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狩り小屋の建築
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次の日はグリノルフの言った通り、朝食後に木の伐採にとりかかった。
グリノルフが鉈のような刃物で、あまり太くない木を次々と切っていく。切った木はグリノルフによって枝葉を落とされ同じくらいの長さに切り揃えられる。
比呂人はそれを崖淵まで運んで下の湿原へと落とす。
「体ごと落ちるなよ」
「わかってるよ」
崖淵から落ちれば助からないことは比呂人でもわかる。切り出された木材は、比呂人が見たことのないもので木というよりも竹に近く思っていたよりも軽かった。
この木材を板状にはしないでそのまま組んで狩り小屋の床にするらしい。イメージとしては筏に近いだろうか。
グリノルフは狩り小屋に使う木材とは別の種類の木の樹皮を剥ぎ取り始めた。
その樹皮でグリノルフは簡単な船を作った。軽くて耐久性がなく狩りの間だけの船らしい。
午前中いっぱいかけて木材を切り出し湿原へと落とした。
昼食を兼ねた短い休憩をとり、いよいよ湿原へと出発する。荷物を背負い、木材運搬用の船をグリノルフと比呂人で担いで行く。船はそれなりの大きさがあるので動きずらくはあるが船自体は軽く、それほど負担にはならない。
高台を下り、湿原へとはいる。むっとした草いきれとも違った澱んだ空気が漂っている。
なんだか息苦しいというか息がしずらい。吸っても吸ってもうまく吸えていない気がする。呼吸の仕方を忘れてしまったような感じだ。
「グリノルフ、なんか息苦しいんだけど」
「これが瘴気だ。今すぐ体に害があるものではないが、長時間いるのはよくない。瘴気が漂っているのは水面近くだけだから木の上まで登っていしまえば楽になる」
「わかった。しばらく我慢するよ」そう答えたものの呼吸が浅く早くなる。
木材運搬用の船に乗り込み、木材を落とした地点まで移動する。木材を船へと乗せ、次は狩り小屋を作る木へと向かう。
比呂人には一面緑の草叢に見えるのだが、グリノルフは船が通れる水路と通れない湿地を見分けて船を操っていく。
程なくして湿原の中ほどのひときわ大きな木に着いた。
「少し休憩しよう」
言なりグリノルフはその木に登り始めた。木肌こそごつごつしているが、特に手がかりがあるわけでもない。にもかかわらずあっという間に木の股まで登ってしまった。
グリノルフは木にロープを取り付けると下ろした。ロープには等間隔で輪が作ってありこれを頼りに登れということらしい。
ロープをつかみ自分の体を持ち上げる。輪っかを使いながら少しずつ登っていく。かなりの時間をかけ苦労の末、なんとか上まで登ることができた。ただのロープだったら上まで登れなかっただろう。
木の股に両の手足を着き荒い息を吐く。下にいるときより随分と息がしやすい。大きく深呼吸を繰り返す。
「大丈夫か」
グリノルフが汗で額に張り付いた比呂人の髪をかき分ける。比呂人は言葉がまだ出ず、ただうなずいた。
息が整うと、見計らったようにグリノルフから水筒を渡された。
水筒を受け取り夢中で飲む。気のすむまで飲んだあとに、水はどうするのだろうと気付く。
「ごめん、結構飲んじゃった」
「別にかまわない」
「そういえば水ってどうするんだ」
「日に一度汲みにいく。さっきの高台に湧水がある」
「じゃあ俺が汲みに行こうか」水汲みくらいなら自分にもできるかもしれない。そう思って比呂人は口にする。
「いや、ヒロトだと狙われる可能性がある。気持ちだけ受け取っておこう」
餌になる自分があちらこちらとうろつくのはかえってグリノルフの迷惑になる。
考えが至らなかった自分が恥ずかしく、比呂人はちいさく「わかった」とだけ言った。
比呂人の返事にグリノルフはただ黙ってうなずいた。
守られるだけのポジションは楽だと思っていたが、いざ自分がそうなってみるともどかしいものがある。全く役に立っていないわけではないが、単純な作業しかできない。その単純作業も、力や体力が必要でそれらがない比呂人にとってはなかなかつらいものがある。
しばらく休んで比呂人は再び木の下へと降りた。船の上でロープの端に木材をくくりつけ、反対側の端を引っ張って木材を木の上へと上げる。ロープは木の枝をまたいで掛けてあり、枝にはなにか装置が取り付けてある。たぶん滑車の原理で木を持ち上げるようにしているのだろう。普通に持ち上げるより随分軽いがそれでも重労働には違いない。これも単純作業を比呂人が担当する形だ。
グリノルフは木の上で木材を受け取り組み立てていく。
比呂人は空気が悪い中、20本近く木材を木の上へと上げた。終わったころには腕が震えて力が入らなくなってしまったが、再びロープをよじ登らなければならない。
途中まで頑張って登ったものの、それ以上動けなくなって結果グリノルフにロープを引き上げてもらった。
比呂人が木の上に引き上げられたときには木材は既に組み上げられていた。
木の股は大人二人がゆったり座れるくらいには広いが、作業をするには狭いだろうにどうやったのだろうと比呂人はぐったりしながら思う。
グリノルフはそんな比呂人を横目に組み立てた木材を木の枝と木の枝の間に固定していく。夕闇がせまり作業ができなくなる前に固定を終えることができた。
比呂人は恐る恐る固定されたばかりの床に乗ってみる。切りたての木材のいい香りがする。
作業の途中で自分は無力だと感じることもあったが、実際自分が手伝ったものがこうやって出来上がると達成感がある。
比呂人は床に座り、さらにごろりと横になった。床はひんやりと心地よかった。
グリノルフが鉈のような刃物で、あまり太くない木を次々と切っていく。切った木はグリノルフによって枝葉を落とされ同じくらいの長さに切り揃えられる。
比呂人はそれを崖淵まで運んで下の湿原へと落とす。
「体ごと落ちるなよ」
「わかってるよ」
崖淵から落ちれば助からないことは比呂人でもわかる。切り出された木材は、比呂人が見たことのないもので木というよりも竹に近く思っていたよりも軽かった。
この木材を板状にはしないでそのまま組んで狩り小屋の床にするらしい。イメージとしては筏に近いだろうか。
グリノルフは狩り小屋に使う木材とは別の種類の木の樹皮を剥ぎ取り始めた。
その樹皮でグリノルフは簡単な船を作った。軽くて耐久性がなく狩りの間だけの船らしい。
午前中いっぱいかけて木材を切り出し湿原へと落とした。
昼食を兼ねた短い休憩をとり、いよいよ湿原へと出発する。荷物を背負い、木材運搬用の船をグリノルフと比呂人で担いで行く。船はそれなりの大きさがあるので動きずらくはあるが船自体は軽く、それほど負担にはならない。
高台を下り、湿原へとはいる。むっとした草いきれとも違った澱んだ空気が漂っている。
なんだか息苦しいというか息がしずらい。吸っても吸ってもうまく吸えていない気がする。呼吸の仕方を忘れてしまったような感じだ。
「グリノルフ、なんか息苦しいんだけど」
「これが瘴気だ。今すぐ体に害があるものではないが、長時間いるのはよくない。瘴気が漂っているのは水面近くだけだから木の上まで登っていしまえば楽になる」
「わかった。しばらく我慢するよ」そう答えたものの呼吸が浅く早くなる。
木材運搬用の船に乗り込み、木材を落とした地点まで移動する。木材を船へと乗せ、次は狩り小屋を作る木へと向かう。
比呂人には一面緑の草叢に見えるのだが、グリノルフは船が通れる水路と通れない湿地を見分けて船を操っていく。
程なくして湿原の中ほどのひときわ大きな木に着いた。
「少し休憩しよう」
言なりグリノルフはその木に登り始めた。木肌こそごつごつしているが、特に手がかりがあるわけでもない。にもかかわらずあっという間に木の股まで登ってしまった。
グリノルフは木にロープを取り付けると下ろした。ロープには等間隔で輪が作ってありこれを頼りに登れということらしい。
ロープをつかみ自分の体を持ち上げる。輪っかを使いながら少しずつ登っていく。かなりの時間をかけ苦労の末、なんとか上まで登ることができた。ただのロープだったら上まで登れなかっただろう。
木の股に両の手足を着き荒い息を吐く。下にいるときより随分と息がしやすい。大きく深呼吸を繰り返す。
「大丈夫か」
グリノルフが汗で額に張り付いた比呂人の髪をかき分ける。比呂人は言葉がまだ出ず、ただうなずいた。
息が整うと、見計らったようにグリノルフから水筒を渡された。
水筒を受け取り夢中で飲む。気のすむまで飲んだあとに、水はどうするのだろうと気付く。
「ごめん、結構飲んじゃった」
「別にかまわない」
「そういえば水ってどうするんだ」
「日に一度汲みにいく。さっきの高台に湧水がある」
「じゃあ俺が汲みに行こうか」水汲みくらいなら自分にもできるかもしれない。そう思って比呂人は口にする。
「いや、ヒロトだと狙われる可能性がある。気持ちだけ受け取っておこう」
餌になる自分があちらこちらとうろつくのはかえってグリノルフの迷惑になる。
考えが至らなかった自分が恥ずかしく、比呂人はちいさく「わかった」とだけ言った。
比呂人の返事にグリノルフはただ黙ってうなずいた。
守られるだけのポジションは楽だと思っていたが、いざ自分がそうなってみるともどかしいものがある。全く役に立っていないわけではないが、単純な作業しかできない。その単純作業も、力や体力が必要でそれらがない比呂人にとってはなかなかつらいものがある。
しばらく休んで比呂人は再び木の下へと降りた。船の上でロープの端に木材をくくりつけ、反対側の端を引っ張って木材を木の上へと上げる。ロープは木の枝をまたいで掛けてあり、枝にはなにか装置が取り付けてある。たぶん滑車の原理で木を持ち上げるようにしているのだろう。普通に持ち上げるより随分軽いがそれでも重労働には違いない。これも単純作業を比呂人が担当する形だ。
グリノルフは木の上で木材を受け取り組み立てていく。
比呂人は空気が悪い中、20本近く木材を木の上へと上げた。終わったころには腕が震えて力が入らなくなってしまったが、再びロープをよじ登らなければならない。
途中まで頑張って登ったものの、それ以上動けなくなって結果グリノルフにロープを引き上げてもらった。
比呂人が木の上に引き上げられたときには木材は既に組み上げられていた。
木の股は大人二人がゆったり座れるくらいには広いが、作業をするには狭いだろうにどうやったのだろうと比呂人はぐったりしながら思う。
グリノルフはそんな比呂人を横目に組み立てた木材を木の枝と木の枝の間に固定していく。夕闇がせまり作業ができなくなる前に固定を終えることができた。
比呂人は恐る恐る固定されたばかりの床に乗ってみる。切りたての木材のいい香りがする。
作業の途中で自分は無力だと感じることもあったが、実際自分が手伝ったものがこうやって出来上がると達成感がある。
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