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終焉のアンリミテッド
キール③
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レイジが入って行った後、僕は途方に暮れてしまった。ヤツが熱心な信者だとは思えなかったからだ。
アサシンが神に何の用があるというのか。どうせ僕らは地獄行きが決まっているというのに。
嘲笑って、でも胸の奥でチクリと棘が刺さったように痛む。
中に入る勇気はとても無かったので、『力』で視る。
レイジはシスターの静止を振り切って奥に進み、突き当たった電話ボックス程の小さい子部屋へと入った。
さすがにドア二枚分は透視出来ず、仕方なく教会のドアを開けて入る。
今日は肌寒かったのでフード付きの服を着て来て良かった。目立たぬ隅の席に座り様子を窺う。
生まれて始めて来たそこは、信仰も無い自分が居てはいけない場所の気がして落ち着かない。
バタンと大きな音がしたかと思うと奥の小部屋から年配の男が突き飛ばされたのか、尻餅をついている。シスターが駆け寄り抱き起こしていた。
どうせレイジが順番も守らずにやった事に違いない。つくづく嫌な男だ。
小部屋の中を透視する。レイジが部屋の中の仕切り越しに誰かと話をしている。
相対してるのは神父だろうか? 顔は良く視えないが眼鏡を掛けて穏やかに微笑んでいるように見えた。
やがて気が済んだのか来た時と同じに慌ただしく帰っていった。
咄嗟にレイジを追おうかと思ったが、ここに何をしに来たのか気になったので神父に話を聞くことにした。
レイジが出て来た部屋へと入る。中は灯りは殆どなくて薄暗い。
透視で視た通りに神父との間には小さな窓があり相手の顔が辛うじて見えるくらいだ。
「懺悔ですか?」と声を掛けられる。
その声が聴こえた途端、僕の理性は考えることを放棄して、ただ問い返す事しか出来なかった。
「……マスター何故ここに?」
「どなたですか? マスターとは誰のことです?」
イヤ、嘘だ、ウソだ、うそ…………。
目の前ににいる人は『アース』の社長の御曹司であり、僕達『アサシン』のマスターのトーマ様だ。確かに眼鏡は掛けてはいないが、あの御方の声を聞き間違えるわけが無い。
「あなたはトーマ様なのでしょう?」
トーマという名前を出すと、目の前のあなたはホッと息をつき笑って言った。
「トーマの知り合いなのですか? 私は双子の弟でアンリと言います」
双子? 知らなかった。レイジは知っていたのに僕は……
目の前が真っ暗になり、立っている事が出来なくて僕は意識を手放した。
アサシンが神に何の用があるというのか。どうせ僕らは地獄行きが決まっているというのに。
嘲笑って、でも胸の奥でチクリと棘が刺さったように痛む。
中に入る勇気はとても無かったので、『力』で視る。
レイジはシスターの静止を振り切って奥に進み、突き当たった電話ボックス程の小さい子部屋へと入った。
さすがにドア二枚分は透視出来ず、仕方なく教会のドアを開けて入る。
今日は肌寒かったのでフード付きの服を着て来て良かった。目立たぬ隅の席に座り様子を窺う。
生まれて始めて来たそこは、信仰も無い自分が居てはいけない場所の気がして落ち着かない。
バタンと大きな音がしたかと思うと奥の小部屋から年配の男が突き飛ばされたのか、尻餅をついている。シスターが駆け寄り抱き起こしていた。
どうせレイジが順番も守らずにやった事に違いない。つくづく嫌な男だ。
小部屋の中を透視する。レイジが部屋の中の仕切り越しに誰かと話をしている。
相対してるのは神父だろうか? 顔は良く視えないが眼鏡を掛けて穏やかに微笑んでいるように見えた。
やがて気が済んだのか来た時と同じに慌ただしく帰っていった。
咄嗟にレイジを追おうかと思ったが、ここに何をしに来たのか気になったので神父に話を聞くことにした。
レイジが出て来た部屋へと入る。中は灯りは殆どなくて薄暗い。
透視で視た通りに神父との間には小さな窓があり相手の顔が辛うじて見えるくらいだ。
「懺悔ですか?」と声を掛けられる。
その声が聴こえた途端、僕の理性は考えることを放棄して、ただ問い返す事しか出来なかった。
「……マスター何故ここに?」
「どなたですか? マスターとは誰のことです?」
イヤ、嘘だ、ウソだ、うそ…………。
目の前ににいる人は『アース』の社長の御曹司であり、僕達『アサシン』のマスターのトーマ様だ。確かに眼鏡は掛けてはいないが、あの御方の声を聞き間違えるわけが無い。
「あなたはトーマ様なのでしょう?」
トーマという名前を出すと、目の前のあなたはホッと息をつき笑って言った。
「トーマの知り合いなのですか? 私は双子の弟でアンリと言います」
双子? 知らなかった。レイジは知っていたのに僕は……
目の前が真っ暗になり、立っている事が出来なくて僕は意識を手放した。
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