アサシンの夜明け

水月美都(Mizuki_mitu)

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終焉のアンリミテッド

キール①

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 ねえ、何故なんだろう? ナゼ僕では駄目なのか……。あなたとルイは何で、アイツでナケレバならなかったのかな?
 ヤツはまるで疫病神だ。関わる人間は皆不幸になる。それでいて誰もが魅了されてしまう見目形をしているから質が悪い。

 ――ルイが死んでしまった。
 元々身寄りの無い僕にとって、唯一心を開いて話が出来る弟の様な存在だったのに。
 あなたもそう。あなたの立場であれば僕らを意のままにする事が出来る筈なのに。
 本人が嫌がることを決してせず苦しい恋に身を焦がしている。
 だから、僕がヤツをこの世から抹殺しても構わないじゃないか。
 だって、その為に僕達は此処に居るのだから。
 自分と愛する人の為に殺しをして何が悪い?

「キール、此方へおいで」
 あなたは手招きする。抗いがたい引力の様に僕は吸い寄せられる。
 腕の中に閉じ込められて熱いキスを落とされ、とても嬉しい。だが僕はヤツの代替品だから過剰な期待はするなと心の何処かでブレーキを掛けるもう一人の自分が言う。
『いいか? お前は愛されていない。ヤツの身代わりなのだ……。見返りを求めてはイケない、夢を見てはナラない。でないと逢うことすら叶わなくなる。そうなったら、耐えられるのかお前は?』
 ああ、そうなったら生きていけるのかさえ疑わしい。
「キール、頼みがあるんだ、とても大切な……」
「はい、何でもお申し付け下さい」

 あなたは僕に命じた、アイツとパートナーを組むようにと。それは僕にとって酷く残酷な命令であるとともに千載一遇のチャンスでもあった。
 そう、ヤツをこの世から抹殺するチャンスだ。

 これは、僕=キール十六歳、ヤツ=レイジ十四歳の、夏が急ぎ足で去り、全てを凍らす冬が来るまでの出来事だ。

「ゼロとキール、本日付けでパートナーとなる事を命ずる」
 例によって副社長に呼び出され言い渡された。毎回、辞令の度に口頭で命じるのは副社長の唯一の仕事らしい。
 この会社組織は表向きは建築会社のせいか社員はガテン系が多い。実戦チームの殆どが傭兵上がりの荒くれ者が占めている中で、T・Kの実戦チームは異彩を放っていると言える。
 隠密にミッションを遂行する為に身体がまだ出来上がる前から厳しい訓練で鍛え、ターゲットを油断させるために成人する前の僕らに相手の懐に飛込み油断させるための手練手管を叩き込ませた。
 レイジはその中でも圧倒的に銃器の扱いに長けており、まだ少年だというのに人を狂わせる程の美しさを持ち合わせていた。
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