上 下
1 / 1

ドリンク1杯120円の始まり。

しおりを挟む
ある夏のこと、少年は故郷の伊神暮市に里帰りしていた。高校で市外に出て初めの夏休みのことである。少年は家族と共に近くの神社に、高校での生活が安定になるものと願掛けをしに行く事となった。平日であったため祭りの時ほど人はおらず、物静けな雰囲気を出していたが不思議と暖かい印象を受けた。鳥居をくぐり本堂を向かう最中、左右に置かれた狛犬が今となっては仔犬のように感じられた。小学校に通っていた頃はあんなにも大きく怖いものだったのに...。そんな事を思いながら歩いていると、いつの間にか賽銭箱の前まで来ており、財布から5円を取り出そうとした時急に辺りが暗くなり横にいた家族が消えてしまっていた。それを理解した瞬間、焦燥感に身体が襲われていく。しかしその瞬間、耳を覆いたくなるほどの爆発音が響き渡った。とっさに耳を塞ぎその音を凌いだが、音が消えた今でも耳がジンジンする。まだ音の反動で耳が遠いが、それでも聞こえる声で口論しているのがわかった。
「ったく。あんたが避けるからいけないんじゃないの!建物1つ直すのにどれだけエネルギー使うか知ってるでしょ!?ほんっと信じられない!」
「はぁ!?何言ってるかさっぱり分からねーな。そもそも貴様がこんな地面間近なところで砲撃するのがいけないんだろーがよ。こんな結果になるなんてバカでも分かる。それも、俺に罪を押し付けるなんて図々しいにも程があるってんだ。」
足元に散らばる木片から神社の本堂が破壊された事は分かったが、目の前は粉塵が舞い、2つの声の主が誰のものなのか確認することができない。近付こうにも視界が悪い中、木片を避けながら行くのは危険であるため、勇気を振り絞って声をかけることにした。
「あ、あのっ!すみません!誰かいるんですか??何があったか分かりませんが、そこに居たら危ないと思いますよ!!」
声をかけると、口論していたらしい2人は僕に気づいたのか声がしなくなり、代わりに足音が聞こえてくる。前が見えない中真っ直ぐに僕の方に向かう足音は次第に近くなり、丁度僕の目の前辺りで聞こえなくなった。ハッと思い目をこらすと、目の前には僕と変わらないか、少し年下という印象を受ける少女が2人立っていた。双方はいかにも不機嫌と書いてあるような顔をしていて、僕を睨んでいる。何かまずい事しちゃったのかな...。僕が不安と恐怖を隠しきれずあたふたしていると、黒髪の長髪で瞳が翠色の可愛らしい女の子が僕に声をかけてきた。
「私たちの喧嘩に口出すなんていい度胸ね。私、今すっごくイライラしてて、その発散を途中で止めたんだから、それ相当の覚悟をしてもらいます、そのつもりで悪しからず。」
さらっと、死刑宣告をされたような気がした。
神社が一撃で破壊されるほどの砲撃をした少女が僕に覚悟するように言ってきたんだ。もう死ねって事だよね。短い人生だったなぁ...お父さんお母さん元気でね。
僕が悟りを開いているともう1人の少女も僕に話しかけてきた。
「めずらしーな俺らの意見が合うなんてなぁ。俺も今すげーイライラしてるんだわ。発散止められたとなりゃぁ、君にも痛い思いしてもらう事になるかも知れねーな。」
こちらの少女は先程の子とは正反対で、銀髪に赤色の瞳をしている、どちらかと言うと綺麗な女の子である。しかし、その少女も僕を死に追いやろうとするらしい。さっきの子とやり合えるほどの女の子だもんね。いや、僕はまだ死ぬのは早すぎる!まだやり残した事だっていっぱいあるんだ!なんとかこの2人を説得しなきゃ!!!
「えと...お二人はどうして喧嘩されてたのですか...?」
まずは原因から探らなきゃ。
「「あなた(お前)に話す義理はないわ(ねーだろ)」」
無理でしたーっ!この2人完全にお互いの事しか目に入ってない!こんなのどうしようもな....って、あれ?
「お二人はどうして、ジュースを持っているんですか?」
