無いからさ、それにやすみにもやすみのお母さんにも悪いからいいよ」
言って立ち上がり、自転車へと近づく。そして鍵を解錠すると自転車へと跨がった。
「本当に大丈夫なの……?」
その言葉に嘘偽りはないようで、思案顔でこちらを見据えている。
俺は大丈夫だと親指を立てて合図を送り自転車のスタンドを外した。
「おっと!?……あれ?」
跨ってスタンドをおろした瞬間、着地の衝撃がモロに体に伝わってきたのだ。
自転車から降り、恐る恐る後輪を確認する。
いつもならタイヤ一杯に入っている空気が完全に全て抜けていた。そう、パンクだ。
「マジかよ……」
花火大会にやってくる直前、田んぼのあぜ道を走ってきた事を思い出した。
あんなにパンクはしないでくれと念じたのに、神様はいないのかもしれない。
いや、無理もないか。もともと自転車がボロボロなのだから。それに自転車で走るような道でもなかったし。
「どうしたの?」
「パンクしてたんだ。もうこの時間じゃ自転車屋も開いてないし困ったな」
「じゃあ、仕方がないね」
イタズラを仕掛けてまんまと成功した時の少年のような笑みをたたえてやすみは言った。
「なんかその言い方だと、やすみがやったみたいだな。それに、仕方がないってのはどういう意味だ?」
「ひどい、私がそんなことするはずないじゃない。そもそも、その自転車が涼君のだって事もしらなかったし」
心外だと口を尖らせ抗議するやすみ。
「いや、冗談だよ。やすみがそんなことするなんて思ってないから、ごめん」
「わかればよろしい」
言ってから舌を小さく出して、なんちゃってと続ける。
「あとね、仕方がないってのは、お母さんの車で私と一緒に帰る事」
やすみは、得意気に人差し指を立てる。
軽く状況を整理してみても、他に選択肢はないようだ。今日の体調では、とてもじゃないが歩いて帰れる距離ではない。
「……そうだな。お言葉に甘えさせてもらうよ」
「うん。うん。それがいいよ。うん」
それからほどなくして、やすみの母親が車で現れた。
やすみの母親とした会話は、挨拶と家の場所を伝えたくらいのものだったのだけれど、やすみが自転車の件を話したせいで後日、公園まで車で送ってくれる事になったのだった。
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