アサシンの夜明け

水月美都(Mizuki_mitu)

文字の大きさ
上 下
10 / 64
キラーチルドレン

籠の中の哀しい鳥③

しおりを挟む

「坊主、こっちだ」
 父親に呼ばれ、男の子は村外れの漁師小屋に来ていた。
「とうちゃん。こんなとこにあの子がいるのかい?」
 その小屋は、漁師たちの道具とか置いてあるところで、お世辞にも綺麗とは、言えない場所だった。
 あの綺麗な子には似合わない粗末な小屋。

 なにか、怒りと悲しみが、ごっちやになって男の子は泣き笑いの様な顔になった。
「坊主、どうしたんだ? 」
 男の子は首を横に振りうつ向く。
 父親は入り口に何故か、新しく取り付けた鍵を開け男の子の手に握らせ、中に入るように言った。

「あ、忘れてた。中の子にコレを食べさせてあげなさい。それに、帰りは鍵を閉めて来るんだ」
 男の子の手にバスケットを持たせ父親は祝いの席に戻って行った。

「なんで、カギなんか、しめるんだよ……」
 変に思ったが、あの子に会えると云う気持ちの方が勝りドアを開けた。
 小屋の中は結構整えてあり、隅にはベッドまで置いてあった。
 ベッドは、ほんの少し盛り上がっており微かに上下してる。
『ねてるのかな?』
 近付いて、ソッと毛布を捲ると、両手で自分の体を抱き、丸まっている綺麗な子がいた。

「なあ、おいら食べものを持ってきたんだよ」
 声を掛けても、綺麗な子は振り向かず、更にぎゅっと強く抱きしめる。
 男の子は悲しくなって、綺麗な子の髪を優しく撫でながら、話し掛けた。

「おいらは、おまえの『みかた』だよ」
 その言葉に、綺麗な子はピクリとして、ゆっくりコッチを振り返る
 かなり、やつれては居たけれど充分、綺麗な子だ。
 軽く、くるくるした髪は少し茶色で、日など焼けた事などない白い肌、愛らしい瞳に可愛いぷっくりとしたくちびる。

 それなのに、両の目からは涙がポロポロとこぼれていて。
 ――守ってあげたい。
 男の子は綺麗な子をぎゅっと抱き締め何度も、何度も、言った。
「おいら、おまえをまもってあげるから。だいじょうぶだよ」

 思えばこれが、男の子の初恋だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...