不自然にも程があった。さっきまで神社を破壊するような喧嘩をしていたにも関わらず2人の少女の手にはジュースが握られていた。片方は見る限りにグレープジュースで、もう片方は炭酸ジュースの様だ。遊んでいたのなら納得出来るが、流石に喧嘩の最中に持っているのは不可解極まりない。だから、僕は思わず聞いてしまっていた。しかし、2人の少女は僕が何を言っているか分からないと言った様子で首を傾げている。すると、2人の少女は僕に質問を投げかけてきた。
「お前、どうやってここに来た。」
どうやって?それも、ここ??
「ここは、普通の人間には入れないはずよ。もしかして、貴方もドリンカーなの?」
聞き慣れない言葉ばかりであるが、それよりも気になるのは...。
「ど、ドリンカー??」
聞いた事もない言葉であった。
英語ではよく"~している人"という意味合いで"er"をつけて、プレイヤーの様に言うが...そうするとドリンカーを直訳すると"飲む人"となる。普段わざわざ飲み物を飲む人に貴方は飲む人かと聞く人はいないだろう。しかし、目の前にいる少女は何の躊躇いもなく、そう言ってきたのだ。
困惑する僕を見て気づいたのか、銀髪の少女が話しかけてきた。
「ドリンカーを知らない?..ならここに入ってこれるわけが...いや、いい。そんな事よりお前、マスタードリンクは何だ。」
「あの...すみませんが、さっきからあなた方の言っている事が良くわらかないのですが...」
僕の返答が余程不思議だったのか、銀髪の少女は黙り込んでしまった。すると、今度は黒髪の少女が話しかけてきた。
「ドリンカーもマスタードリンクの事も知らない...本当にあなた、どうやってここに来たのかしら」
「どうって...さっきまであったその神社にお参りに来たら、突然辺りが暗くなって気づいたら家族が消えてて、それからは今に至るって感じだけど...」
黒髪の少女は少し悩んだ後、こう話した。
「つまりあなたは、お参りしに来ただけでここに来るつもりもなく気づいたらここにいたって事になるわけかしら?」
「そう...なりますね」
「ハッ!ったく、そんなのがよく私たちの間に入ったもんだな。死にに来た様なもんじゃねーかよ。」
やっぱり殺すつもりだったんですねー...。それにしても、彼女たちの言う"ここ"とはどんなところなのだろうか。先程までいた家族との場所と何か似ている気がする。でも、何がそうしているかは分からないが、明らかに違うという事は分かる。
「...仕方ないわね、花梨。まずはこの人に色々教えてあげましょ。流石に、この世界で何も知らないまま放置できるほど私も悪じゃないしね。」
「めんどくせーなぁ、ほんと。...まぁ、莉音が言うなら仕方ねーか。だけどこれは言っておくぞ。これは一時的な停戦なだけで、俺はお前の事許したわけじゃねーからな。」
「あら、そんな事分かりきってるわよ。私とて、あなたの事許した覚えはありません。」
「へっ、上等じゃねーか。」
どうやらこの2人は相当怒っているらしい。余計な事を言ったら、また殺されかける可能性があるため"この世界"なるものの正体を聞きたかったが聞けずにいる。でも、聞きに徹して得るものもあった。それは、彼女たちの名前。黒髪の女の子は「莉音(りおん)」と呼ばれ、銀髪の女の子の方は「花梨(かりん)」と呼ばれていた。
「さて。何から説明したらいいのかしら」
どうやら莉音は僕にこの世界のことや、ドリンカーやマスタードリンクについて教えてくれるつもりでいるらしい。しかし、一言で説明できるほどのものじゃないらしく、黙り込んでしまった。僕はこの妙に静まりかえった空気に耐えられず質問することにした。
「じゃ、じゃあ...僕から質問いいですか...?」
「あら、その方がありがたいわ。私も何から話していいか分からないところだったからね。で、何から知りたい?」
「それじゃぁ...君たちの言う、"この世界"とはどんなところなんですか?風景は同じなのに、何かこう...さっきまでいたところとは違う気がするんです。」
「いい質問ね、じゃあそれから教えてあげる。えと、さっき君は風景は同じって言ったわよね?それは、いい観点よ。この世界はね、所謂パラレルワールドみたいなものなの。同じ風景なのに、どこか違う感じがする。つまり、ほぼ同じで並行した空間が2つあって、君は私たちと同じ様に、元いた世界からこの似た様な世界に転移してきたのよ。私たちはこの世界の事を異なる世界という意味でドリンカーワールドと呼んでいるわ。」
