アサシンの夜明け

水月美都(Mizuki_mitu)

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哀しい鳥は夢を見る

夢⑦

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 着いた所は、如何にも怪しげな研究室らしい部屋。
「ルイ、此処は……ドコ?」
 裸電球ひとつだけの薄暗い部屋のベッドにオレをソッと寝かせ、ルイは立ち尽くしている。
 頭からスッポリとフードの様な物を被り顔が見えないが、ルイであるのは間違いない。
 覗く瞳は深碧でオレを見つめる眼差しは優しい。だけど、オレの知ってるルイは居なくなってしまった。

「ルイ、どうして? 何で手術なんか……」
 多分オレのせいだ。ルイが成長が遅いのを気にしていたのを知っていた筈なのに。
 ゼンと一緒にいる事が多くなってから、ルイの事を構わなくなってしまったから。

「ゴメンね。ルイ、許して……」
 ルイは何も言わずオレの側に来て手を伸ばした。
「おれ……のもの……レイジは……お・れ・だけ……のモノ……ダ……コロスアイツヲ……」
 最早、人語さえ忘れかけているルイの姿。隠しているフードを取った時、余りの変わりように言葉も無く見つめている事しか出来なかった。

 DNAを操作して掛け合わせた、異形の化け物。成長と引き換えに手に入れた身体。ただ、ルイはオレに身合う身体が欲しかっただけなのに。
「いいよルイ、抱きなよ」
 おずおずと出してきたその手は、硬いウロコの様なものに覆われ、チロチロと長い舌でオレの身体を舐めまわす。入ってきた時、あまりの痛さに意識が霞んだ。


 ◇◇◇


「目が覚めたかい?」
 研究室で目覚めたおれは室長の言葉が直ぐには理解出来なかった。その意味が分かった途端、自分の身体を確認するために、手術着から出てる両手を見た。
 ――そこに映ったモノ。それは人間じゃなかった。
「ナゼだ?! こんな姿に……こんな……人間じゃない!」
「君が望んだ身体だよ。逞しい、ちゃんと好きな人を抱ける身体じゃないか」
「DNAの配合には気を配ったつもりだよ。成長ホルモンだけでは無理だから、少し爬虫類を入れてみたら巧くいった」
 室長の話しを最後まで聞かずに研究室をテレポートしてた。



 もう、何度身体を重ねたか分からない。多分オレは、このまま死ぬのだろう。それでもいいと思っていた。ルイを見捨てたオレの罪だから。


 きみを苦しめたくはない。
 ただ……アイシタカッタ。
 ソレダケ……ナノニ……

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