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夜の海岸に現れる龍の謎13
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「さあどうだろうね?……それにここにあったとして、どうしたって言うの?」
汐音はそうとぼけて答えた。まるで自身はこの件には一切関係ないとそう言いきったのだ。
さすが汐音といったところね。勘の悪い立花君はきっととぼけている事にすら気がついていないと思う。
だけど、汐音の横に座っている杉浦君は、昔から感情が顔に出やすい。
そのせいか、白い目で汐音を見ていた。
「あなたがやったのよね?」
「何がー?」
楽しそうに微笑みを浮かべながら、とぼけ続ける汐音。
自ら認める気はないみたい。
それならば遠慮はいらないわね。
私は汐音から視線を外し、杉浦君に問いただす。
「杉浦君。今現在、五頭竜を模した制作物は、ここ『すぎうら』か存在しているわよね」
杉浦君は一度汐音の方を見るも、すぐにこちらに向き直り、一言だけ「ああ」と答えた。
「嘘をついたわね。汐音」
「『ない』とは言ってないよ。『どうだったかな?』って答えただけで」
たしかにそうだったかもしれない。でも汐音が嘘をついたかどうかはさして重要な事じゃない。
『すぎうら』に存在しているか、が大事な事なのだ。
「腰高には明後日には納入する予定だ。一応依頼者がいるから、許可なしに見せることはできないからな」
横から杉浦君がかわりに答える。依頼者っていうのは恐らく里奈ちゃんの事だろう。連絡の取りようもあるし、許可も簡単に取れそうだけど、それも重要な事じゃない。
「そう。それならそれでいいわ。大体の大きさと重さくらいは答えられる?」
「まあ、それくらいなら」
杉浦君は両手を目一杯に広げて、「これより少し大きいくらい」と大体の大きさを提示してくれた。
両手を広げた大きさは大体身長と同じくらいだと言われている。
杉浦君は180センチの立花君よりすこし小さいくらいだから……大体立花君くらいのサイズってことか……
「なるほどね。で、重さは?」
「事情があってそんなに重く作れなかったんだ。大体三キロくらいかな」
「ふーん。事情ね。ちなみに、その事情ってのは、ドローンから吊り下げるためかしら?」
「なっ!?」
杉浦君は驚いたのか、声にならない声をあげる。
「由比ヶ浜近くに住む中学生の目撃情報によると、若いカップルが大きなドローンを飛ばしていた。らしいのよね」
「それがどうしたって言うの?今回の依頼の件と、その目撃情報は関係ないと思うけど」
「これも立花君に確認してもらったのだけど、大きなドローンも所有しているわよね?」
以前、『すぎうら』の前オーナーである杉浦大和さんから荷物の配達に使えないかと、大きなドローンをプレゼントされた事を私は知っていた。
なんせ操縦の練習をすると言って、真冬の寒風が吹きすさぶ、西浜に呼び出されたのだから。凍えた指先が記憶している。
「……あるわよ」
「前、汐音と風が強い日に飛ばそうとした時はうまく飛ばすことができなかったわよね?」
「どういう事だよ?」
意味がわからないと立花君が声をあげる。
「ドローンは風が強い日に飛ばすのには向いていないって話よ。風で流されてしまってホバリングできないのよ。あなたが五頭竜を目撃した日はどうだったかしら?」
「あー、言われてみれば、あの日はそんなに風強くなかったかも」
「あの日は?」
「あー。その前の二日間は風が凄い強かったんだよ」
「その二日間の間に五頭竜を目撃した事はなかった」
「見なかった。結局釣りのほうもボウズでよ」
聞いていない事まで答えて、雇い主である杉浦君に聞かれて問題はないのだろうかと少し心配になってしまうけど、気にしない事にして話を前に進める。
「あなた、五頭竜を目撃した時、奇妙な音を聞いたと言っていたわよね?それはどんな音だったのかしら?」
「お、おう。なんかヘリコプターみたいな音がしたんだよ。こう。ギュイイーンみたいな」
擬音を交えて身振り手振りで説明する立花君を見て、汐音のまぶたが少し痙攣したのを私は見逃さなかった。
その痙攣は、ストレス反応を示している証拠。
「ヘリコプターみたいな音ねー。それ、私も聞いたことがあるかも」
「マジかよ!?愛華も五頭竜を見たことあんのか!?」
どこまでいっても立花君は立花君だった。
汐音の方に向き直り、「ね」と一言だけ同調を求めると、観念したのか両手を上に上げて、一つため息を吐き出した。
