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美貌の暗殺者
相棒③
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「やあ、いらっしゃい。久しぶりだね、ショーゴ、レイジ。いや、ゼロ」
振り向いて呑気に挨拶をしてきたヤツはオレの元相棒だった。
隣にいる今の相棒であるショーゴも信じられない顔をして押し黙ってしまった。
「アンタは死んだ筈だ……」
そうだ、オレが殺した筈だ。かつての相棒キールを。
1年前のあの日、オレ達はかなりヤバイ任務を命ぜられ(中堅マフィアのボスの暗殺)オレと相棒は組んでまだ二ヶ月目の任務だった。
キールはオレと組むのだから、もちろん能力チームで。
透視能力と水を操り、かなり出来る奴と聞いてたけど最初からオレを目の敵にしてて、この組み合わせは失敗だと誰もが思っていた。
「レイジ、この部屋だよ。ここにターゲットが居る」
キールが透視をして、オレがターゲットを殺る手筈になってた。
ピッキングでドアの鍵を開けようとしたが「鍵は閉まって無いからそのまま静かに入って」と言われた。
出来れば目立たず秘密裏に仕事を済まそうとしてたオレは疑いもせずにドアをソッと開けた。
何だよ、ココは。
「キール、ふざけるなっ!」
突き飛ばされ、振り返ったオレの目の前でドアが静かに閉まる。
飛び付いてドアノブを掴んだがビクともしなかった。キールがノブを凍らしたらしい。
「アぁ? 誰だ、テメエは」
信じられない思いで後ろを振り返る。
そこは、その部屋は賭博場らしく、ザッと数えても二十人は居るだろうか。
「綺麗なニイチャンが此処に何の用事が有るのかな? おまけに、そんな物騒なモノもって」
声を掛けてきた男に心当たりがある。ターゲットだ。オレは覚悟を決め銃を放り投げ両手を上に挙げた。
きつく両目を閉じ最後の時を待つ。けども、来たのは最後の時では無く、生暖かい唇だった。
「ん―ン――ヤメ……」
どうやら、オレはなぐさみモノになるらしい。
「滅多にお目にかかれない上物だ」
この時だ。オレの中にキールに対して殺意が芽生えたのは。
◇◇◇
ピチャ―……ン。ピチャ―……ン。
暗く湿ったコンクリートの感触と、顔の上に水滴が落ちてきた事で気を失ってたオレは、目を覚ました。
ココは……?
起き上がろうとする時の体の痛みに、嫌でも自分がどんな目に合ったのか思い出さずには居られない。
ああ、オレは死ねなかったのか……
あの後、オレはターゲットに気を失うほど犯された。思い出すだけで震えが走る。
死んでしまったほうがマシだ。あの時はそう思った本当に。
でも、今は生きていた事を神に感謝すらしている。
生きる理由があるから。オレをこんな目に遇わせた奴を。
――コロシテやる。
ただ、今はソレだけが、オレの存在理由。
振り向いて呑気に挨拶をしてきたヤツはオレの元相棒だった。
隣にいる今の相棒であるショーゴも信じられない顔をして押し黙ってしまった。
「アンタは死んだ筈だ……」
そうだ、オレが殺した筈だ。かつての相棒キールを。
1年前のあの日、オレ達はかなりヤバイ任務を命ぜられ(中堅マフィアのボスの暗殺)オレと相棒は組んでまだ二ヶ月目の任務だった。
キールはオレと組むのだから、もちろん能力チームで。
透視能力と水を操り、かなり出来る奴と聞いてたけど最初からオレを目の敵にしてて、この組み合わせは失敗だと誰もが思っていた。
「レイジ、この部屋だよ。ここにターゲットが居る」
キールが透視をして、オレがターゲットを殺る手筈になってた。
ピッキングでドアの鍵を開けようとしたが「鍵は閉まって無いからそのまま静かに入って」と言われた。
出来れば目立たず秘密裏に仕事を済まそうとしてたオレは疑いもせずにドアをソッと開けた。
何だよ、ココは。
「キール、ふざけるなっ!」
突き飛ばされ、振り返ったオレの目の前でドアが静かに閉まる。
飛び付いてドアノブを掴んだがビクともしなかった。キールがノブを凍らしたらしい。
「アぁ? 誰だ、テメエは」
信じられない思いで後ろを振り返る。
そこは、その部屋は賭博場らしく、ザッと数えても二十人は居るだろうか。
「綺麗なニイチャンが此処に何の用事が有るのかな? おまけに、そんな物騒なモノもって」
声を掛けてきた男に心当たりがある。ターゲットだ。オレは覚悟を決め銃を放り投げ両手を上に挙げた。
きつく両目を閉じ最後の時を待つ。けども、来たのは最後の時では無く、生暖かい唇だった。
「ん―ン――ヤメ……」
どうやら、オレはなぐさみモノになるらしい。
「滅多にお目にかかれない上物だ」
この時だ。オレの中にキールに対して殺意が芽生えたのは。
◇◇◇
ピチャ―……ン。ピチャ―……ン。
暗く湿ったコンクリートの感触と、顔の上に水滴が落ちてきた事で気を失ってたオレは、目を覚ました。
ココは……?
起き上がろうとする時の体の痛みに、嫌でも自分がどんな目に合ったのか思い出さずには居られない。
ああ、オレは死ねなかったのか……
あの後、オレはターゲットに気を失うほど犯された。思い出すだけで震えが走る。
死んでしまったほうがマシだ。あの時はそう思った本当に。
でも、今は生きていた事を神に感謝すらしている。
生きる理由があるから。オレをこんな目に遇わせた奴を。
――コロシテやる。
ただ、今はソレだけが、オレの存在理由。
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