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本編
疑問
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男が目を覚ますと、すでに夕方だった。
隣では青年がすやすやと寝息を立てている。
「うう……」
出産直後のままの周りの惨状と、何より自分の行動に、頭を抱えたくなる。
あの後、相手にせがまれて何度も交わってしまった。
青年の体に夢中になった。快楽に勝てず、あんなにも憎んでいたはずの青年と……いや何より魔物を出産するのを手伝ってしまった……。
後悔と罪悪感と自己嫌悪に苛まれる。
幼体たちは開いていたドアの隙から出て行ったらしく、部屋には残っていなかった。
男は隣で無防備に眠っている青年の顔を見た。その表情は穏やかだ。やはり見た目よりどこか子供っぽい印象を受ける。
(こいつが、あの魔物たちを生んでいる)
青年が伴侶だと語る奴に騙されて、無理矢理魔物を産まされているのか……だがそれなら何故、あれほど嬉々として産むことが出来るのか。
それに、以前の会話から青年は、自分が産んだ魔物が人を殺すことを認識している。倫理観が根本からおかしいとしか思えない。
「ん……クロ……?」
「起きたか」
青年がぼんやりとした目を開いた。
ふにゃりと笑う。
「ありがとうね、手伝ってくれて」
「いや……」
「いつもは旦那様に手伝ってもらうんだけど、予定よりだいぶ早く陣痛が来ちゃって……どうしたの」
「その、俺との間にも魔物の子は出来るのか……」
さっきは夢中になっていて中に出してしまったが、今になって恐ろしくなった。
「うん?出来ないよ?」
あっさりと言われた言葉に拍子抜けする。
「子供を作るには準備がいるから。まず最初に、旦那様が召喚陣を刻んだ石を僕のお腹に埋め込むんだよ。その後精を注いでもらうとね、子供たちが受肉する。僕は彼らをお腹の中で育てて出産する。お腹の印は男の僕が孕めるようにする為のものだよ」
母体を使って異界の存在を召喚する、改めて聞いても正気とは思えない話だ。
「大体ひと月くらいで産まれるかなあ。そしたらまた次の子たちを孕む為に種付けしてもらうんだ」
この青年はそうやって何度も孕まされ、繰り返し魔物を産まされ続けているのか。
「お前はそれでいいのか」
「え? 何が?」
「ずっと化け物を産ませられていて、その男を恨まないのか」
「うん」
青年は笑顔だった。
「だって旦那様のことが好きだから。とっても優しいし、僕を大切にしてくれるし。最近旦那様は忙しくて僕を孕ませる時しか帰ってきてくれなくて寂しいけど……」
男の方は聞いているうちにだんだんと顔が険しくなる。
「そいつは本当にお前を愛してるのか」
「勿論だよ。愛してるって言ってくれるし、たくさんキスしてくれて、抱くとくは優しくしてくれるし」
「魔物を産ませられても? お前はそれが幸せだと感じるのか?」
「まあ一番最初はね。生まれるまでずっと泣いてたし、怖かったよ。だけど生まれる子たちはお腹を痛めた僕の子供だから。今は皆可愛いと思うし、旦那様の子供が産めることが嬉しいし、幸せだよ」
「世界を混乱させているのはそいつなのにか」
「確かに僕は家族で静かに暮らしたいんだけど……旦那様の望みを叶えられるのは僕だけだもん。あのね! 旦那様が言うにはいつか子供たちが自由に暮らせる世界になるんだって。だから僕も頑張るんだ」
狂ってる。
喉まで出かかるが、言葉にはならなかった。
「……俺はもう行く」
男は寝台から抜け出した。
「あのね、君にはこれからもここにいて欲しいな」
背中から声がかかる。
「ずっとここにいて、今日みたいに困ったことがあったら僕を助けてくれると嬉しい……ダメかな」
「怪我が治るまでならな」
