アサシンの夜明け

水月美都(Mizuki_mitu)

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哀しい鳥は夢を見る

夢⑤

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 ――次の日――

 オレ達とゼン達は共に任務に赴く事に。電車の中で気まずい空気が漂よう中、一人元気なのはルイだ。
「レイジ~任務が終わったら遊園地に行こうね!」
 今度の任務はかなり上級者でも手こずるらしく、成功したご褒美が一日好きな事をして良いと言うもので。
 今からルイは遊園地か動物園かで悩んでいた。
「オレは何処でも。ルイに任せるよ」
 ルイの明るさには何時も救われる。これから人を殺さなければいけない時は特に。

「お二人さん、そろそろ現場に着きそうよ。本当に仲が良くてうらやましいわ」
 ゼンの相棒のクレアが、にこにこして声を掛けてきた。
「ありがと。クレアは仲良くしてないの? ゼンと」
 そんなつもりじゃなかったけど、探っているみたいに聞こえて、オレは焦って横を向いてしまった。

「ゼン? 駄目よ、アイツは誘ったって全然乗って来ないんだから……もう、つまらない男よ」
「誰がつまらないだって?」
 そう言いながらゼンは、クレアの体に腕を回した。オレは見てる事が出来なくて、我慢しなければいけないのに。

「……降りる支度をしないと」と言いながら走って隣の車両へ行く。(荷物も持たず隣に行くなんて、不自然じゃないか)
 泣きたくなるのを堪え、横を向いて居たら隣に誰か座った。

「……ルイ? ゴメン、また泣いちゃった。駄目だねオレって」
「駄目なんかじゃないよ。レイは駄目なんかじゃ……」
 ゼン? 声の主を見つめる。流れる涙も隠しもせずに。
「何で泣く? 俺の事は何とも思って無いんだろ? それなのに。レイ、泣くなよ……」
 最早泣くのを我慢など出来ずに。ただ、ただ、溢れる涙越しにゼンを見つめて唇を開く。

「……ゼン、好き。あいしてる」
 そっと抱き寄せてゼンも言ってくれた。
「俺もレイが好きだ。あいしてるよ、ずっと前から」


 哀しい鳥は未だ知らない。
 辛い別れが待っている事を。
 束の間の幸せな夢を、夢見て……いる。
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