アサシンの夜明け

水月美都(Mizuki_mitu)

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サイキックチルドレン

ショーゴ②

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「室長、このままでは彼は死んでしまいます」

 部下が焦って報告に来た。無理もない。
 唯でさえテレパシーは脳への負担が多い能力なのだから。
「ショーゴ君の体力が回復するまで、しばらく実験は中止するしかないだろう。食事が取れる様になるまで、シールド室に寝かせてあげなさい」


 ◇◇◇


 目が覚めた僕は機械だらけの白い部屋から機械がひとつも無い普通のベッドに寝かされていた。
 不思議だ。耳に聴こえる音だけではなく頭にも何一つ響いて来ない。
 生まれて初めて、こんなに静かな時を知った。

 ベッドから起き上がると横のテーブルには美味しそうな料理が湯気をたてている。
 スプーンを取り口に運ぶ。しばらくぶりの食事は美味しかったが直ぐに満腹になった。

「あっ、ショーゴ君、目が覚めたんだね。料理はどうだった?」
 ここに来てから白い洋服を着た人しか見てなかった僕は歳の近そうなお兄さんを見て警戒を少し解くが。
『あれ? 何も聴こえてこない……』
 意識して心を読むけど何一つ声が聴こえないことに少し怖くなって俯く。

「いまの君は休みが必要だって。だから沢山ご飯食べてゆっくりするんだよ」
 お兄さんが優しく頭を撫でる。僕は辛い実験から逃れた事にホッとし笑いかける。
 この施設に一番長く居ると言った彼は栗色で柔らかそうな髪に薄緑の瞳、手足が長くスラリとした中性的な感じの男の子だった。
 
「僕はユウリ十一歳だよ。妹はアイリでショーゴより、一つ上だよ。アイリはね、普段は眠ってばかり居るんだよ」
 ユウリは世話焼きで、こんな場所にずっと居るのに陽だまりのように明るい人で、実験で傷付いた、僕のココロを解かしてくれる。
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