主婦、王になる?

鷲野ユキ

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テレビ出演

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「ああ、また出てるね碓井先生」
「ほんと。ゼミも休講になってばかりで、まったく学費返せっての」
ずるずると麺をすする二人が見上げる視線の先には、客の為なのか、それとも店主の暇つぶしの為なのかどちらとも判別のつかない小さいサイズのテレビが置かれていた。場所柄汚れるのは仕方がないのだろうが、それでも少しは拭けばいいのにと思うほどにべたべたとしたその液晶画面。そこには渦中の碓井が映っていた。
「ごめんね、勇樹君。所詮は私もただの学生だし。これでも一応掛け合ってはみたんだけど」
申し訳そうに言うのは粕川だった。もやしを持つ箸を止め、隣りの勇樹に小さな声で詫びた。
「仕方がないよ、でも、二人ともいい大人なんだから、もっと現実見てもらわないと」
そう中学生に諭される親と先生もいかがなものか。けれど、力が及ばなかったのは事実だった。いかに過去だろうとも、現実で立場がなければどうにもならない。まさに現実的な自身の立ち位置を、中学生と大学生の二人はその身をもって思い知ったのだった。
「けど、いまや国を挙げての考古学ブームじゃない。昭和の時代の吉野ヶ里遺跡ブームみたいな」
「吉野ヶ里?」
「やだ、いくらなんでもそのくらい知ってるでしょ。邪馬台国があったんじゃないかって考えられてる佐賀にある遺跡」
「そりゃ、それくらいは常識だよ」
スープの中に沈むコーンを掬いながら、白々しく勇樹は言った。
「まあ、確かに今更弥生時代なんてテストには出ないだろうからいいけどさぁ。で、すごかったのよその発掘現場。それを見にみんなマイカーで人が来る時代だったんだから」
「マイカー?先生、平成生まれだよね?」
「当たり前でしょ。でも今まさにそのブームがここ浜北に来てるんだもん。静岡県知事は観光誘致に必死だし、そのために碓井先生も駆り出されてるんだし。駅前のアレ見た?」
「ハニワの銅像?」
「そう!ハニワなんか見つかってないのに、考古学って言ったらコレだろっていう安易な理由で市が建てちゃって」
「ハニワって弥生時代だよね?」
「そう、時代錯誤もいいところ。まあ地元が賑わうのは良いけどさ、でも、まだすべてわかったわけでもないのに」
「ここにシャンポリオンがあったこととか?」
「そう。なのに、なんでまたあんな怪しい団体がお天道様の元大々的に活動できてるんだか」
はあごちそうさま、おいしかった。そう粕川は言ってきれいに空になったどんぶりをカウンターに置いた。
「先生、塩分は」
「大丈夫、これ味噌ラーメンだから。塩じゃないし」
「変わんなくない?」
今回のラーメンデートは実費だった。それも仕方がないだろう。碓井教授は今や引っ張りだこの天才教授で、うかうかと不倫に勤しんでいる場合でもなかったからだ。
では一方陽子はひとりさみしく過ごしているのかというとそうでもなく、彼女は彼女で今まさに人生を謳歌しているところであった。彼女にかしずく信者に囲まれて。
「その、ご家族はなんて?」
気になるのはその点だった。家に帰らない主婦。誰もが疑問に思うに違いない。いや別に、主婦は家に常にいるべきだなんて古い思想を持ち合わせているわけではなかったけれど、けれどいつもいる人間がいなくなるのは違和感を誰もが覚えるだろう。
「なんか、あまり興味がないみたい。そもそも母さん自体に」
だが、返ってきた答えは悲しいものだった。
「だから、もっと栄光が欲しいんだって。自分が王なんだってあいつらにもわからせてやるって息巻いてた」
「そう……」
過去の栄光ごときでどうにもできないことは、二人が一番よく知っていた。結局現世にコネがなければ何もできない。碓井のように。いや、碓井が唐澤伝いに黒崎、その先の滝沢にその地位を手に入れたように。
気付けばテレビの碓井が、意見するコメンテーターなどものともせずに熱弁を振るっていた。そのテレビに興味を示す人間は少なくともこの札幌ラーメンを出す店にはいないようだったが、放送時間を考えればそれなりの視聴率を稼げているのだろう。どうやら生放送らしいそれは、本当かどうかわからない煽り文句を入れてCMに入ってしまった。
『旧石器時代・高度な文明を持つ国の王の血を引く方が現る』と。
「え、これって?」
二人は恐る恐る顔を見合わせた。王って。
母さん以外にいないじゃないか!
