上 下
13 / 14

新米吸血鬼はキョドりと共に新世界へと歩き出す。

しおりを挟む
「はい、immortalイモータル東京支部です。何かお困り事ですか?」
 キドのおっさんに連れて来られた此処は丸の内のオフィス街。
 四十七階建の二十四階にある、ぱっと見た限り普通のオフィスというか、銀行や役場の様な感じだ。
 受付を済ませソファに座って辺りを見渡す。
 電話で応対してる職員を見てると、ここが吸血鬼の為の自治会の施設には到底見えない。
「和希さん、どうかされましたか?」
 また情緒不安定かと心配そうに覗き込むキドに何でも無いと返事をする。
 此処に来るのに電車で来たが、乗客は俺達が吸血鬼だとは気が付かず心配は杞憂に終わった。
 鏡に映らないので、それさえ気を付ければ問題は無さそうだ。
「街田和希さん、お待たせしました」
 名前を呼ばれ案内された個室に入ると椅子に座って待つように指示された。
 程なくドアを開けて入って来たのは、俺と同年代ぐらいの女の子だった。
 目鼻立ちがハッキリしたアニメのコスプレの様な衣装を着て髪はツインテールの左右二色に染め分けている。スカートなんか屈むとパ○ツが見えそうなぐらい短い。嫌いじゃ無いが、今まで縁がなかったタイプの女の子だ。
「えーと、街田和希さん? あ、木戸次長。どうしたんですか?」
「更紗ちゃん、今日わたしは付き添いで此処に来たんだよ。気にしないで続けて」
 どうやらキドのおっさんは、この施設の次長らしい。人……じゃ無いが見掛けによらないとは、良く言ったものだ。
 実際、ここに来てからのキドはキョドって無いし、落ち着いたおっさんにしか見えない。
「街田和希さん。えーと、新しく登録しに来たと。書類拝見します」
 パラパラと書類を捲る音だけが聴こえ、沈黙に耐え切れなくなった頃。やっと読み終えたのか書類をトントンして、ふうと息を吐いた。
「確認して受理しました。お疲れさまです」
 無事に登録が終わりホッとして帰ろうと部屋を出たところで入口付近で騒がしい声が聴こえた。
「だぁ~かぁ~らぁ、オレは知らないって言ってるの。濡れ衣着せちゃって良いのかな~責任問題になるよ加護野かごのくん」
 黒縁眼鏡が良く似合う知的な印象の三十代ぐらいの男の人の軽い話し方に面食らっていると、加護野くんと呼ばれたショートカットの可愛い子が眼と鼻の頭を真っ赤にして今にも泣き出しそうに見える。
 可愛い子が泣かされているのを平気で見ていれるほど俺は腐っちゃいない。
 一言何か言ってやろうと身構えた所を木戸のおっさんに止められた。
花味月翔夜はなみずきしょうや君。加護野君が何かしたのか?」
 花味月と呼ばれた黒縁眼鏡は木戸の顔を見ると急に叱られた子供の様にしおらしくなった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~

新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。 佐倉 かなた 長女の影響でエロゲを始める。 エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。 口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM 美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな 橋本 紗耶香 ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。 橋本 遥 ど天然。シャイ ピュアピュア 高円寺希望 お嬢様 クール 桑畑 英梨 好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク 高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才 佐倉 ひより かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。

追憶の君は花を喰らう 

メグロ
キャラ文芸
主人公・木ノ瀬柚樹のクラスに見知らぬ女子生徒が登校する。彼女は転校生ではなく、入学当時から欠席している人だった。彼女の可憐ながらも、何処か影がある雰囲気に柚樹は気になっていた。それと同時期に柚樹が住む街、枝戸市に奇妙な事件が起こり始めるのだった――――。 花を題材にした怪奇ファンタジー作品。 ゲームシナリオで執筆した為、シナリオっぽい文章構成になっている所があります。 また文量が多めです、ご承知ください。 水崎ソラさんとのノベルゲーム化共同制作進行中です。(ゲームやTwitterの方ではHN 雪乃になっています。) 気になる方は公式サイトへどうぞ。 https://mzsksr06.wixsite.com/hanakura 完結済みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

黎明のヴァンパイア

猫宮乾
キャラ文芸
 仏国で対吸血鬼専門の拷問官として育った俺は、『オロール卿』と呼称される、ディフュージョンされている国際手配書『深緋』の吸血鬼を追いかけて日本に来た結果、霊能力の強い子供を欲する日本人女性に精子提供を求められ、借金があるため同意する。なのに――気づいたら溺愛されていた。まだ十三歳なので結婚は出来ないが、将来的には婿になってほしいと望まれながら、餌付けされている。そんな出会いと吸血鬼退治の物語の序幕。

申し訳ないが、わたしはお前達を理解できないし、理解するつもりもない。

あすたりすく
キャラ文芸
転生して、偶然出会った少年に憑依した女性が、転生した世界の常識とか全部無視して、ルールを守らない者達を次々と粛正していくお話です。

ロボ娘「愛朔さん」は生き残りたいっ!~ロボバレするとスクラップにされるのでバレないよう女子高生やります!~

あさままさA
キャラ文芸
 私、愛朔は人間と遜色ない見た目をしたロボットです。博士から高校三年間、ロボットであることを誰にも知られず生活することを言い渡されてこの春から女子高生となりました。  なので、できれば誰とも関わらず平穏に暮らしたい。  しかし、クラスメイトの姫崎さんはどうも私の正体に気付きつつあるようで、毎日ロボットだと証明するべく絡んでくるのです。  例えば……、 「愛朔さん、背中にマグネットついてる。取ってあげるよ」 「あ、すみません。感謝です」 「……糸屑ついてる感覚でやり取りしてるけど、そこはいいの?」 「あ、しまった! 人間は体に磁石つかないですね!」 「やっぱりロボットじゃん」 「いやいや、ロボットじゃないんですよ!」  という感じですが、私は華麗に姫崎さんの言葉をいなします。  そんなわけで姫崎さんに絡まれた私はロボバレしないよう彼女の追及を逃れる日々。やがて、姫崎さん以外にも私と交流を持つ人間が増え、望んだ平穏はどこへやら……。  私は本当に三年間、ロボットだということを隠しきれるのでしょうか!? ※毎日一話ずつ更新します!(たぶん) ※基本一話完結の日常コメディー、たまにストーリーが進んでいきます。

OL 万千湖さんのささやかなる野望

菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。 ところが、見合い当日。 息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。 「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」 万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。 部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。

処理中です...