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アサシンSS集
神父といっしよ
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【神父とレイジ】
「レイジ……また来たのですか?」
呆れた声で神父は言った。
「なあ、オレは死んだら天国に逝けるんだろ?」
今日のレイジは何時もと違い、柔らかに微笑んでいる。
懺悔室の中、頬杖を付き私に悪戯っ子の様に返事をねだる。
「レイジ、君は天国に逝けるよ。今の君ならね」
レイジは白くて長い指を伸ばし、私の眼鏡を掬い取った。
「あっ、何するんです?」
「返して欲しい?」
私の眼鏡から下がっている鎖を指に絡ませ、上目使いに窺うレイジに苦笑しながらも「返して下さい」と優しく言った。
「じゃあ、取りに来て」
仕方なくドアを開けてみれば腕を掴まれ。
「何時ものお礼……」
呆気にとられる私を残し、綺麗な殺人者は帰って行った。
〖お題Kiss〗
【神父とショーゴ】
「貴方の罪を主に明かして許しを乞うのです……」
私がそう言うと貴方は鼻で笑って言った。
「主に? ハッ! 馬鹿バカしい。おれは懺悔しに来たんじゃない。レイジが良く来ると聞いたから来てみただけさ」
真っ直ぐ切り揃えた漆黒の髪を振り、意思の強い瞳が私を見つめている。
レイジの知り合いだという人は、歳は同じ位だろうか。表面上は静かに見えるが内には燃え盛る炎の獣がいると私は感じた。
「それでは、何しに此方に来たのですか?」
お互いの視線がぶつかり合って、暫し時が止まる。先に目を逸したのはこの綺麗な人だった。
「面白いね……レイジが来たがる訳だ。読めない奴は珍しい」
あんただったら、懺悔しても良いかな? 静かに微笑み貴方は部屋から出て行った。
あの人には、ふさわしくない血塗られた場所へと――
私は眼鏡を外し祭壇へ跪き祈る。
神よ、聞き届けたまえ。
美しきチルドレン達に暫しの休息と魂の安らぎが有らん事を……
【神父とマコ】
「貴方の罪を主に明かし赦しを乞うのです……」
いつもの言葉、見慣れた懺悔室の狭い空間。それが私を逃れようがない焦燥へと掻き立てる。
「神父様……」
幼い声が私を呼ぶ。振り返ると五歳程の子供が泣きそうな顔で立っている。
「どうしたんだい? マコ」
この子は、戦争孤児だ。両親とも先の戦いに巻き込まれ亡くなってしまった。
本来なら周りの人間からも見捨てられ命を落として居た筈。
運命を変えたのは私。ならば、守らなければ。
「神父様、死んでしまうよ……」
子供ながらにも賢さを宿した瞳。大粒の涙を溜め声なく泣く子を、きつく抱き締める事しか私には出来なかった。
【神父とレイジROUND2】
「ねぇ、何時も同じこと言うのはさぁ、飽きない?」
ここは、私の仕事場である懺悔室の中で。レイジが退屈そうに欠伸をして言った。
飽きるとか言うなら来なければ良いのに。と思ったが、彼が来ない日が有ったとしたなら仕事にしくじって逝ってしまった時だと分かっている。
だから、少しの我が儘さえ愛しく思えるのだ。
「飽きたりしませんね。貴方が神に召されるその瞬間までは。私は何時でも此処に居ます」
貴方は綺麗な顔を歪ませて、わざと鼻で笑い横を向いた。
「そう。それじゃ、オレが死ん……召されたらアンタは神父を辞めるの?」
言葉では軽く聞いているが、表情は真剣そのもので、私は胸が温かくなるのを感じていた。
「……多分。否、分かりません。先の事は私には……」
途端に面白くなさそうに、眉間に皺を寄せ吐き出す様に言う。
「だから、アンタはつまらないんだよ。嘘でもこう言う時は『辞める』と言わなくちゃ」
捨て台詞を残し貴方は帰って行った。私は声を出さずに笑い微かに呟く。