「ドリンカーワールド...じゃあつまり、僕は何かしらしたことによって、いつの間にかこの世界に来てしまったという事なんだね。」
「まぁ、そういう事になるわね」
どうやら僕は本当に運が悪い様だ。知らない世界に飛ばされた挙句、いきなり戦闘に巻き込まれる。どこのファンタジー映画なの!?...と、焦っている暇はない。僕にはまだまだ聞きたい事があるのだ。
「なら、さっき君たちが言っていた"ドリンカー"や"マスタードリンク"って言うのはなに?」
「そうね...まず、名前は?」
名前?あぁ、僕の名前か。
「あ、ごめんなさい、言うのが遅れました。僕は稲城 晶也(いなぎ しょうや)って言います。」
「晶也さんね、分かったわ。私の事は莉音と呼んでちょうだい。あっちでふてくされてるのは花梨。私の親友で、大っ嫌いな子よ。よろしくね」
「だ、誰がふてくされてなんか!俺はただ、イライラが収まらねーから落ち着かねんだよ。ったく。」
「ちょっと口が悪いけど、言葉ほど怒ってないと思うから悪くは思わないであげてね。」
「はぁ...花梨さんと莉音さんは...本当に親友なのですか?」
「あら、どうしてそう思うのかしら?」
「だってさっきから喧嘩ばかりしているので...」
「そうねー...喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない?多分それよ」
「多分...ですか」
「俺は認めねーからな!お前なんか親友じゃない!!」
見ている限りは確かに莉音さんは冷静で一方的に花梨さんが拒絶している様に見えるけど...本当のところは出会ったばかりの僕には分かるはずもない。
「さて、余談はここまでにして。晶也さん、あなたはこの世界に来る前に、何か飲み物を飲みませんでしたか?」
「飲み物ですか?」
「そうです。私たちドリンカーはマスタードリンクを現実の世界で飲む事によってこのドリンカーワールドに転移する事ができるの。そもそも、マスタードリンクは人によって異なっていて、私の場合はこの"グレープジュース"がそうなの。因みに花梨は"サイダー"よ。マスタードリンクは1人ずつに決まっているわ。そして、ドリンカーはこの世界に来て、現実の世界では見えないけど、この世界で暴れている敵を倒すためにここに来るの。でも、ただ倒すだけじゃないの。敵を倒すとジェストコインっていうのを採取できる。それを300個集めると飲むとなんでも願いが叶えると言われるドリンクが貰えるのよ。だからみんなこの世界に来るのよ。願いを叶えたいためにね。」
「そうなんですか...でも、飲み物でここに転移出来るのは分かったんですが、敵と戦うっていうのは...危なくないのですか?それに、敵と戦うのであればどうしてお二人は戦っていたのですか?」
「晶也さんって、凄くいい質問してくるわね。そうね...私たちが戦っていたのは単純にコインの取り合いなんだけど...そうね。ドリンカーっていうのはね、その名の通り飲み物を使って戦うの。使い方は人によって異なるからこれといった説明はできないんだけど大抵がマスタードリンクを飲む事によって身体強化されたり、魔法の様な事が出来るようになるわね。おでん缶の様に飲むよりは食べるといったイレギュラーの物をマスタードリンクにしている人は物理的な攻撃が可能な武器に変化させる様なものもあるわね。だから、つまりは素手で戦ってるわけではないのよ?ただ、注意しなくてはいけないのが、マスタードリンク以外のものを飲んでもそこらにあるただのジュースと変わらないからエネルギーを得られないの。だからそこだけは気をつけなきゃいけないわね。それに、確かにこの世界で死ねば現実の世界でも死んだ事になるから、危険がない事はないわね。けど、その分なんでも願いが叶うのよ?得るものが大きいから頑張れるのよ。」
「なんだか僕、すごい世界に来ちゃったんですね...」
「でも、楽しそうでしょ?...で、さっきの質問に戻るんだけど。晶也さんはこの世界に来る前に、最後に飲んだ飲み物はなんでしたか?」
