万年ネタ切れ作家、勇利愛華の邪推録

さいだー

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モンブランの悪魔11

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 呆けている杉浦くんは汐音に押し付けて、立花くんと二人、私は守衛室を訪れていた。

「こんにちわ」

 カウンター越しに守衛に声をかけると、さぞ嫌そうな顔をして守衛は答えた。

「……またあんたか。もう預かりものはないはずだが、なんのようだ?」

「質問したいことがニ、三ありまして」

 私は嫌味なんてなんてなしに笑顔でそう答えると、義男は視線をそらし舌打ちをした。

 仕事はするようになっても相変わらず態度は悪いようね。本来なら義男はここにいないはずだ。なんせ彼のシフトは月水金、今日は土曜日なのだ。

 なるべく笑顔は崩さないまま━━実際の所はわからないけど━━言葉を続けた。

「預かって貰っていた荷物についての質問があるんです」

「……なんだよ?」

 義男はこちらに目も向けずそう答えた。余程私の事が苦手、あるいは嫌いみたいね。

 脅迫状事件の事で逆恨みをされているのかしら。

 まあ今はそんな事はどうでもいいわ。私が今聞きたいのは一つだけ。

「私が荷物を預けたあと、冷蔵庫に触れた人物はいますか?」

 義男は一つため息をついてから答える。

「俺と白井さんだけかな。俺達の飲み物くらいしか入ってないしな」

「白井さんとは?」

 義男は視線を背後に向ける。

 そこには椅子に座る紳士の姿があった。先ほど冷蔵庫を貸してもらう時にもお世話になった、彼だ。

 白井は私と目が合うとペコリと会釈をしてくれた。つられて私も頭を下げる。

 そして、頭を上げたあと、再度義男の方に視線を戻し、新たな質問をした。

「冷蔵庫に触れた時、私の荷物に手を触れましたか、又、なにか違和感を感じることはありませんでしたか?」

 こいつ何いってんだよ?と言わんばかりに顔をしかめて義男は答える。

「興味もねえし触ってねえよ。そもそも荷物が入っている事自体が違和感だよ。ねて白井さん?」

 義男が振り返りながらそう投げかけると、そう言うもんじゃありませんよと大人の対応をしながら白井が答える。

「違和感は特に何もありませんでした。私は箱に触れていませんので気づきようもありませんが」

 申し訳無さそうに白井は言葉のあとにペコリとお辞儀をした。
 なぜが私の方が申し訳なくなってしまって、ペコリとお辞儀をしてから苦笑いを浮かべてしまった。

「わかりました。お忙しい所荷物を預かってもらうだけでなく、お話まで聞かせていただきありがとうございました」

 義男と白井に向けてそう言うと二人は対象的な反応をした。白井は優しげな笑顔を向けまた何かあればお越しくださいと言い、義男はあしらうように用事がないならとっとと帰ってくれと言わんばかりに侮蔑を込めた視線を私と立花くんに向けた。

 お辞儀をすると私は踵を返した。

「お、おい、もういいのか愛華?」

 後ろで置物とかしていた立花くんが口を開く。

 あっ、まだ一つ聞かなければならない事があったわ。

 振り返り、義男にこう聞いた。

「今日、守衛室を空にしたことは?」


「……揉め事や面倒事もおこってないから、一度もここを空けたりはしてねえよ」

「そうですか」

 立花くんの方に向き直り、告げる。

「もうここに用はないわ」

 私は次に向かうべき場所に急ぐことにした。
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