「うん! それでもいい!」
機会を伺ってこいつを殺す為だ。
「その時まで一緒にいるよ」
隣では青年がすやすやと寝息を立てている。
「うう……」
出産直後のままの周りの惨状と、何より自分の行動に、頭を抱えたくなる。
あの後、相手にせがまれて何度も交わってしまった。
青年の体に夢中になった。快楽に勝てず、あんなにも憎んでいたはずの青年と……いや何より魔物を出産するのを手伝ってしまった……。
後悔と罪悪感と自己嫌悪に苛まれる。
幼体たちは開いていたドアの隙から出て行ったらしく、部屋には残っていなかった。
男は隣で無防備に眠っている青年の顔を見た。その表情は穏やかだ。やはり見た目よりどこか子供っぽい印象を受ける。
(こいつが、あの魔物たちを生んでいる)
青年が伴侶だと語る奴に騙されて、無理矢理魔物を産まされているのか……だがそれなら何故、あれほど嬉々として産むことが出来るのか。
それに、以前の会話から青年は、自分が産んだ魔物が人を殺すことを認識している。倫理観が根本からおかしいとしか思えない。
「ん……クロ……?」
「起きたか」
青年がぼんやりとした目を開いた。
ふにゃりと笑う。
「ありがとうね、手伝ってくれて」
「いや……」
「いつもは旦那様に手伝ってもらうんだけど、予定よりだいぶ早く陣痛が来ちゃって……どうしたの」
「その、俺との間にも魔物の子は出来るのか……」
さっきは夢中になっていて中に出してしまったが、今になって恐ろしくなった。
「うん?出来ないよ?」
あっさりと言われた言葉に拍子抜けする。
「子供を作るには準備がいるから。まず最初に、旦那様が召喚陣を刻んだ石を僕のお腹に埋め込むんだよ。その後精を注いでもらうとね、子供たちが受肉する。僕は彼らをお腹の中で育てて出産する。お腹の印は男の僕が孕めるようにする為のものだよ」
母体を使って異界の存在を召喚する、改めて聞いても正気とは思えない話だ。
「大体ひと月くらいで産まれるかなあ。そしたらまた次の子たちを孕む為に種付けしてもらうんだ」
この青年はそうやって何度も孕まされ、繰り返し魔物を産まされ続けているのか。
「お前はそれでいいのか」
「え? 何が?」
「ずっと化け物を産ませられていて、その男を恨まないのか」
「うん」
青年は笑顔だった。
「だって旦那様のことが好きだから。とっても優しいし、僕を大切にしてくれるし。最近旦那様は忙しくて僕を孕ませる時しか帰ってきてくれなくて寂しいけど……」
男の方は聞いているうちにだんだんと顔が険しくなる。
「そいつは本当にお前を愛してるのか」
「勿論だよ。愛してるって言ってくれるし、たくさんキスしてくれて、抱くとくは優しくしてくれるし」
「魔物を産ませられても? お前はそれが幸せだと感じるのか?」
「まあ一番最初はね。生まれるまでずっと泣いてたし、怖かったよ。だけど生まれる子たちはお腹を痛めた僕の子供だから。今は皆可愛いと思うし、旦那様の子供が産めることが嬉しいし、幸せだよ」
「世界を混乱させているのはそいつなのにか」
「確かに僕は家族で静かに暮らしたいんだけど……旦那様の望みを叶えられるのは僕だけだもん。あのね! 旦那様が言うにはいつか子供たちが自由に暮らせる世界になるんだって。だから僕も頑張るんだ」
狂ってる。
喉まで出かかるが、言葉にはならなかった。
「……俺はもう行く」
男は寝台から抜け出した。
「あのね、君にはこれからもここにいて欲しいな」
背中から声がかかる。
「ずっとここにいて、今日みたいに困ったことがあったら僕を助けてくれると嬉しい……ダメかな」
「怪我が治るまでならな」
「うん! それでもいい!」
機会を伺ってこいつを殺す為だ。
「その時まで一緒にいるよ」
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