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哀しい鳥は夢を見る
夢⑧
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ゼンsibe
レイが連れ去られた時。窓から飛び降りた次の瞬間、姿が欠き消えていた。
『テレポート……?』
では、レイはルイに連れ去られたのか? でもアレは、あの姿はルイではない。
身長は俺より高かったし、身に纏った空気が違う。何よりルイが何故レイを?
考えていたら、ある事に思い至り、身体中に戦慄が走った。
『俺の……せいか? 俺が、レイを奪ってしまったから』
それほどに、身体を変えてまでも、レイを欲していたとは。
でも……それでも、レイを渡す訳にはいかない。
俺にとっての全て。レイの居ない世界など、なんの未練もない。
居場所の見当は付いた。俺は握り締めた刀を腰に差し、立ち上がって部屋から出た。
決着を付けに行くために――
◇◇◇
「ルイ君、それ以上したら君の愛してる人は死んでしまうよ」
朦朧とした意識の中で、声を掛けられた事だけは覚えている。
上に乗ってるルイの動きが止まった途端、オレは意識を手放した。
どのぐらいの時が過ぎたのか。目覚めた時、側にはルイがオレの髪を愛おしげに撫でていた。
「ルイ……。一緒に死のう」
長時間あえいでいたおかげで声が喉に張り付き、それだけ云うのがやっとで。声に出した途端、涙が溢れた。
「それはいけません。せっかく実験が成功したというのに……」
ゆっくり声のした方に首を回すと、白衣を着た白髪混じりのジイサンがにこにこして立っていた。
「アンタが! ルイをこんな姿に……したのか?」
「そうですよ。この子がどうしても貴方を抱きたいと言うので」
マッドサイエンストは如何にも楽しそうに話す。
「見てしまったらしいですね、貴方が他の男と愛し合っている所を。貴方のその美しい身体を抱きたいと思っても、何の不思議も無いでしょう?」
「ずっと……見てたのか? アンタは。アンタこそ人間じゃない! ルイを元に戻せよ!……もとに……返せ! オレの……」
今すぐコイツを殺してやりたい! 初めて自分の怒りで殺したいと思った。
「ええ、楽しく見させて頂きましたよ。私だって男ですからね、ああ、元には戻せないです。それはルイ君だって知っている筈です」
「そうか? それなら……死ね」
声が……ゼンの声が聴こえた様な気がした。
レイが連れ去られた時。窓から飛び降りた次の瞬間、姿が欠き消えていた。
『テレポート……?』
では、レイはルイに連れ去られたのか? でもアレは、あの姿はルイではない。
身長は俺より高かったし、身に纏った空気が違う。何よりルイが何故レイを?
考えていたら、ある事に思い至り、身体中に戦慄が走った。
『俺の……せいか? 俺が、レイを奪ってしまったから』
それほどに、身体を変えてまでも、レイを欲していたとは。
でも……それでも、レイを渡す訳にはいかない。
俺にとっての全て。レイの居ない世界など、なんの未練もない。
居場所の見当は付いた。俺は握り締めた刀を腰に差し、立ち上がって部屋から出た。
決着を付けに行くために――
◇◇◇
「ルイ君、それ以上したら君の愛してる人は死んでしまうよ」
朦朧とした意識の中で、声を掛けられた事だけは覚えている。
上に乗ってるルイの動きが止まった途端、オレは意識を手放した。
どのぐらいの時が過ぎたのか。目覚めた時、側にはルイがオレの髪を愛おしげに撫でていた。
「ルイ……。一緒に死のう」
長時間あえいでいたおかげで声が喉に張り付き、それだけ云うのがやっとで。声に出した途端、涙が溢れた。
「それはいけません。せっかく実験が成功したというのに……」
ゆっくり声のした方に首を回すと、白衣を着た白髪混じりのジイサンがにこにこして立っていた。
「アンタが! ルイをこんな姿に……したのか?」
「そうですよ。この子がどうしても貴方を抱きたいと言うので」
マッドサイエンストは如何にも楽しそうに話す。
「見てしまったらしいですね、貴方が他の男と愛し合っている所を。貴方のその美しい身体を抱きたいと思っても、何の不思議も無いでしょう?」
「ずっと……見てたのか? アンタは。アンタこそ人間じゃない! ルイを元に戻せよ!……もとに……返せ! オレの……」
今すぐコイツを殺してやりたい! 初めて自分の怒りで殺したいと思った。
「ええ、楽しく見させて頂きましたよ。私だって男ですからね、ああ、元には戻せないです。それはルイ君だって知っている筈です」
「そうか? それなら……死ね」
声が……ゼンの声が聴こえた様な気がした。
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