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哀しい鳥は夢を見る
夢③
しおりを挟む「何で、俺を避ける?」
ゼンが此処に来て半年程経った、ある日。
任務をシュミレーションして訓練する為のミーティングの時に腕を掴まれて言われた。
「は、放して……」
掴まれた腕から、力が抜けて来て立って居るのがやっとで。
訳もなく涙が溢れてきて目の前のゼンの姿がぼやけて映った。
突然、涙を浮かべたオレの腕を引き、抱き締めるゼン。
「悪かった……」
頭を優しく撫でながら囁くゼンの腕から逃げ出す臆病なオレ。
「レイジ~待ってよ」
心配してルイが後を追い掛けて来る。
走る足を緩めルイが来るのを待って居ると、飛び付いて来たルイが泣きそうな顔をしてる。
「アイツ、レイジを泣かした!」
泣き笑いならぬ、泣きながら怒って居るルイに、何でも無いと良い聞かせた。
能力者であるルイを怒らすと、この建物から一歩でも出たら、殺されてしまう。
「本当に、何も無いんだよ。ただ、居なくなってしまった人に似てるだけ」
「その人って、レイジの大事だった人なの?」
ルイが涙を流しながら、聞いて来る。オレは、何とか笑おうとしたのだけど、とても出来そうに無い。
「だ、大丈夫………だよ」
「レイジ、泣かないで……お願いだよ」
二人抱き合って幼子の様に泣くことしか出来なかった。
あれ以来ルイは、片時も離れなくなった。オレを守って居るつもりらしい。
「レイジ、何でアイツを見てるの?」
気が付けばゼンを目で追ってしまう。昔と変わらない琥珀色の髪と優しい瞳。凛とした男らしい顔立ち。触りたくて……触れて欲しくて。
振り切る様にルイに笑い掛けて、ミーティングルームに向かう。次の、任務を聞きに行くために。
もう、壊してしまいそうだよ。自分で架けたハードルは。
余りにも高くて、跳び越えられそうにない。
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