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キラーチルドレン
籠の中の哀しい鳥⑥
しおりを挟む別れの日は、男の子の気持ちと同じで、朝から雨がしとしと降っていた。
「坊主。あの子の事を思うなら、安心させてあげなきゃな」
男の子は目に涙を溜め、父親に頷く。
浜には、出港の準備で大わらわで。
村じゅうの人たちが見送りに来ていた。
レイが、村のおばさんに連れられて男の子の方へ歩いてくる。
「元気で居るんだよ……」
おばさんはレイをいとおしげに撫で、溢れそうになる涙をエプロンで拭いている。男の子はレイに向かって、にっこり笑い、話し掛ける。
「レイ、きようは、外におでかけするんだよ」
レイは男の子に「おでかけ? いっしよに?」と言って顔を上げ嬉しそうに笑う。
「いっしよには、いけないんだ。だけど、かならず、かならず、レイに会いにいくからね」
レイは首を振り、いゃいゃと顔をくしゃくしゃにして泣き出した。男の子が一緒じゃないと嫌だと言って泣いた。
やがてレイを乗せた船は、静かに海に向かい進み出す。男の子の耳には、レイの泣き叫ぶ声が聴こえ、堪らず走りだし名前を呼ぶ。
「レイ! レイ! いかないで!」
父親は、男の子を捕まえて力強く抱き締めた。
レイ、なかないで。大きくなったら、かならず、かならず、あいにいくから。
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