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出逢い【セイ】
しおりを挟むその日、僕は父と一緒に釣りをしに海へ来ていた。魔法魔術学校の試験休みで、久しぶりに家に帰った僕に父が誘ってくれたのだ。
「父さん、大漁だったね」
その日の海は僕達に微笑み、天気も釣りも絶好調だ。
「セイ、先に帰ってコレを調理してるからな」
家では釣りをした日は、父さんがコックになって料理を振る舞う。母さんが生きた魚が触れないためだ。
「分かった。僕は後片付けしてから帰るよ」
海から家まではさほど遠くない。父さんは先に帰って行った。
「さあ、今日はご馳走だぞ」
足元で元気に尻尾を振っている、ゴールデンレトリバーのジョンが元気良く吠えた。
後片付けと言っても、釣竿の手入れ位しかないから、ノンビリと砂浜に寝転んだ。
気が付いたら寝てしまったらしい。ジョンの吠える声で起こされた。
吠え声を頼りにジョンに近付くと、誰かと一緒みたいだった。
「ジョン、 駄目だろ! 人に吠えるなん……」
近付くと、僕が見た人は人じゃなく。綺麗な、とても美しい人魚だった。
「大丈夫? 綺麗な人魚さん――」
僕が見つけた時は、苦しそうにしていて、思わず声を掛けたら、少しだけ目を開けたけど、そのまま気を失った。
「ジョン、離れて!」
気が動転してしまった僕は、人魚を抱き上げ小屋に向かい走った。
小屋に着き、ベッドなど無いから、隅に置いてあった毛布の上にソッと寝かせて……目が離せなくなる。
肌の色は何処までも白く、漆黒の波打った髪が顔に掛っていて、指でソッと退けたら美しい顔が現れた。『綺麗だ……』
見つめてると胸が苦しくなる。触れてみたくて仕方ない。
と、信じられない事に段々と様子が変わってきた。
真っ黒だった髪が、色が抜けて茶色になって、人魚であるヒレが人間の足になってゆく。
苦しそうだった息遣いも穏やかになって。ゆっくりと目を開けて、僕を真っ直ぐに見つめ言った。
「君はダレ?」
目の前で人間の男の子になった、この人魚に僕は何も言えなかった。
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