陽子さん以外にいないじゃないの!
粕川は慌ててデザートと追加のチャーシュー丼を追加した。さすがに、食べ尽くした後でテレビを見るのに居座るのも悪いかと思ったのだ。
予想外の出費は痛いけど、けどぜったい先生に請求してやるんだから。そう思いながら。

まさか、テレビ出演なんて。
陽子はひどく緊張していた。しかも生放送、全国ネット。この時間、良一さんたちは何をしているかしら、いつもと同じなら、この局のくだらないバラエティだの特番だのを見ながら晩酌しているころだけど。
けれど見てもらうためにこの局にしてもらったのだ。わたしの本当の正体を、圧倒的脅威を持って認識させるために。わたしが言ったんじゃ信じてもらえない、そこで流れる情報はすべて正しいのだと思われるところで。そういう確たるところで、華々しく彼女は自身の正体を晒したかったのだ。
だって、それは真実なのだから。わたしが王だったということは。だから無知なサピエンスどもに叩かれようが痛いところもなかった。
「では、登場いただきましょう。一万四千年前、ここ浜北にあった国を統べていたと考えられる人物のご登場です!」
陽子も見たことのある司会の男が声を張り上げそう言った。この一歩を踏み出すと、わたしのまわりの世界はどう変わるのだろう。シャンポリオン?そんなのあるわけないじゃない。そう鼻で笑われるのかしら。けれど大丈夫、少なくともあの国があったことはどんどん裏付けされていっている、碓井率いる研究チームの努力の甲斐あって。
それに今のわたしは今までのわたしじゃない。結婚式以来着たこともないような、きれいなドレスを着飾って。まるで皇后さまみたい。いえ、わたしの本当の姿は王なのだけど、男装したって意味などない。姿なんて関係ない、性差だって。わたしはわたし。シャンポリオンの王、フュオンティヌス。それ以外になにが必要?
いまや陽子の背には、多くの人々の希望がのしかかっているのだった。かつての王そのもののように。優人会の人々は、陽子を見るなり涙した。彼らはフュオンティヌスを覚えていたのだ。いや、思い出したと言ったほうが正しいかもしれない。その彼らの後押しもあって彼女は決意した。あの国のことを広く知らしめることを。いや、あの国を再びよみがえらせることを。
「ええと、彼女は高度文明……シャンポリオン、というそうです、その国で王であった記憶を持つとか」
胡散臭いものを見る目付きで司会の男が陽子を見た。まるで怪しい超能力者を見るような目つきで舐めまわされ、少し気分が悪くなる。でも大丈夫、そんな風に思われるのは想定内だ。
「記憶?前世は王でした、ってか?どんなうわ言かね」
まずありえないだろう、そういった姿勢で突っかかってくるのは碓井と同じ考古学者。確か上田ナントカ先生。有名な先生らしいがそんなこと陽子の知り得ぬことだった。偏屈そうなおじいさんね、そう思う程度だった。
「けれど、発掘現場である浜北一帯では、似たような記憶を持つ人々が続々現れているそうですが」
そうフォローにまわったのは、ジャーナリストの藤村だった。
「ごく一部の人間がそういうのならわかる。やらせだといわれても仕方がないでしょう。けれど、事実言い方が悪いですが、ただの一般人らが主婦のこの方を崇め奉っている。そんなことしてメリットがありますかね?そこには損得などなく、事実があるからなのだと私は思いますが」
ジャーナリストなどという肩書を持つ男がまさか味方に付いてくれるとは思ってもみなかったが、意外や意外、彼は彼女のことをどうやら信じてくれているようだった。
「そう思い込んでる人間を、さらに周りがそう思い込んでいるだけでしょう。その、ふぉ……なんとかティヌスとか言う人、こんな下らんことに乗るのはやめておきなさい」
親切のつもりなのだろうか。常識人で知られる芸能人が何も知らずに陽子のことを諭してくる。何を持ってそんなに自分に自信があるのかわからない、宮内とか言うコメンテーター。