「えっと...神社に入る前の自販機で買ったやつだから..あ...飲み物と言ってもコーンスープですね。その前だとすると....」
「え...」
「こ、コーンスープだと!?お前今コーンスープと言ったのか!?」
「か、花梨さん!?どうしたんですかいきなり!?」
「ええい、うるさい!さっさと答えろ!!コーンスープと言ったのか!?」
「そ、そうです...けど、それがどうかしたんですか?」
「おい、莉音...」
「そうね...ちょっと早々に対策しないとマズイわね。」
「え、ちょっと何があったんですか!?コーンスープだといけないんですか!?!?」
僕がコーンスープを口に出した瞬間、2人の顔には焦りと不安の表情が現れた。一体コーンスープの何がいけないのか、見当もつかない。
「あのね、晶也さん。落ち着いてよく聞いてね。まだ説明してなかったんだけど、ドリンカーには性質があってね。大抵は色によって決まってるの。例えば、私のグレープジュースだと紫で雷を象徴してるの。花梨のサイダーは透明だから水を象徴しているわ。他に挙げるとすると、トマトジュースは炎、コーラは闇、牛乳だと光ね。他にも有るんだけど、一般的には1つの属性しか持たないの。でもね、ドリンカーの中にはイレギュラーな存在が2つあるの。その1つが二種。種類で言うといちごミルクやカフェオレとかだね。これらは2つの飲み物が合体している分、属性も2つで敵としては厄介ね。でも、それ以前に厄介なものがあるの。いや、最悪と言ってもいいほどよ。それが混濁種。文字どおり、混濁してるものなのよ。種類にはミックスジュース、おしるこ...そして、コーンスープとかなの。でも、その中でもコーンスープはイレギュラー中のイレギュラーなの。元々ドリンカーは同じ飲み物が2人のマスタードリンクになる事はないの。つまりは、1種類の飲み物は1人にしか使えないってこと。そして、それは願いが叶うか、主が死なない限り他の人に渡ることはないの。そこでね、以前にコーンスープを使っていた人のことなんだけど...実は、この世界の覇者なのよ。何千何万といるドリンカーでも願いが叶えられたのは、以前にコーンスープを使っていた覇者、1人だけなのよ。その人は願いが叶ってコーンスープの主じゃ無くなったから君がその後継者ということになるんだけど...この事が世間に知られたら間違いなく晶也さんを狙う人がたくさんくると思うわ。強者は早々に潰しておきたいと思うのが、普通だからね。」
「そ、そんな...僕は何も知らないままここに来たんだし、戦い方だって分からない...なのに命が狙われるって...あんまりだよ...」
そんな話があっていいはずがない。
知らずのうちに、家族にさよならも言えないうちに死ぬなんて嫌だ。そもそも、こんな世界望んできたわけでもないのに!
「...1つだけ助かるかもしれない方法があるわよ。」
「え...本当ですか!?莉音さん教えてください!!お願いします!!」
「私たちとチームを組むのよ。」
「え?」
「私たちとチームを組めばいいの。こう見えて私たち結構強いのよ?それに、今はまだ闘い方を知らないだけで知識と経験を積めば必ず晶也さんは強くなる、多分私たち以上にね。」
「そーだよ。今はチワワにも負けそーだけどよ、お前は必ず強くなる。そうなりゃ、相手にするより味方にいた方が安全だろ?お前にとっても、しばらくは俺たちに守ってもらえるんだから悪い話じゃねーと思うんだがよ。」
確かに悪い話では無い。右も左もわからないこの世界で、闇雲に行動するよりはこの2人の元にいた方が安全だろう。でも、本当について行っても良いのだろうか。いくら敵意は感じられないとしても、さっき会ったばかりの人を信じても良いのだろうか。そうも思ったが、1人になった事を考えると不安で仕方なかったため、僕は2人の提案を二つ返事で返すのであった。
こうして僕の、可愛らしい女の子2人との長い長い物語が始まるのであった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

俺は人間じゃなくて竜だった

香月 咲乃
ファンタジー
偉大な功績を残した英雄竜に憧れる人間の少年ロディユは、おかしな青年ポセと出会う。 行動を共にするようになった二人は、幻の山を目指すことに。 そこに辿り着いた二人は、自分たちの星が存続の危機にあることを知る。 そして、その元凶は、神だということも……。

酔いどれ勇者は、今日も千鳥足で魔王を追っています!

ふっくん◆CItYBDS.l2
ファンタジー
「ビールにまつわるこんな話をしっているかい?」  密造酒市場を牛耳る魔王を追う勇者の前に、突然現れた金髪の少女《自称:遊び人》。  彼女は、酒に酔ったものだけが使える伝説の魔法《千鳥足テレポート》の使い手だった。  いい年をして酒を飲んだことがないアルコール初心者の勇者と、やたらと酒に関するうんちくを語りたがる遊び人の(主に)酒場を舞台とした冒険がいま始まる!

いつまでもたぬき寝入りを

菅井群青
恋愛
……まただ。 長年の友人関係である俊とは気の置けない友のはずだった。共通の趣味である日本酒を飲むために俊の部屋で飲み、眠りこけてお泊まりすることが多い琴音だったが、ある晩俊が眠る自分にちょっかいをかけていることに気がついた。 私ができることはただ一つ。寝ているフリをすることだ。 「……寝たか」 「……」 (まだです、すみません!) タダ酒が飲みたい女と、イタズラがエスカレートしている男の話 ※マーク ややエロです 本編完結しました プチ番外編完結しました!

闇の胎動

雨竜秀樹
ファンタジー
ハイファンタジーの習作です。 思い浮かんだ、いくつかのエピソードを短編集形式で掲載しています。

聖女は断罪する

あくの
ファンタジー
 伯爵家長女、レイラ・ドゥエスタンは魔法の授業で光属性の魔力を持つことがわかる。実家へ知らせないでと食い下がるレイラだが…… ※ 基本は毎日更新ですが20日までは不定期更新となります

異世界でダンジョンと過ごすことになりました

床間信生
ファンタジー
主人公の依田貴大(イダタカヒロ-26)は幼い頃より父と母の教え通りに真面目に生きてきた。 学問もスポーツも一生懸命挑んできただけあって、学生時代も優秀な成績をおさめ大学も一流大学を卒業後は一流企業に勤める毎日を送る。 ある日、自身の前で車に轢かれそうになる幼い少女を見つけた彼は、その性格から迷う事なく助ける事を決断した。 危険を承知で車道に飛び込んだ彼だったが、大した策も無いままに飛び込んだだけに彼女を助け出すどころか一緒に轢かれてしまう。 そのまま轢かれてしまった事で自分の人生もこれまでと思ったが、ふと気づくと見知らぬ世界に飛ばされていた。 最初は先程までの光景は夢なのではないかと疑った主人公だったが、近くには自分が助けようとした少女がいることと、自分の記憶から夢ではないと確信する。 他に何か手掛かりは無いかとあたりを見回すと、そこには一人の老人がいた。 恐る恐る話しかけてみると、老人は自分の事を神だと言って次々に不思議な事象を主人公に見せつけてくる。 とりあえず老人が普通の人間だと思えなくなった主人公は、自分の事を神だと言い張る老人の事を信じて、何故自分が今ここにいるのかをたずねて見たところ… どうやら神様のミスが原因で自分がここにいるというのが分かった。 納得がいかない主人公だったが、何やら元の世界へと生き返る方法もあると言うので、先ずはその老人の言う通り少女と三人で異世界に行く事を了承する。

オニカノ・スプラッシュアウト!

枕崎 純之助
ファンタジー
登場人物 ・鬼ヶ崎《おにがさき》雷奈《らいな》 最強にして最凶の鬼「悪路王」を背負い、類まれな戦闘能力で敵を討つ黒鬼の巫女。 ただし霊力は非常に低く自分の力だけでは悪路王を操れないため、パートナーである響詩郎の力に頼っている。 ・神凪《かんなぎ》響詩郎《きょうしろう》 魔界生まれの帰国子女。「勘定丸」と呼ばれる妖魔をその身に宿し、人の犯した罪を換金する「罪科換金士」。戦闘能力は皆無だが、膨大な霊気を持つ少年。 ・薬王院《やくおういん》ヒミカ 中国大陸から渡って来た銀髪の妖狐。伝説の大妖怪を甦らせそれを兵器として使用することを目論み暗躍する。冷徹で残忍な性格で数々の悪事を行ってきた希代の犯罪者。 ・趙香桃《チョウ・シャンタオ》 表向きは古物商の女店主だが、その裏で東京近郊の妖魔らを束ねる金髪の妖狐。響詩郎の師匠にして母親代わり。 ・風弓《かざゆみ》白雪《しらゆき》 魔界の名家・風弓一族の姫。弓の腕前は一族随一。かつて一族の危機を救ってくれた響詩郎にぞっこんで、彼を夫に迎えようとあれこれ画策する。 ・紫水《しすい》 白雪の側仕え。千里眼の持ち主で遥か彼方を見通すことが出来る。白雪が人間の響詩郎を夫にしようとしていることを内心では快く思っておらず、響詩郎が雷奈とくっつくよう画策している。 ・禅智《ぜんち》弥生《やよい》 鋭い嗅覚を持つ妖魔の少女。その能力で妖魔の行方を追うことが出来る。彼女の祖父である老妖魔・禅智内供が響詩郎と旧知の仲であり、その縁から響詩郎の依頼を受ける。 ・シエ・ルイラン 趙香桃に仕える妖魔の少女。全力で走れば新幹線を追い越せるほどの自慢の韋駄天を駆使し、その足で日本国内を駆け巡って配達業務を行う。性格はまるで幼い子供のよう。 *イラストACより作者「せいじん」様のイラストを使わせていただいております。

契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

やなぎ納屋
ファンタジー
 ヤマトは異世界に召喚された。たまたま出会った冒険者ハヤテ連れられて冒険者ギルドに行くと、召喚師のクラスを持っていることがわかった。その能力はヴァルキリーと契約し、力を使えるというものだ。  ヤマトはハヤテたちと冒険を続け、クランを立ち上げた。クランはすぐに大きくなり、知らないものはいないほどになった。それはすべて、ヤマトがヴァルキリーと契約していたおかげだった。それに気づかないハヤテたちにヤマトは追放され…。

処理中です...