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モンブランの悪魔15
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天屯の案内で進んでいくと、とある教室にたどり着く。
教室の用途を説明する室名札には、文芸部と記されていた。
天屯はノックもせずに勢いよく扉を開くと、教室の中には一人の人物の姿があった。
その人物が座る長机にはハードカバーの本が開いた状態で置かれていて、天屯が取り乱していたと話していたとは思えない程に落ち着いて見えた。
私達が入ってきた事でその人物は顔を上げる。
大人しい、物静か。そんな言葉がよく似合う落ち着いた雰囲気の人物。長い前髪が目元を隠していて、どんな表情をしているのかがよくわからなかった。
「美波ちゃん!連れてきたよ!」
声をかけられた美波は小さく一つ頷くと、私の方へ顔を向けた。前髪のせいで、視線を向けられているのかはわからない。
「ご足労頂きまして、ありがとうございます」
美波は立ち上がり挨拶をしたあと深く頭を下げた。そして続けて自己紹介をしてくれた。
「一年C組所属、桜丘美波です。勇利先輩の事は存じ上げております。姉もお世話になっていましたよね」
初対面だと勝手に思い込んでいたけれど、一年C組には一度訪れている。覚えていなかった事に謝意を覚えながらも、聞き流す事はできない言葉を反復してしまう。
「お姉さん?もしかして……」
一人思い当たる人物の顔があった。桜丘由乃。中学からの同級生で私が苦手としていた人物だ。
汐音や立花くんが働く『すぎうら』でも高校時代にアルバイトをしていて、嫌でも顔を合わす機会はあったけれど、あまり話すことはなかった。
「そうです。桜丘由乃です。姉からはかねがねお話は伺っていましたよ」
口角をすっと上げて、美波は微笑んで見せた。
どんな意味合いが込められているのかわかったものではない。
私はあの頃、事件を起こして汐音、そして桜丘由乃に迷惑をかけた。
嫌な事を思い出して、胸がきゅっと締め付けられる。
思わず下唇を噛み締めてしまっていた事に気が付かないくらいには動揺していたのだと思う。
「あー、由乃ちゃんの妹ちゃんかー!宜しく」
私の心情なんて知る由もない立花くんは美波に近づくと右手を差し出した。
それを受けて美波も右手を突きだす。
「以前姉を迎えに行った時にお会いした事がありましたね。立花さん。宜しくお願いいたします」
美波はゆっくりとした所作で頭を下げる。
さっきまで機嫌が悪そうだったのに、立花くんの機嫌はすっかり直っているように見えた。
その変わりと言うべきか、天屯は美波と立花くんの間に割るようにして体を入れると、立花くんの肩を軽く小突いた。
「本来の目的を果たすべきじゃないんすかね?」
すっかりご機嫌斜めといった様子の天屯。
なるほどね。天屯は美波に惚れている。そう第六感が告げていた。
すこし天屯の事が不便に感じて、小突かれた事に不満を漏らす立花くんをこちらに引き寄せた。
「天屯くんの言う通りよ。私達は親睦を深めに来た訳では無い」
「んー、まあそうか」
不満そうではあるけれど、立花くんは私の横に立ち、話を聞く体勢に入る。
「じゃあ、早速で申し訳ないのだけれど、二、三質問をさせて貰おうと思うわ」
「はい。その前に、ご着席になられたらどうでしょうか?天屯君」
「はいはい!」
美波が促すと、天屯は馴れた手つきで私達の背後にパイプ椅子並べて二つ置いた。
よく調教……しつけがされているようね。
全員が着席したところで、私は最初の質問をした。
「あなたは五頭竜を目撃したとの事だけれど、この教室で目撃をしたのかしら?」
「はい。ここの席で本を読んでいた所、たまたま窓の外に目を向けたタイミングで、窓の外を通過していったんです」
教室の用途を説明する室名札には、文芸部と記されていた。
天屯はノックもせずに勢いよく扉を開くと、教室の中には一人の人物の姿があった。
その人物が座る長机にはハードカバーの本が開いた状態で置かれていて、天屯が取り乱していたと話していたとは思えない程に落ち着いて見えた。
私達が入ってきた事でその人物は顔を上げる。
大人しい、物静か。そんな言葉がよく似合う落ち着いた雰囲気の人物。長い前髪が目元を隠していて、どんな表情をしているのかがよくわからなかった。
「美波ちゃん!連れてきたよ!」
声をかけられた美波は小さく一つ頷くと、私の方へ顔を向けた。前髪のせいで、視線を向けられているのかはわからない。
「ご足労頂きまして、ありがとうございます」
美波は立ち上がり挨拶をしたあと深く頭を下げた。そして続けて自己紹介をしてくれた。
「一年C組所属、桜丘美波です。勇利先輩の事は存じ上げております。姉もお世話になっていましたよね」
初対面だと勝手に思い込んでいたけれど、一年C組には一度訪れている。覚えていなかった事に謝意を覚えながらも、聞き流す事はできない言葉を反復してしまう。
「お姉さん?もしかして……」
一人思い当たる人物の顔があった。桜丘由乃。中学からの同級生で私が苦手としていた人物だ。
汐音や立花くんが働く『すぎうら』でも高校時代にアルバイトをしていて、嫌でも顔を合わす機会はあったけれど、あまり話すことはなかった。
「そうです。桜丘由乃です。姉からはかねがねお話は伺っていましたよ」
口角をすっと上げて、美波は微笑んで見せた。
どんな意味合いが込められているのかわかったものではない。
私はあの頃、事件を起こして汐音、そして桜丘由乃に迷惑をかけた。
嫌な事を思い出して、胸がきゅっと締め付けられる。
思わず下唇を噛み締めてしまっていた事に気が付かないくらいには動揺していたのだと思う。
「あー、由乃ちゃんの妹ちゃんかー!宜しく」
私の心情なんて知る由もない立花くんは美波に近づくと右手を差し出した。
それを受けて美波も右手を突きだす。
「以前姉を迎えに行った時にお会いした事がありましたね。立花さん。宜しくお願いいたします」
美波はゆっくりとした所作で頭を下げる。
さっきまで機嫌が悪そうだったのに、立花くんの機嫌はすっかり直っているように見えた。
その変わりと言うべきか、天屯は美波と立花くんの間に割るようにして体を入れると、立花くんの肩を軽く小突いた。
「本来の目的を果たすべきじゃないんすかね?」
すっかりご機嫌斜めといった様子の天屯。
なるほどね。天屯は美波に惚れている。そう第六感が告げていた。
すこし天屯の事が不便に感じて、小突かれた事に不満を漏らす立花くんをこちらに引き寄せた。
「天屯くんの言う通りよ。私達は親睦を深めに来た訳では無い」
「んー、まあそうか」
不満そうではあるけれど、立花くんは私の横に立ち、話を聞く体勢に入る。
「じゃあ、早速で申し訳ないのだけれど、二、三質問をさせて貰おうと思うわ」
「はい。その前に、ご着席になられたらどうでしょうか?天屯君」
「はいはい!」
美波が促すと、天屯は馴れた手つきで私達の背後にパイプ椅子並べて二つ置いた。
よく調教……しつけがされているようね。
全員が着席したところで、私は最初の質問をした。
「あなたは五頭竜を目撃したとの事だけれど、この教室で目撃をしたのかしら?」
「はい。ここの席で本を読んでいた所、たまたま窓の外に目を向けたタイミングで、窓の外を通過していったんです」
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