「あなた自身に悪意があるのか、周りに踊らされているんだか知らないがね、あなたお家はどうしたの。その年ごろなら家庭もあるんでしょう?いい年して馬鹿なことをするのはやめなさい」
「バカなこととは聞き捨てなりません。それは私の研究を否定することにもつながるのですから」
その言葉に舌戦を開始したのは碓井だった。大丈夫、確かにあり得ない話だと愚かな人々は判断するだろう。けれど彼は知っていた。愚かで自分で判断の出来ない人ほど、確証を欲するということを。この年で大学教授、ひいては考古学の第一人者まで登り詰めた碓井の、したたかさを今こそ発揮するときだった。
「上田さん、宮内さん。DNAという言葉はご存知ですね?」
「は?馬鹿にしているのか」
思わずプライドを刺激され、露骨に不機嫌そうな顔で上田が碓井に返した。
「いえ、念のため確認したまでです。先日私が検めました浜北人のDNAに、ネアンデルタールのゲノムが組み込まれていたことはご存知ですね?」
いくら碓井が時の人とはいえ、悲しいかな年功序列はどの世界にも残っている。かつての権威はもとより碓井のことなど対等で尊敬しあえる学者仲間と見てはいないようで、
「ああ、まあそれは確かなようだな。現に遺伝子工学権威の倉木教授も認めている」
と横柄な態度でうなずいた。自身の分野で活躍するこの若造のことは信用ならないが、他の分野の権威は安易に信じる。自分が知らない分野ほどそれは顕著だ。考古学の権威が、遺伝子学に弱いというのも笑える話だったが。
だが、それも肩書の威力によるものなのかもしれない。現にそれを立証する非人道的な実験もなされたほどだ。囚人と看守の立ち場に分けられたごくごく普通な人々は、その肩書に引きずられて通常の自分では成し遂げないようなことさえ行ってしまう。看守のすることは絶対なのだと。それと同じだ。権威の偉い人が言うならそうに違いないだろう。安易に人はそう思い込む。教師や警官が罪を犯すはずがないと信じているのと同じ愚直さで。
「その遺伝子塩基と近い配列を彼女は持っているのです」
「だが、それはあくまでもこの人がネアンデルタールの血を引いていると証明するにしか留まらんだろう。仮にシャンポリオンとかいうふざけた名前の国がそこに在ったとしてもだ、その国の王であることとは同列にはならないじゃないか。それこそ、君のいうフォンなんとかという王の遺体でも見つけない限り」
「さすがにそこまでの出来レースは起こりません、浜北人の遺骨が見つかっただけでも僥倖ものですから」
「じゃあどうやって証明するんだ、そんな大昔の記憶なんてどうだって捏造できるだろう。まだ、わたしはマリーアントワネットの生まれ変わりなんですと言われたほうが検証のしようがある」
「確かに、物的証拠は挙げられません。いや、挙げられないほうが自然でしょう。ここで王の遺体なんて差し出してみなさい。偽物だと叩かれるのがオチでしょうし、そもそも現代の科学力をもってすればあっという間に見破られる」
「じゃあどうするんだね」
「これが刑事事件なら証拠としては弱いかもしれませんが、ひとつだけ。それは証言です」
「証言?まさか、記憶を持つ人間とやらの証言を寄せ集めたとでもいうのか?ふん、そんなもの口裏を合わせただけに決まってる」
「いえ、証言してくれたのは今の時代の人間ではありません。過去の人物です」
「過去だと?なんだ、ロゼッタストーンでも見つかったのか?」
馬鹿にしたような笑みを浮かべて上田が吐くように言った。今更、あの一通り掘り尽くされた根堅採石場でそんなものが見つかるものか。
「ええ、ロゼッタストーンではなく、どうやら火砕岩の一種の様でしたが」
「火砕岩に文字が掘られていたとでも?そんなの、子どものいたずらか何かにきまってるだろう」
「子どものいたずらにしては法則性が強い。ああ、これです」
そこで番組スタッフがグレーがかった、大型犬くらいの大きさの石板をうやうやしく持ってきた。
