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キラーチルドレン
籠の中の哀しい鳥⑤
しおりを挟む男の子の父親は言い澱んで居たが、頭を撫でながら、言い含める様に話し出した。
「坊主……あの子なんだが、帰らなくては、いけないんだ」
男の子は予感はしてたのだけれど。認めたくは無くて、そんな事を言う父親を生まれて初めて、にくんだ。
「なんでだよ、とうちゃん。おいら、やだよ。レイをつれてかないでよ。やだ! ぜったいやだからな!」
「坊主、だから、言ったじゃあ無いか。預かり者だって」
父親の話しを最後まで聞かずに男の子は走って行った。レイの元へと。
何時もの小屋に入るなり、男の子はレイの手を取り優しく話し掛ける。
「レイ、海をみにいこう」
レイは男の子を見上げ「うみ? みにいくの?」とにっこり笑う。
「そうだよ、海だよ」
ふたりは初めて一緒に小屋から出て海に向かい走り出す。
レイは久しぶりの外の空気を、いっぱいに吸って鈴が鳴るような声で笑っていた。
その、無邪気なレイの姿を見ては、男の子は涙が浮かん来て、服の袖で涙をゴシゴシ擦った。
『おいらが泣いたら、レイがしんぱいする』
「レイ、こっちにおいでよ」
男の子は自分だけが知っている秘密の場所へ、レイを連れて行った。
そこは、浅瀬にあり引き潮の時だけ、通れる洞窟みたいになって居る場所で。子供がやっと入れる位の所だった。
「レイ。手をだして、目をつむってごらん」
レイが言われた通りにすると、手の上に、コロンと何かが置かれた。
開けても良いよ。と言われ、レイがぱっちり目を開ける。
レイのちっちゃな手に乗っかってた物。それは男の子が一生懸命作った、木彫の小さな鳥。
「かわいい!」
レイは喜んでゆびでツンツンつついたり、じっと見つめて居る。
「レイ。おいらのこと……わすれないで……おいらも、わすれない……から……」
ずっと堪えてた涙が積を切った様に流れ、何も言えなくなる。
「どぅしたの? いたいの?」
レイは男の子がどこか痛いのかと思い頭をなでる。
男の子はレイを抱きしめて、いっそう声をふりしぼり泣き出した。
レイ。だいすきだよ。ずっと、ずっと。
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