14 / 23
ナナケンジャ2
しおりを挟む
シフィエス宅の裏庭に連れてこられると、サギカは僕に折れた木剣を放り投げなげた。
「ほら、ガキ。そいつでそれを切ってみろ」
サギカが首で指す先にあるのは、シフィエスが大事に育てている、茎のしっかりとした花だった。
突っ込みどころは多数あるが、
「えっと、サギカ……様?これは木ではないですが」
まずは木ではないことを指摘した。
するとサギカはサラサラの前髪を掻き上げ
「手始めだ。最初から木が切れる訳がないだろ」
実際の所、僕は木を切り倒した事がある。それも昨日の話だ。その事実を知らないサギカが無理だと主張するのは無理のない事だ。
しかし、問題はそれ以外にもまだある。折れてしまった木剣では花の茎であったとしても、断ち切る事はできないだろう。
僕の後ろで、怪しく目を光らせるシフィエスも気になるが……
「刀身が無いから無理だと?それは言い訳だな」
「え、でも……」
僕の様子を見たサギカはイラつきを隠さない。舌打ちをしてから、僕に先程放り投げた木剣を奪還すると、右手で木剣を体の正面で構える。
そして、こう言い放った。
「おいガキ!一度しか手本は見せてやらないからな」
そしてサギカは腰を深く落とし深呼吸、小声で何かを呟く____すると、木剣の切断面から光の刀身がミルミルと伸びていく!
僕が使っていた木剣よりも長く、立派な刀身。
あれはなんだ?
「光の魔法の応用だ。今回はお前に合わせてこれにしてやったんだ感謝しろよ?」
そう言うとサギカは、木剣、もとい光の剣をシフィエスの花に向かって振り抜いた。
同時にシフィエスの悲鳴が上がったがそちらを見ている余裕は無かった。
力感を全く感じさせず、無駄のない水平斬り。
光が通り過ぎだ数秒後。斬られた事を思い出したかのように、茎と花がハラリと二つに分かれポトリと地面に落ちた。
声が出なかった。目の前で見せられた圧倒的光景に畏怖すら覚えた。
自分が今までやってきたお遊びとの差を、一瞬でわからさせられた。
「す、凄い」
後ろで大人しく顛末を見届けていたはずのマリエスも思わず声を漏らす。
「ここまでの事をやれとは言わない」
サギカは背中で語る。
そして、振り返りざまにもう一言。
「刀身を出す事が出来たら第一段階は合格にしてやる」
こちらに再度木剣の放り投げると、サギカは一人、シフィエスの家へ戻っていく。
放心しながらもなんとか木剣を受け止め、まじまじと観察をしてみるも、怪しいところは一切ない。
「シフィエスさん!今のってどうやったんですか?」
シフィエスからの返答はないが、無惨にも切り落とされてしまった花を拾い上げ、悲しげに微笑んでいた。
……今は放っておこう。
それならこの場に居て、多少でも魔法の知識のある別の人に聞くのが手っ取り早い。
「マリエス!今の説明できる?」
マリエスはシフィエスの背中を優しく撫でていたが、それを中断して僕の方に振り返る。
「えっ?今の?多分、光の魔法……かな?」
「光の魔法か。マリエスには使える?」
マリエスは一度考えるように視線を泳がせてから答えた。
「光の魔法は得意じゃないけど、風の魔法をうまくすれば、できると思うよ」
「なるほど。だったら、僕に教えてくれない?」
「えっと……」
マリエスは再度、視線を泳がせてからたどたどしく答える。
「ロウエに風の魔法が使えるかどうかもわからないし。うーん、えっと……」
「使えたらラッキー。使えなかったらまた別の人に教えて貰うからさ!ねっ!?いいでしょ!?」
「うーん。……ロウエがそれでいいならいいけど。まだ、私もお勉強中だから、上手には教えられないよ?」
「ああそれで良い!」
「わかった。じゃあ、まずね____」
_______________________
「むむむむむ」
「ロウエ。一度休憩にしない?」
マリエスに風の魔法を習い始めてどれくらいの時間がたったかはわからないが、頭が恒星を指し示すくらいには時間が過ぎていた。
つまり、お昼が近いという事だ。
昼には一度は帰ってくるように母さんに言われているから、成果は全く上がっていないが、頃合いか。
「____そうだね」
そう言って立ち上がると、マリエスに手を差し出す。マリエスは僕の手を掴むと同時に、首をかしげながら聞いてきた。
「ねえロウエ、私も一緒に行ってもいい?」
なんでそんな事を言い出したのかと思案。現在のシフィエス邸の様子を思い浮かべて納得した。
きっと気まずい雰囲気になっているに違いない。
そうか。天真爛漫なマリエスでも、思うところがあるという所か。
それならば……
「いいよ。母さんも賑やかな方が喜ぶし」
「ありがとう」
すぐにマリエスを引き起こすと、木剣を拾い上げる事も忘れずに家に戻った。
「ほら、ガキ。そいつでそれを切ってみろ」
サギカが首で指す先にあるのは、シフィエスが大事に育てている、茎のしっかりとした花だった。
突っ込みどころは多数あるが、
「えっと、サギカ……様?これは木ではないですが」
まずは木ではないことを指摘した。
するとサギカはサラサラの前髪を掻き上げ
「手始めだ。最初から木が切れる訳がないだろ」
実際の所、僕は木を切り倒した事がある。それも昨日の話だ。その事実を知らないサギカが無理だと主張するのは無理のない事だ。
しかし、問題はそれ以外にもまだある。折れてしまった木剣では花の茎であったとしても、断ち切る事はできないだろう。
僕の後ろで、怪しく目を光らせるシフィエスも気になるが……
「刀身が無いから無理だと?それは言い訳だな」
「え、でも……」
僕の様子を見たサギカはイラつきを隠さない。舌打ちをしてから、僕に先程放り投げた木剣を奪還すると、右手で木剣を体の正面で構える。
そして、こう言い放った。
「おいガキ!一度しか手本は見せてやらないからな」
そしてサギカは腰を深く落とし深呼吸、小声で何かを呟く____すると、木剣の切断面から光の刀身がミルミルと伸びていく!
