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キラーチルドレン
復讐④
しおりを挟む早く、速く走らなくては。タイムリミットが迫っていた。
このままでは、バラバラ死体で発見されるだろう。それだけは、死んでも嫌だ。
きっとアイツはオレだとは認めはしないだろう。そして、何時までも姿を求め彷徨い歩くのだ。
走り抜けた後から爆音が響く。いよいよ始まった。生還か、死か、生存のためのラストゲームが。
吹き飛ばされなかった運のいい奴らが、部屋から慌てふためいて出て来た。そして、オレを認めると向かってきた。
「テメェか! こんな事しゃがって死ね!」
大概の組員が逃げる中、命知らずの奴らがオレに銃を向ける。
オレは乾いた笑い声を上げて、両手に持った拳銃で何の迷いもなく撃つ。極限状態の中、既にオレは気が狂ってるのかも知れない。
あと二分。それで全てが終わる。生きているか、それとも。
今、この時ほど能力が欲しいと思ったことはない。いう事を利かない足が呪わしい。
それでも、ゴールが近付き、建物の出口が見えてきた。人の気配すら最早無い。
心の中で、オレは叫ぶ。助かった! 生きてアイツに逢える!
歓喜の声を上げようとした時に、一瞬で冷たい水を被せられた気がした。奴の声が。
「レイジ、何処へ行く気だ?」
信じられない! なんで生きている?! 確かに殺した筈だ。
奴は胸を開け防弾チョッキを見せ、オレに狙いを定め言った。
「残念だ……気に入ってたんだが死んでもらうしかないな」
オレは静かに瞳を閉じアイツの顔を思い浮かべる。
――ゼン。ゴメン……もう、ダメみたいだ。
アンタを置いて逝くオレを、どうか……赦して。
オレは諦めていた。実際、神に祈りを捧げてさえいた。
オレが逝った後のゼンの苦しみが、ホンの少しでも軽くなります様にと。
だけど、ゼンの押し殺した怒りの声を聴いた時、現実に引き戻された。
「ゼン……どうして?」
「勝手に死ぬんじゃねぇ! レイ、諦めたら俺がお前を殺す」
目を開けたら、ゼンが奴の首を撥ねた後、オレに向かってきて、いきなり横っ面を張り倒した。
口の中を切り血がツーっと流れる。
血に染まった刀の切っ先を首に押し当て静かに言った。
「諦めるのは赦さない。レイ何故、俺を置いて逝こうとする?」
ゼンの苦痛に歪んだ顔を見て、何故オレは苦しめてばかりいるのだろうと哀しくなる。
だから、ケリをつけて貰いたくて言った。
「ゼン……。殺っても良いよ」
アンタに殺されるなら本望だ。
刀の刃を掴む。が、痛みも血さえ出ない。不思議がるオレにゼンが言った。
「俺の刀は俺が斬りたいと思ったモノしか斬れない」
オレはまだ間に合うのか? あの腕に飛込んでも赦されるのだろうか?
お互いに見つめ合っていた。
行動を起こしたのはオレ。ゼンを抱き寄せ真実を伝える。
「ゼン……オレは……」
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