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美貌の暗殺者
レイジ①
しおりを挟む「レイ、そろそろ起きろよ」
体を揺さぶられて目が醒めたオレは、軽く伸びをしてベッドから起き上がろうとした。
「なに? 放してよ」
わざわざ人を起こしといて、立ち上がった傍から腕を引っ張るゼンを睨み付けながら、振りほどく。
「冷たいなあ、昨夜あれだけ可愛がってあげたのに」
「足りないよ……」
「は?」
「何でもない。先に食堂に行ってるから後から来なよ」
「了解、ゼロ殿」
ゼンはそう言って、笑いながら敬礼する。
オレは、顔に不機嫌を張り付けたまま、部屋から出て食堂へと向かう。
途中で出会う連中は、オレと分かると道を譲り挨拶をして来る。
「ゼロ、おはようございます」
そう言って愛想笑いをしている顔は羨望とも畏れともつかない表情で。
食堂に着き、あまり食欲が無いからサラダとコーヒーだけを注文し指定席に着く。
間もなく注文した食事を後から追い付いたゼンが持って来た。
「育ち盛りがコレだけなのは頂けないな。レイはもう少し太った方がいい」
「コロシをした後は食べれないの知ってるじゃない……」
ゼンは分かってる。と言いたげに頷き「俺を求めるのもな」と自喋気味に笑う。
「そういえば、今度の相棒がショーゴだって本当か? 俺とだったら良かったのに」
ゼンが不満そうに言うから、オレは楽しくなってゼンの耳元で囁く。
「大丈夫だよ、アイツとは気が合いそうに無いし。それに、オレ達二人とも実戦チームじゃないか」
そうだ、オレ達は暗殺者で、二人一組で行動する。
前の相棒だった女は、好きな男が出来て逃げ出したから、オレが始末をした。一緒に逃げた男も。殺す時は二人別々に。
組織を裏切った代償を命で償う事が、オレたちアサシンの定めだ。
食事をしてる間、ゼンが頬杖をついてオレの顔を見ている。
「なに? ゼン、なんか言いたそうだね」
「いや、綺麗だなと思って……」
恥ずかしげもなく、そんなセリフを吐くゼンの足をテーブルの下で蹴り飛ばす。
「レイ、今晩空いてるか?」
「ゼン、今夜は駄目だ。分かるだろう?」
「そうか、今日はボスの所に行く日か……」
「行かせたくねえな」ゼンは俯いてボソッと言った
だってゼン、仕方無いじゃないか。
ここに拉致同然に連れて来られた時から、ボスの玩具なんだから。アイツとオレは。
そう、あれは九年前のあの日だ。オレはまだ六歳だったのに。
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