「同じ記号が規則的に出てくる。しかし単なる模様というには種類が多すぎる」
「しかし仮にそれがなにかを表しているとしてもだ。読解できなければ意味がないだろう」
「ええ、だから読解を試みたのです」
「これしか出土していないのにどうやって」
「言ったでしょう?自分もシャンポリオンの記憶を持つ人が沢山いると。その彼らに目を通してもらいました。まあ何を言っても信じていただけないのでしょうが、もちろんヤラセなどではありません。個々に声をかけ、それぞれに読んでもらいました」
「は、どうせ適当なことを言っているだけだろう」
「ところが、彼らの回答の65%が似たような内容だった。『火山を操るシャンポリオンの王、フュオンティヌスここに眠る』と」
「ネアンデルタールのDNAを持つ浜北人の遺骨が見つかった場所に、過去の超文明の王の墓があると言いたいのか?」
「ええ。そして彼女はその王の名を知っていた。あの国がどんな国で、自分がどんな存在だったかも。この石板が見つかるよりも前から」
「そんなの……ヤラセに決まってる、もしくはこれが偽物なんだ、そうに違いない」
そうわめく上田に対し、今までずっと沈黙を守っていた男が口を開いた。明るい髪の色に、青みがかった瞳。しわにまみれたその顔は、6、70代の大先生の様だった。日本人の風貌からかけ離れたその姿からてっきり外国人だと思っていたが違うらしい。入江、というよくある名をもつ彼がネイティブな日本語で断言した。
「それは偽物ではありません、一万四千年前の地層と同じ微化石が含まれている」
「ええと、入江教授です。古生物学の第一人者の方にもお越しいただいております」
急に口を開いた彼に対し、司会のアナウンサーが補足した。
「古生物学?」
あまり聞きなれない学問名に無知なコメンテーターが首をかしげれば、
「まあ、地質学と生物学を混ぜたものだと考えていただいて結構です」
と鷹揚に入江がうなずいた。
「さきほど微化石とおっしゃっておりましたが、なんですかそれは」
さらに専門用語を問う、知識人気取りの宮内。なんでも知ったふうでいるが、さしもの彼とて知らぬことの方が多いようだった。
「花粉やプランクトン、胞子なんぞの目には見えない生物由来のものですな、その時代時代で特徴が違うので、地層や岩石の年代確認に用いられる」
「ゆえに、この石板は偽物ではないと。けれどその年代の石に後から彫り付けたとしたら?」
けれども食い下がらないのは上田だった。相手がその道の権威とは知っているのだろう、けれど一度向けてしまった矛先を、うまく下す術を彼は持ち得なかった。
「そんなことに私が気が付かないとでも?」
ギロリ、と睨みつけられ上田が口をつぐんだ。
一方そんな空気の中意見したのは、意外にも擁護派の藤村だった。
「しかし碓井先生、その記憶を持つ人々ってあれでしょう?あの怪しい宗教団体に所属している人たちでしょう?この石板が本物だとしても、適当に皆で口裏を合わせているのでは」
その発言に水を得て、宮内が口を挟む。
「それに、この女性がその宗教団体と関わりがあるとも噂されていますが。この証言がその信者らのものならば、口裏を合わせていると思われて当然だ」
「確かにあれは宗教法人ですが、単に覚醒者らが集まる場所を提供していただいているだけのこと。信者と言われると違和感がありますが……。彼らは単に同朋です、ネアンデルタールの血を引く仲間です」
碓井はさも困惑気に答えた。
「この人たちの遺伝子にも同じものが?」
「ええ。彼らのDNAもまた、ネアンデルタールの血を色濃く受け継ぐものだった。これもまた倉木教授のお墨付きです。その彼らが、自身でさえ不可思議に思いながらも似たような夢を見たり、とつぜん記憶を思い出す。遺伝子に含まれる大昔の記憶が、今回の発見を皮切りに露見したのではありませんか」
「確かに、この規模で似たような夢だとかを見るのは偶然の一致とは言いがたいですが、しかし、信憑性が」
