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 一家で引っ越し。ハーフェルの首都、ライグへ。
 宮殿のような荘厳な邸だった。敵から奪ったもので、手入れをしてようやく使えるように改修し終えたという。
 寝所は、話し合って一緒にした。夫は統治で忙しく、マリアが寝入ってから寝所に来て、マリアが起きる前にはいなくなっていた。
 息子は乳母が世話をしていたからマリアは苦労知らずだった。ただ乳を与えるだけ。幸い、乳の出はよかった。胸が張って痛いくらいだった。

 マリアは、そっと執務室を訪れた。夫のレイフは近習とやりとりをしている。マリアに気づいたレイフは、近習に二言三言言いおいて近づく。マリアの両手を取って、寝所へ向かった。
「痛むか?」
 マリアは恥ずかしげに頷く。胸を押さえた。寝台に向かい合うように座ると、レイフはマリアのボタンを外して胸元を開けた。服を肩から下ろして、下着も下ろす。露わになる乳房。子を産んでから先端は膨らんでいた。
 レイフは床に膝をついてから、そこを口で含んだ。舌で先端を舐め取って吸い付く。マリアは乳を吸われ、耐えるように顔を伏せる。金髪が前に落ちてレイフの顔を覆い隠す。
「……っん…」
 いたずらのように舐められると身体がビクつく。マリアは声を出さないように口を押さえた。
 片方を飲み終えて、もう片方にも吸い付いた。同じように扱われて、また快楽を拾う。そのうちに下腹部まで浸透してじんわりと熱を帯びる。じわ、と入口が求める。マリアはやり過ごしたくて足をこすり合わせた。

 吸い終えたレイフが口を離す。マリアはホッと息をついた。と思ったら腕を引かれ唇が合わさる。舌が口内を犯す。甘い味がした。やがて離れる。レイフは耳を柔く噛んだ。
「まだ張るか?」
 気遣いの言葉。あくまで胸が張るマリアの為に、乳を吸っているのだというパフォーマンス。そう知りながらもマリアは大丈夫、と答える。
「大分和らぎました。お戻りになってください」
 しかしレイフはマリアを仰向けに寝かせた。顔にキスを落としていく。マリアはくすぐったかったが、何も言わなかった。
 首にも口づけ、鎖骨を甘噛みして、再び胸へ。先端を摘むように食んだり、舐めたり、唇でこねるように扱われると、しびれるような快楽がやって来る。
 呼吸が乱れ、自分が出しているとは思えない声が漏れる。はっとして口を押さえた。
 目ざとく見つけたレイフが手首を掴んで外させる。視線を絡める。レイフの端正な顔が微笑む。優しい笑みに、マリアの胸は高鳴る。レイフはまた胸の突起にしゃぶりついた。愛撫されて、快楽の波はどんどん大きくなる。マリアはシーツを握りしめた。
「んっ…んっ…!」
 追い詰められて、触られているのは胸なのに、下腹部の奥がひくついてくる。ぴりぴりと小さな電流が走って、中がきゅ、と締まった。
「あっ…!」
 びくびくと入口が痙攣する。感じたことのない大きな快楽の波は、苦しいほど強烈で、足の先まで強張って、息も出来ないほどだった。
「マリア」
 苦しむマリアをあやすように背中に手が回される。少しだけ抱き起こされて、首がのけ反る。後頭部にも手が添えられて、上半身が起こされ、優しく抱きしめられる。さらけ出している上半身は、しっとり汗をかいていた。脱いでいない下半身も汗でぐっしょりしていた。熱かった。
 絶頂の波が収まると、身体が離れた。マリアの服を整え横に寝かせる。
「モニカに水を持ってくるよう言っておく。休みなさい」
「終わり…ですか?」
「すまない。止められなかった」
 マリアは首を横に振った。マリアの熱を帯びた訴えに気づいて、レイフは頬を撫でた。
「まだ子を産んで間もない。もう少し、な」
 マリアはまた首を振った。それでようやく気づいて、レイフは耳元で囁いた。

 こちらに越してから、二人は急速に夫婦になっていった。最初はマリアもレイフもお互いの距離を測りかねて気まずかったが、子のこととなると話は別だった。初めての子育てで不安なマリアの為に、レイフは些細なことでも相談に乗ってくれた。彼の指摘は的確で、間違っていなかった。お詳しいんですねと言うと、彼は口をつぐんだ。

 胸が張る。という相談をしたのもその一環だった。彼は最初、たくさん赤ん坊に飲ませればいいと言ったが、いくら飲ませても胸が張って痛いと訴えると、「なら手伝う」と言った。
 まさか彼が母乳を飲むなどとは思わず、初めは戸惑った。満足したら飲み終える赤ん坊とは違って、彼は張りが収まるまで飲んでくれるから大いに助かった。むやみに飲まず、最初胸を冷やしてみて、それでも痛みが収まらなければ飲むという決まりにしていた。
 そのうちに、少しずつ愛撫を伴う行為になっていった。知らなかった快楽に、マリアは最初、錯乱してレイフの頬を叩いてしまった。直ぐに正気に戻って謝ると、レイフも謝ってきて、そのときはそのまま終わった。
 それがきっかけになって、レイフに吸われているときだけ感じるようになっていった。するとレイフの行動はエスカレートして、乳吸いもそこそこに、マリアの身体を求めた。性交までには至らなかったが、それに近い行為は行われていた。マリアが絶頂するまでレイフは責め立てた。一度知ると、止められなかった。マリアは何度も胸の痛みを訴えに行った。

 それだけでは無かった。レイフはマリアに愛情で持って接してくれた。食事を共にしたり、庭を歩いたり、忙しい合間に時間を作ってくれた。今までが冷たかったから、二人とも何を話せばいいのか分からず、結局、子の話ばかりをした。よく笑ってくれただの、あーだのうーだの言っただの、他愛のない話ばかりを、二人で真剣に話した。それが何より楽しかった。

 ただ、姉のことが度々、頭にちらついた。本当のことを教えてもらったのに、無惨な死に方をした衝撃からなのか、何故かいつまでも気になっていた。
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