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あおいどうぶつえん
しおりを挟む――ほら見てごらん、いろんな生き物がいるだろう?
――うんほんとう、あれななあに?
身を乗り出してよく見ようとするこどもを落ちないように支えながら、お父さんはこう言います。
――あれはトリだよ。はるか昔、恐竜とよばれていたものが進化してああなったんだ。
――じゃああれは?
あきることなくこどもはお父さんに問いかけます。
――あれはサカナかな。そもそもここにいるすべての生き物は、水の中から生まれたそうだよ。
――じゃあトリの、その前の恐竜も、あのサカナみたいに水の中から生まれたの?
興味津々に、こどもはさらに問いかけます。
――そうだね。みんなみんな、さいしょはなんにもない水の中から生まれたんだ、いろんな偶然がうまく重なって、ね。
――すごいね!
おどろくのはこどもです。
――じゃあ、ボクたちも、そういう偶然で生まれたんだね。
――そうだよ。そもそも私たちが生まれていなかったら、彼らは生まれてなかったんだから。
――じゃあ、あのたくさんいる生き物もそうなんだね。
こどもはなおいっそう、目を輝かせながら聞いてきます。
――ええと、ムシさんのことかな?
とお父さん。
――ちがうよ、たくさんいて、いろいろなものを作っている生き物だよ。でもなんだか、あの生き物が住んでいるところは、あんまりきれいじゃないんだね。
――ああ、あれか。あれはヒトだよ。どうにも汚いところに住む方が心地よいらしく、わざわざ汚してから住み着く習性があるんだ。変わってるだろう?
――ふーん、変なの。なんでだろうね。
――いろんな生き物がいるからね。そういうことだって、あるんだろう。
なんでヒトがわざわざそんなことをするのかお父さんにはわかりませんでしたから、そうこどもを納得させておきました。
――ねえおとうさん。
こどもはそれでも続けます。とにかくこどもというのは、いろいろなことを聞いて回るのが仕事ですから。
――でもさ、ボクたちが生まれてなかったら、ヒトだって生まれていないんでしょう?なんでヒトは、ボクたちの仲間の、あの青いのを大切にしてくれないのかな。あんなに汚してしまってさ。
どうやらこどもは、お父さんの説明に納得などしていないようでした。
でも、お父さんだってそんなことはわからないですから、仕方なくこう答えておきました。少しだけ、そうだといいなと思いながら。
――汚したらきれいにすればいいんだよ。ぼうやだって、ちゃんとお片付けするようお母さんに言われてるだろう?
――そっか。じゃあもしかしたら、ちょうどいま片付けているところだったのかもしれないね。
どうやら、それでこどもは納得してくれたようでした。
――ああ、楽しかった。また今度連れてきてね。
こどもは満足そうにお父さんに言います。
――そうだね。次に来たときに、きれいにお片付けされてるか見に来なくちゃいけないね。だけどその前に、ぼうやもちゃんとお片付けをするんだよ。
――はぁい。
あんまりねだられて、連れて行くのも大変です。お父さんはこどもにそう言い聞かせると、このあおいどうぶつえんを後にしたのでした。
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