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しおりを挟むバーサは、ローレンスを産んでからは乳母の補佐をしていた。ローレンスに会いに行くと乳母とバーサがいつも面倒を見てくれていた。
マリアが姿を見せると、バーサがちょうど眠ったところだと教えてくれた。足音を潜めて揺り籠を覗く。足も兎でも投げ出して死んだように眠っていた。
「先程まではよく動いていたんです」
と、バーサが後ろから話す。いつ見ても愛らしい我が子。マリアは椅子を寄せていつまでも見ていた。
保湿の作用があるからと、ミルク入りの湯船につかる。飲み物をこんなことに使うのは気が引けると断ったのだが、伯爵の命令らしい。丁寧に身体を洗われ、すっかり温まる。身体を拭き上げて、肌着を纏う。
椅子に座りモニカが柔らかなタオルで髪を乾かす。小さな小瓶を取り出して、手に馴染ませ、髪に塗り込む。ふわりと薔薇の匂いがした。
「これ…この間言っていた…?」
「ええ。ローズオイルです。ちょうど完成しましたので、良い匂いですよね」
「なんだかもったいないわ」
「奥さまなのですから、これくらいは使って当然です」
一本一本塗り込むように、馴染ませていく。本当に良い香りで、マリアは心落ち着けてその匂いを堪能した。
オイルの他に、ローズウォーターなるものも作っていたらしい。肌に塗る化粧水になるという。
「折角モニカにが作ったのだから、貴女が使って下さい」
「少し拝借しましたからいいんです。気兼ねなくじゃんじゃん使って下さい」
と言われたものの、とても貴重なものだと分かっていた。マリアは少しだけ肌に塗った。
モニカはマリアの髪を櫛で梳きながら世間話を始めた。
「お坊ちゃま、いつも大きな声で泣きますねぇ。別の部屋で、暖炉の掃除のお手伝いしてたんですが、かなり離れてたんですけど、よく聞こえましたよ」
「そうね。元気ね」
「もうお喋りするんですか?」
「いえ、まだ…あの子は少し遅いみたいなの。旦那さまは心配ないと仰るけれど、心配だわ」
医師にもこっそり聞いたこともあった。耳は聞こえているようだから問題ないと言われたが、不安は消えない。
「話しかけてはいかがですか?」モニカは気楽にアドバイスする。「伯爵様も奥さまも物静かですから、お坊ちゃまも遠慮なさってるんですよ」
「そうかしら?」マリアは首を傾げる。「にしては大きな声で泣くけれど」
「そこは伯爵様に似たんですね」
「どういうこと?」
モニカは櫛をブラシで手入れして、エプロンのポケットに仕舞った。今度は頭を指で押してマッサージを始める。程よい指圧が心地よく、じんわり温まる。
「郊外での軍事演習に遭遇したことがありまして、伯爵様が号令をおかけになるんです。物凄く大きい声をお出しになられてたので、そこは伯爵さま譲りだと思ったんです」
「演習をしているのは知ってましたけど、拝見したことはなかったわ」
「機会があれば見学なさってはいかがですか?」
「そうね。お伺いしてみます」
モニカがマッサージを終えたと告げる。すっかり身体が軽くなったマリアは足取り軽く寝所へ向かった。
ず、ず、と入り込むと、内壁がうねりをあげた。すっかり身体はレイフを受け入れる。中にレイフのモノが入っていないと不完全とさえ思えるほど、馴染んだ。
「はっ、…う…んん」
ぐちゅ、と結合部で音がする。挿入前にさんざん扱われて溢れた愛液の音だった。
レイフの手が太ももを撫でる。それがまた快楽を得て膣が締まる。膝裏が持ち上がってレイフの肩に片足を乗せる。レイフの上体が折れ曲がると、そのぶん挿入の深さが増して、マリアは嬌声を上げた。
胸に手を這わせて、柔く揉まれる。突起を摘まれると、一気に絶頂した。
びくびく、びく、と不規則に膣が締まる。逃げられないと分かっていながら、身もだえる。レイフは乱れるマリアをじっと見下ろしている。その表情は読み取れない。無表情だった。
マリアは分かっていた。レイフは挿入しただけで動かない。胸を愛撫しただけ。こうやって乱れる姿を観察して、前後不覚になったマリアを更に追い詰めたいのだ。そうなった時に得られる快楽は一入なのだろう。直接聞いたことが無いが、そうでなければ毎回気をやるまでマリアを扱わない。だから愛しい夫を少しでも満足させたくて、マリアは与えられる快楽に抗わなかった。
レイフはおもむろに腰を引いて奥に一気に打ち付けた。どん、という衝撃と共に快楽が駆け巡る。
「あああ!!ああ!」
容赦なく何度も奥を突かれる。内臓に響く衝撃、入り口を擦られて、膣の痙攣は止まらないばかりがうねりが酷くなる。自分の意志とは関係なしに身体は反応して、ひたすら男を喜ばせる道具に成り果てる。
ちりちりと頭の奥が痺れて、やがて何も考えられなくなった。
「私…お役に立ってますか…?」
いつもレイフは外に射精した。まだ次の子を孕ませるのは早いと思っているらしい。
マリアの言葉を受けてか、レイフは清めていた手を止めた。
「役に立つのではなく、お互いがしたいからしていると思っている」
「ちゃんと私も気持ちいいです…それ以上に、旦那さまのお役に立ちたいんです」
レイフはマリアの頬に手を添える。
「私も、マリアの役に立てているだろうか」
「たくさん与えられております」
実家のこともあるが、日々の生活すべてレイフから与えられたものだ。
「愛してくださっていると、自覚しております」
「そう思ってくれているのが一番嬉しい」
「もっとお役に立ちたいと思うのは自然なことです」
レイフは少し笑って、額にキスを落とした。
「いつも無体に扱ってすまない」
「そんなこと…嬉しいです」
「やめられないんだ」
かすれ声で囁かれ、舌が絡まる。
彼の手が胸から腹を滑り、下へと向かう。長い指がぐり、と中をえぐる。マリアはくぐもった声を上げた。
その日はずっと愛されて、指一本も動かせなくなって、すべての世話を彼にしてもらった。
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