僕が探偵になった訳

水月美都(Mizuki_mitu)

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始の始まり

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 いつの間に? 個人情報だだ漏れじゃないか。と腹が立ったので躊躇うことなくブロックして無かったことにする。
 聴取が終わった生徒の中に松井伊織まついいおりが居たので声を掛けた。
 彼も幼なじみで小さい頃は3人でよく遊んだ仲だ。本の虫で目を酷使した結果、今どき珍しい瓶底眼鏡を掛けている。
 パッと見は地味~な人間に見えるが、僕は知っている。伊織は普段おとなしいガリ勉に見えるが瓶底眼鏡を外すと視力がいちじるしく低下するため全く見えない。
 それが伊織を開放させるのか性格まで積極的になる。眼鏡を外した風貌が案外男前なように。
 知らない人間が初めて見たら、まるでジキルとハイドみたいだと言っていた。
「始、何処に居たんだよ探したんだから。それにしてもこの教室が事件の現場だなんて、びっくりしたよ。なぁ、刑事さんの隣に居るのって『探偵』だよな?」
 察しの良い伊織には嘘がつけない。僕はうなずくと赤月という探偵で助手のバイトに誘われたと話した。
「凄いじゃないか。もちろんバイトするんだろう?」
「しないよ。面倒くさいし何より赤月は胡散臭うさんくさいから」
「ひどいなぁ始君。胡散臭いは無いだろう。それにLINEブロックするのはひどいよ、傷ついた」
 まさに神出鬼没。気が付いたらそこに居る。まるで探偵よりも怪盗みたいだ。
「先程はどうも。始と話してたのですが、なぜ彼にアルバイトを?」
 伊織が瓶底眼鏡の拡大された瞳でジィと見つめ疑問に思ってたことを的確に指摘する。
 僕も赤月がどんな理由で僕をバイトに欲しがったのかが知りたかったので黙って聞いていた。
「その1、彼はカンが鋭い。その2、本人は否定すると思うけど好奇心が強い。その3、足が速い。そしてこれが1番大切なんだが……」
 固唾を呑んで次の言葉を待つ僕と伊織。
「おもしろい。これしか無いだろう」
 なんだ、大した理由じゃ無かった。これなら他のヤツにバイトを振れば良い。そう思って1人ほくそ笑む僕に伊織が話を振る。
「始、やっぱりバイト受けたら?」
「うん、そうそう、やっぱり断る……はぁ? なんでだよ! その条件だったら他にも居るだろ? 伊織だって適任だ」
「えっ? だって1と2だと僕でも出来るかもだけど、足は速くないし、何より面白いの項目に該当するのは始、お前だろ?」
 だからなんでだよ! 心の中で2度ほど叫ぶと赤月に向き合い半ばやけくそに言った。
「分かった、わかった。この事件に限り手伝うよ。本当にバイト料は弾むんだろうな?」
「うーん、嬉しいけど、この『事件』は間に合ってます。もう原因は解ったからね」
 僕と伊織は顔を見合わせ首を傾げたのだった。
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