「わかったよ。もー、全てお見通しって事なんだね……そうだよ、愛ちゃんが疑っている通り、五頭竜の捜索依頼を出したのは私だよ」
汐音はそうとぼけて答えた。まるで自身はこの件には一切関係ないとそう言いきったのだ。
さすが汐音といったところね。勘の悪い立花君はきっととぼけている事にすら気がついていないと思う。
だけど、汐音の横に座っている杉浦君は、昔から感情が顔に出やすい。
そのせいか、白い目で汐音を見ていた。
「あなたがやったのよね?」
「何がー?」
楽しそうに微笑みを浮かべながら、とぼけ続ける汐音。
自ら認める気はないみたい。
それならば遠慮はいらないわね。
私は汐音から視線を外し、杉浦君に問いただす。
「杉浦君。今現在、五頭竜を模した制作物は、ここ『すぎうら』か存在しているわよね」
杉浦君は一度汐音の方を見るも、すぐにこちらに向き直り、一言だけ「ああ」と答えた。
「嘘をついたわね。汐音」
「『ない』とは言ってないよ。『どうだったかな?』って答えただけで」
たしかにそうだったかもしれない。でも汐音が嘘をついたかどうかはさして重要な事じゃない。
『すぎうら』に存在しているか、が大事な事なのだ。
「腰高には明後日には納入する予定だ。一応依頼者がいるから、許可なしに見せることはできないからな」
横から杉浦君がかわりに答える。依頼者っていうのは恐らく里奈ちゃんの事だろう。連絡の取りようもあるし、許可も簡単に取れそうだけど、それも重要な事じゃない。
「そう。それならそれでいいわ。大体の大きさと重さくらいは答えられる?」
「まあ、それくらいなら」
杉浦君は両手を目一杯に広げて、「これより少し大きいくらい」と大体の大きさを提示してくれた。
両手を広げた大きさは大体身長と同じくらいだと言われている。
杉浦君は180センチの立花君よりすこし小さいくらいだから……大体立花君くらいのサイズってことか……
「なるほどね。で、重さは?」
「事情があってそんなに重く作れなかったんだ。大体三キロくらいかな」
「ふーん。事情ね。ちなみに、その事情ってのは、ドローンから吊り下げるためかしら?」
「なっ!?」
杉浦君は驚いたのか、声にならない声をあげる。
「由比ヶ浜近くに住む中学生の目撃情報によると、若いカップルが大きなドローンを飛ばしていた。らしいのよね」
「それがどうしたって言うの?今回の依頼の件と、その目撃情報は関係ないと思うけど」
「これも立花君に確認してもらったのだけど、大きなドローンも所有しているわよね?」
以前、『すぎうら』の前オーナーである杉浦大和さんから荷物の配達に使えないかと、大きなドローンをプレゼントされた事を私は知っていた。
なんせ操縦の練習をすると言って、真冬の寒風が吹きすさぶ、西浜に呼び出されたのだから。凍えた指先が記憶している。
「……あるわよ」
「前、汐音と風が強い日に飛ばそうとした時はうまく飛ばすことができなかったわよね?」
「どういう事だよ?」
意味がわからないと立花君が声をあげる。
「ドローンは風が強い日に飛ばすのには向いていないって話よ。風で流されてしまってホバリングできないのよ。あなたが五頭竜を目撃した日はどうだったかしら?」
「あー、言われてみれば、あの日はそんなに風強くなかったかも」
「あの日は?」
「あー。その前の二日間は風が凄い強かったんだよ」
「その二日間の間に五頭竜を目撃した事はなかった」
「見なかった。結局釣りのほうもボウズでよ」
聞いていない事まで答えて、雇い主である杉浦君に聞かれて問題はないのだろうかと少し心配になってしまうけど、気にしない事にして話を前に進める。
「あなた、五頭竜を目撃した時、奇妙な音を聞いたと言っていたわよね?それはどんな音だったのかしら?」
「お、おう。なんかヘリコプターみたいな音がしたんだよ。こう。ギュイイーンみたいな」
擬音を交えて身振り手振りで説明する立花君を見て、汐音のまぶたが少し痙攣したのを私は見逃さなかった。
その痙攣は、ストレス反応を示している証拠。
「ヘリコプターみたいな音ねー。それ、私も聞いたことがあるかも」
「マジかよ!?愛華も五頭竜を見たことあんのか!?」
どこまでいっても立花君は立花君だった。
汐音の方に向き直り、「ね」と一言だけ同調を求めると、観念したのか両手を上に上げて、一つため息を吐き出した。
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