そんなこと素直に信じられるものか。その場に居合わせる人々の気持を代弁するかのように藤村が言った。
「しかし、そもそもなぜ先生はここ浜北区の根堅遺跡を検めようと思ったんですかね?浜北人遺骨が出たのはいまからもう30年以上も前だ。骨は東大に収められ、そこで当時充分調べ尽くされた。それに、もうすでに何もないだろうと一度は埋められた場所だ。わざわざそこを掘り返そうと良く思いましたね」
「それは」
そこで碓井は一瞬言葉を切ったが、そのしばらくののち、澱むことなく唇から「その女性が予言したからです」などと言い放つではないか。
「彼女が?」
一斉に視線を向けられて、陽子は居心地を一層悪くする。おかしい、碓井先生は事実と違うことを言っている。けれど陽子は口をはさむことはできなかった。頭のいい碓井のことだ、きっとなにか策があるのだろう。そう思うしかなかった。
「ええ、そもそもこの国において人骨が見つかった場所はひどく限定的だ。そのほとんどは沖縄で、本土での出土例は滅多にない。だからこそ私は日本人のルーツを探るべく、過去に出土した場所を検めるべきだと考えた。浜北人の遺骨のDNA再鑑定を依頼したのもそのためです」
「それはまあ妥当でしょう、ここでは一万八千年前と一万四千年前の地層の両方から遺骨が見つかっているんだ」
そう返したのは入江だった。
「ええ、やみくもに他を探すよりは可能性が高い。そこへ彼女が現れたのです。わたしは大昔の時代に栄華を誇った王国の王だと」
「それを素直に信じたのですか?」
疑る声を宮内が放つ。
「いえ、私だって最初は怪しいと思いましたよ。けれどここを採掘することはもう決まっていた、土地の所有者にも許可を得ていましたし。私もその可能性があると踏んで再調査に手を付けたのです。そこへ、過去の文化をほのめかす女性が現れた」
「先生としては、ご自身の推測を後押ししてくれる発言を彼女がしてくれたということになるんですかね」
納得しがたいながらも、藤村はそう理解したようだった。
「ええ。そして実際着手してみれば彼女の示す位置からこのような遺品がぞろりと見つかったのです」
「そんなの、それこそヤラセなんじゃないかね。まあその石板はともかく、そんなにポコポコと遺物が出てきますか?」
難色を示したのは上田だった。どうやら立ち直りが早いらしい。さらに勢いを増した彼はこうも言う。「たとえば偽物をあらかじめ埋めておいた。そう、偽装だ」
そして、その発言に出演者がざわつく。
「偽装?まさか」
けれど碓井はその疑惑を事も無げに一蹴した。
「言葉は悪いですが、彼女は考古学の知識なんてまるでないんですよ。その彼女が旧石器時代の遺物を用意して、あたかも自分が発見したかのように見せることが出来ますかね?出来るわけがない。だいたいどこから持ってくるんですか、そんなもの」
「じゃあ、あなたがそれらを用意したんじゃ」もはやなりふり構わず、とにかくシャンポリオンなどという国の存在など認めたくない上田がわめいた。
「は、私が?まさか、そんなあからさまなことをするほど私が愚かだと?今更に旧石器時代偽装の二の舞を踏むものですか。そんなことをすれば日本の考古学は今度こそ終わりになってしまう」
怒りも露わに碓井が思いもよらぬ強い語気で言った。
「それよりも注目すべきは彼女がネアンデルタールのDNAを色濃く受け継いでいることだ。彼女のDNA含有率は20パーセント。一般的な平均が2%です、彼女はさらにそれを凌駕している。その彼女が、ここに眠るとされている王の名を知っていた、これがなにを意味するか。今はまだ日本人のDNAを解析途中ゆえ正確な数値ではありませんが、これだけの含有率を誇る人は他にはいないでしょう。現に例の神殿の方々でさえ10%前後だ、二分の一にしかならない。この確率がどれだけ少ないものか、奇跡的なものかがおわかりになるでしょう?」
「20%だと?そんなこと」
「嘘だと思われるのなら、倉木教授に聞かれるといい」
「いやしかし、テレビだからってこんな着飾ってますけど、この人ただの主婦でしょう。ネアンデルタールの血を引いてるのもそもそも本当なんですかね?倉木教授がなにか勘違いしたんじゃないんですか?だってこの人が偉大な王だなんて誰が信じます?」
忌々しげに上田が吐きすてた。
それはつまり、倉木教授をも疑っておられるのですか?そう碓井が口を開こうとした瞬間。
「それはつまり、主婦なんて偉大にはなりえないと?」
と陽子が重い口を開き割り入った。
碓井さんが自分ばかりを引き立てるのは気持ちが悪かったけれど、きっと彼は自分を王らしく仕立てたいのだろう。陽子はそう感じていた。ならばそれらしく振る舞わなければ。
けれどそう思う以上に漠然とした怒りが彼女を動かした。そんなの、聞き捨てならない。なによ、わたしが女じゃなくて主婦でもなかったら信じたとでもいうの?そういう自負が彼女の口を開いたのだった。
「そうでしょうよ。あなたなにが出来ます?家事以外に?」
小ばかにした顔で上田が言う。その顔は、とてもじゃないが頭のよい人間がする表情ではないと陽子は思った。
「では逆にお聞きいたしますが、上田先生は家事がお出来になるのですか?」
「家事なんて、別に出来なくてもなんとでもなるでしょう。代替え可能な作業です。誰にでも出来る」
「あなたは、その誰にでも出来る作業ができないのに?誰にでも出来るからこそ技量が問われる仕事だというのに?」
そう言い切る彼女の横顔は美しかった。テレビカメラが着飾った彼女を捉える。登場した際の、少し気後れした感じはもうなかった。
「だから、必要がないからだと言ってるだろう。ものわかりの悪い女だな」
すでに我を忘れ白熱する知識人らに待ったの声がかかった。司会のアナウンサーだった。その脇に佇むアシスタントの女性も、出すまいとしながらも不快そうな顔をしていた。
「先生、すみません。CMに入りますので!」

そこで場面が一転して、レトルト食品のCMが入る。忙しい主婦の味方、レンジでチンしてもう一品!続いて、洗剤。笑顔の主婦が満面の笑みで洗濯物を干している。時間も時間だ、家庭向けのコマーシャルがどんどん流れていく。
なるほどアナウンサーも蒼白になるわけだ。あれじゃあスポンサーになにを言われるかわかったものじゃない。
ポカンとした顔つきで、勇樹と粕川はそのCMを見ていた。まさか、スポンサーまで把握していたのだろうか。
まるで狙ったかのような炎上だった。碓井らを批判していた側の人間が、逆に世の批判を浴びるように仕組まれたかのように。
さらに、加えて彼らは家庭に無くてはならない存在をも巻き込んだ。
主婦が無能ですって?多くの敵を作ったに違いない。きっと今頃SNSは大炎上だ。そして、その彼女らの憧れの的に陽子はなり得たはずだ。彼女はただのお飾りじゃなかった。強い信念を持っている。しかも偉い先生の信頼を得てるじゃない。その彼女を悪く言うなんて。
「……陽子さん、きれいだったね」
溶けてしまったアイスをスプーンですくいながら粕川が言った。少なくとも、無理やりに連れてこられたようでもなかった。それどころか、あのおとなしい陽子さんが意見するなんて。そのことの方が彼女には驚きだった。それは息子の勇樹も同じだったようで、
「うん、きれいっていうか、なんかこう、強かったね。美人チーターみたいな」
とやはり手つかずだったチャーシューを口に運びながら言う。
「なにそれ」
「肉食系?うーん、違うな。でも、キラキラしてた。母さんのこと、止めないほうがいいのかな」
気付けば番組は再開したようだったけれど、うさん臭い知識人らや碓井、陽子の姿はそこにはなく、浜北遺跡で発掘された遺物の紹介のコーナーとなっていた。翡翠でできた勾玉とも違う宝飾品や、石を研いで作った刀に土器。かつての日本を彷彿とさせながら、歴史の教科書で見たそれらより断然に高度な技術を持つ物たちは、なるほどこの先の縄文時代への架け橋を作ったのだろうと思われた。しかし未来よりも過去の方が優れていただなんて、現世を生きる我々にとってはあまりうれしい情報でもなかったけれど。
「このまま彼ら、ネアンデルタール属浜北人が滅びず生き残っていたならば、この国の文明は他国を遥かに凌駕するものになっていたかもしれません。なぜ彼らは滅び、我々サピエンスが台頭したのか。今後の上田先生や碓井先生のご活躍が楽しみですね」
そう司会のアナウンサーが締めくくり、この生放送の特番は幕を閉じたようだった。
彼らが生き残っていたならば。
その思いが人々を覚醒させたのかもしれない。すでに甘ったるい汁となったものを体内に取り込む気も起きず、粕川は思う。
じゃあこれはこの国の意志ってこと?そんな、まさか。
けれど、しかるべくして我々は現れたのかもしれない。彼女はそうも思う。今までの歴史を覆すかのように日々進歩する技術。置いてけぼりなのは人間の方だ。我々のスペックがもっと高ければ、機械なんぞに仕事を奪われることもなかったのに。効率化が叫ばれる中、それを全うできない人々はその仕組みからどんどん振り落されていく。そう、サピエンスからさらに進化しなければついていけないではないか、革新的な技術の進歩に。
そこでDNAは過去に後世に残す遺伝子を求めた。脳の容量の大きかったネアンデルタール。彼らの遺伝子こそ、本来残されるべきだったのでは、と。
「どうなんだろ。陽子さんがそれで幸せなら、止める権利はないと思うけど」
だからあいまいな答えしか彼女には出せなかった。それは本当に彼女の本意なの?なにかに操られているのではなくて?
そう口にも出せなかった。なぜならその考えはあまりに妥当だったし、今後人類が生き残る道として、一番手っ取り早い方法だからだとも思ったからだ。
今から進化するには時間がかかりすぎる。サイクルの早いガラパゴスの生き物とはわけが違うのだ。今更数千年単位でそれを待っている場合でもない。そんなことしているうちにこの地球がだめになっちゃうかもしれないじゃない。その首を絞めている犯人は自分たち人類だというのに。
あやかりたい、という気持ちが初めて粕川にわかった。自分がかつてカスティリオーネだったことなんて、今の自分になにも関係ないと思っていた。けれど、世の進歩についていけない人々は、せめて自分が優れた遺伝子を持っていると思わなければやっていけないのではないだろうか。でなければ、置いてかれて滅びるだけだ。はるか昔の、サピエンス以外の人類のように。
「はあ、どうしよ。明日学校でなにか言われんのかな。『勇樹君のお母さん、王さまだったってホント?』みたいに」
飛躍する粕川をおいて、現実的なのは勇樹だった。確かに、粕川にとって陽子は赤の他人……というほど他人でもないのだろうけれど、しかしこの世でも親子の勇樹の方が被る被害の比ではなかった。世の視線という名の危害。
「せめてテレビ出るなら前もって言ってくれよなぁ。言うなれば大昔からの縁なんじゃん、俺たち親子は。その息子を置いてこんなことする?クーファだって激怒すると思うんだけど」
冷めたチャーシュー丼をモリモリ食べつつ、プンプンと怒りからか勇樹が箸を振り回した。
「それだけあの家が嫌なんだろうけど、でも」
両親の不仲は嫌すぎるほど知っていた。ああ、人間関係って難しいんだな、たとえそれが夫婦であろうとも。
世に絶対などないのだと悟った勇樹だが、けれど母がここまでの暴挙に出るとは思わなかった。しかも、火曜日の夜9時。父親がバアさんといっしょにダラダラテレビを見ている時間ではないか。後片付けをすべて母さんに押し付けて、あまつさえツマミくらい作れと要求する始末。あの遺伝子が自分にあるのだと思うとぞっとするが、それでも過去の遺伝に救われた気持ちでいた。