僕が使っていた木剣よりも長く、立派な刀身。
あれはなんだ?
「光の魔法の応用だ。今回はお前に合わせてこれにしてやったんだ感謝しろよ?」
そう言うとサギカは、木剣、もとい光の剣をシフィエスの花に向かって振り抜いた。
同時にシフィエスの悲鳴が上がったがそちらを見ている余裕は無かった。
力感を全く感じさせず、無駄のない水平斬り。
光が通り過ぎだ数秒後。斬られた事を思い出したかのように、茎と花がハラリと二つに分かれポトリと地面に落ちた。
声が出なかった。目の前で見せられた圧倒的光景に畏怖すら覚えた。
自分が今までやってきたお遊びとの差を、一瞬でわからさせられた。
「す、凄い」
後ろで大人しく顛末を見届けていたはずのマリエスも思わず声を漏らす。
「ここまでの事をやれとは言わない」
サギカは背中で語る。
そして、振り返りざまにもう一言。
「刀身を出す事が出来たら第一段階は合格にしてやる」
こちらに再度木剣の放り投げると、サギカは一人、シフィエスの家へ戻っていく。
放心しながらもなんとか木剣を受け止め、まじまじと観察をしてみるも、怪しいところは一切ない。
「シフィエスさん!今のってどうやったんですか?」
シフィエスからの返答はないが、無惨にも切り落とされてしまった花を拾い上げ、悲しげに微笑んでいた。
……今は放っておこう。
それならこの場に居て、多少でも魔法の知識のある別の人に聞くのが手っ取り早い。
「マリエス!今の説明できる?」
マリエスはシフィエスの背中を優しく撫でていたが、それを中断して僕の方に振り返る。
「えっ?今の?多分、光の魔法……かな?」
「光の魔法か。マリエスには使える?」
マリエスは一度考えるように視線を泳がせてから答えた。
「光の魔法は得意じゃないけど、風の魔法をうまくすれば、できると思うよ」
「なるほど。だったら、僕に教えてくれない?」
「えっと……」
マリエスは再度、視線を泳がせてからたどたどしく答える。
「ロウエに風の魔法が使えるかどうかもわからないし。うーん、えっと……」
「使えたらラッキー。使えなかったらまた別の人に教えて貰うからさ!ねっ!?いいでしょ!?」
「うーん。……ロウエがそれでいいならいいけど。まだ、私もお勉強中だから、上手には教えられないよ?」
「ああそれで良い!」
「わかった。じゃあ、まずね____」
_______________________
「むむむむむ」
「ロウエ。一度休憩にしない?」
マリエスに風の魔法を習い始めてどれくらいの時間がたったかはわからないが、頭が恒星を指し示すくらいには時間が過ぎていた。
つまり、お昼が近いという事だ。
昼には一度は帰ってくるように母さんに言われているから、成果は全く上がっていないが、頃合いか。
「____そうだね」
そう言って立ち上がると、マリエスに手を差し出す。マリエスは僕の手を掴むと同時に、首をかしげながら聞いてきた。
「ねえロウエ、私も一緒に行ってもいい?」
なんでそんな事を言い出したのかと思案。現在のシフィエス邸の様子を思い浮かべて納得した。
きっと気まずい雰囲気になっているに違いない。
そうか。天真爛漫なマリエスでも、思うところがあるという所か。
それならば……
「いいよ。母さんも賑やかな方が喜ぶし」
「ありがとう」
すぐにマリエスを引き起こすと、木剣を拾い上げる事も忘れずに家に戻った。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
合成師
あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる