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再会【セイ】

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 セルジュが出ていってから直ぐに僕は外に出て捜した。心の中で馬鹿な自分を呪いながら……
 知らずに涙が溢れてくる。何故あんな事をしてしまったのか。
「セルジュ、ごめんよ! お願いだから出てきて」
 浜辺に膝を付き、遂には声を張り上げて泣いた。
 ――失ってしまった、僕の初恋。




「セイ、本当に大丈夫か?」
 魔法魔術学校へと戻る朝。父さんが心配して言った。
 あれから僕はろくに口もきかないし。食事さえ満足に取ってないから。
「大丈夫だよ父さん。じゃあ行って来ます」
 遠く離れた場所で、心配を掛させてはいけないと努めて元気を装って言う。



 学校は自宅から帰ってきた生徒達が、元気に休み中の話しをして騒がしい。
「よお、セイ。どうしたんだその顔!? まるで幽霊のようだ」
 同じチームのケントがびっくりして言った。
「うん、ちょっとね……」

 言葉を濁して答えた僕に、後ろから肩を叩き興奮して声をかけてきた奴がいた。やっぱりチームメイトのチェンだ。
「よーよー大ニュースだよー。いま時期入学してきた子がいるんだよ。それがまた、凄く可愛い子でさぁ。オレ好きになっちゃいそう」
 そういえば彼は、自宅に帰らなかったっけ。寝不足のぼんやりとした頭で考えてると、始まりの鐘が鳴り、皆おとなしく席に着く。

「皆さん、おはよう! 休みに自宅に帰っていた人は休み呆けはしてないかな?」
 今日の一時間目の授業は変身術で、クリスティーナ先生の授業か。先生はこの学校には珍しく、若い女の先生だ。

「自宅に帰っていて知らなかった方達の為に、もう一回紹介しょうかなー?」
 先生がそう言うと、居残り組の中から盛大な拍手が沸き起こり僕はびっくりした。
『何だろう、この盛り上がりは』

「じゃあ、入って来て良いわよ。セルジュ君」
 その名前を聴いて、僕の心臓は早鐘を打ち始めた。
『まさか? でもそうであって欲しい』

 呼ばれて少し緊張気味に教室に入って来たのはセルジュ、君だった。
「初めまして、セルジュ・フォン・カンパリーノです。よろしくお願い……」
 紹介の途中で僕に気付いた君は、言葉を失い立ち尽くしていた。
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