ああ、俺はきっと本当はルクレティウスとフュオンティヌスの子だったんだ、あのどうしようもない親父の血など流れていない。それくらいの気持だったのに、母さんは今やあの家を切り捨てようとしている。そのために、この時間帯のテレビに出演することを選んだ。
「息子としては止めたほうが自分の為にもなるって思ってるんだけど、クーファ的にはたぶん、やりたいようにやらせておけって思ってる。だって人生なんて一度きりなんだし」
「勇樹君、ほんと中学生?」
「中学生だよ、ピチピチの。でも、過去の記憶があるからなのかも。なんか最近、自分でもやけに冷めてんなぁって思うんだけどさ。親なのに好きなようにやれっておかしくない?俺、子供なのに」
「まあ、自分の子供から言われたらちょっとカチンってくるかも。何を偉そうにって」
「だよね。俺だって嫌だよ、もし自分の子供からそんなこと言われたら」
そこで勇樹は空想した。粕川先生と俺の子供。きっと先生に似てかわいいに違いない。けれどいくらそのかわいい子どもだからって、そんなん言われたら嫌だなぁ。
もちろんこんな妄想を面と向かって言えるはずもなく、勇樹は言葉を濁しておく。
「たぶん、クーファがこの先を知ってるからだと思うんだよね。この先、王が滅びていく様を見ていたから」
「あの王が?」
カスティリオーネにはまだない記憶だった。あるいは、彼女の方がクーファより先に逝ってしまったのか。いま知り得る情報がすべてかどうかは分からなかったけれど、時折よみがえる記憶の中には王国の終わりのシーンなどなかった。
「うん、たくさんのヒトに追われて。俺、勇者なんて名乗ってたけど、正直争いも特にない穏やかな国だったしさ、せいぜい獣を仕留めればいいくらいだったから。まさか、似たような姿の生き物を殺すわけにもいかないじゃん、いくら人種が違かったとはいえ」
平和ボケ。それは今のこの国にも通じるものがあったのかもしれないが、その当時からとかく平和だった。時代が時代だ、ヒト同士で争っている余裕もなかったのかもしれない。奪い合うより協力して分け合ったほうが効率が良い、そういう時代だったのだ、旧石器時代、氷河期であったこの国では。
そこに、ほかの土地からきた人類が来た。彼らは自分と似たような姿の我々を、追い立てた。
「それが今のホモ=サピエンスなのかは知らないよ?まあ、ヒトの形をしていた以上、そうとしか考えられないけど。とにかく王は追われてシャンポリオンは奪われた。それが今のところ俺の知ってる大昔の歴史」
「だからせめて現世では好きにすればいいって?」
「うん、別に王だろうがなんだろうが、生き物はほっといても死んじゃうんだし。後悔するくらいならしたいことをした方がいいって、道徳の授業でも言ってたし」
「それは、そうだけど」
けれどそれは本当に、今を生きる陽子さんの思うところなのだろうか。どうやら同じことを考えていたらしい勇樹が、
「でもあれは母さんなのか、フュオンティヌスなのかわからなくて困ってる」
とこぼした。
「あとはあのテレビを見て、あの家の人がどう言うかかによるかも」
「ご家族が?」
「腐っても家族は家族だよ。だからその分期待は大きくなる。ほかの誰より自分のことをわかってくれてるって無条件に思っちゃうから」
「それは……そうかも」
「下手な受け答えをしたら、母さんは母さんじゃなくなるよ」
勇樹は静かな声でそう言った。先ほどまでのチャーシュー丼をかっさらう彼の姿とは違う、大人びた雰囲気で。
ああ、これでこそ勇者クーファ。人知れず粕川はそう思う。いや、今なんて?過去なんてなにも関係ないじゃない、なにを過去に今の彼を重ねているの。
そろそろ店じまいの時間の様だった。閑散とした店内には彼らの姿しかなく、店主がそわそわとしながらこちらを見ている。
ええ、帰ります、長居して申し訳ありませんでした。
それでも彼女は考えずにはいられなかった。陽子さん、あなたは本当にそれでいいの?と。
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