「また、明日逢いましょう」
「レイジ……また来たのですか?」
呆れた声で神父は言った。
「なあ、オレは死んだら天国に逝けるんだろ?」
今日のレイジは何時もと違い、柔らかに微笑んでいる。
懺悔室の中、頬杖を付き私に悪戯っ子の様に返事をねだる。
「レイジ、君は天国に逝けるよ。今の君ならね」
レイジは白くて長い指を伸ばし、私の眼鏡を掬い取った。
「あっ、何するんです?」
「返して欲しい?」
私の眼鏡から下がっている鎖を指に絡ませ、上目使いに窺うレイジに苦笑しながらも「返して下さい」と優しく言った。
「じゃあ、取りに来て」
仕方なくドアを開けてみれば腕を掴まれ。
「何時ものお礼……」
呆気にとられる私を残し、綺麗な殺人者は帰って行った。
〖お題Kiss〗
【神父とショーゴ】
「貴方の罪を主に明かして許しを乞うのです……」
私がそう言うと貴方は鼻で笑って言った。
「主に? ハッ! 馬鹿バカしい。おれは懺悔しに来たんじゃない。レイジが良く来ると聞いたから来てみただけさ」
真っ直ぐ切り揃えた漆黒の髪を振り、意思の強い瞳が私を見つめている。
レイジの知り合いだという人は、歳は同じ位だろうか。表面上は静かに見えるが内には燃え盛る炎の獣がいると私は感じた。
「それでは、何しに此方に来たのですか?」
お互いの視線がぶつかり合って、暫し時が止まる。先に目を逸したのはこの綺麗な人だった。
「面白いね……レイジが来たがる訳だ。読めない奴は珍しい」
あんただったら、懺悔しても良いかな? 静かに微笑み貴方は部屋から出て行った。
あの人には、ふさわしくない血塗られた場所へと――
私は眼鏡を外し祭壇へ跪き祈る。
神よ、聞き届けたまえ。
美しきチルドレン達に暫しの休息と魂の安らぎが有らん事を……
【神父とマコ】
「貴方の罪を主に明かし赦しを乞うのです……」
いつもの言葉、見慣れた懺悔室の狭い空間。それが私を逃れようがない焦燥へと掻き立てる。
「神父様……」
幼い声が私を呼ぶ。振り返ると五歳程の子供が泣きそうな顔で立っている。
「どうしたんだい? マコ」
この子は、戦争孤児だ。両親とも先の戦いに巻き込まれ亡くなってしまった。
本来なら周りの人間からも見捨てられ命を落として居た筈。
運命を変えたのは私。ならば、守らなければ。
「神父様、死んでしまうよ……」
子供ながらにも賢さを宿した瞳。大粒の涙を溜め声なく泣く子を、きつく抱き締める事しか私には出来なかった。
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「ねぇ、何時も同じこと言うのはさぁ、飽きない?」
ここは、私の仕事場である懺悔室の中で。レイジが退屈そうに欠伸をして言った。
飽きるとか言うなら来なければ良いのに。と思ったが、彼が来ない日が有ったとしたなら仕事にしくじって逝ってしまった時だと分かっている。
だから、少しの我が儘さえ愛しく思えるのだ。
「飽きたりしませんね。貴方が神に召されるその瞬間までは。私は何時でも此処に居ます」
貴方は綺麗な顔を歪ませて、わざと鼻で笑い横を向いた。
「そう。それじゃ、オレが死ん……召されたらアンタは神父を辞めるの?」
言葉では軽く聞いているが、表情は真剣そのもので、私は胸が温かくなるのを感じていた。
「……多分。否、分かりません。先の事は私には……」
途端に面白くなさそうに、眉間に皺を寄せ吐き出す様に言う。
「だから、アンタはつまらないんだよ。嘘でもこう言う時は『辞める』と言わなくちゃ」
捨て台詞を残し貴方は帰って行った。私は声を出さずに笑い微かに呟く。
「また、明日逢いましょう」
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