そのまさか

ハートリオ

文字の大きさ
上 下
24 / 48

24.キヤギネ、まさか!?

しおりを挟む
ッッッ、キヤギネ・・・!?
そんな女に、何て表情をするのよ!?
この私に対してだって、いつもクールで無表情・・誘惑しても脅しても、顔色一つ変えないくせにッ!!


気に入らないわ! お気に入りのヤカフの正妻にスッと納まったかと思えば、今度はずっと気になっているキヤギネまでも・・・

・・足りないわ!! ただ殺すだけじゃァ全ッ然足りない・・・!!
荒くれ者達を雇って、ボロボロになるまでレイプさせた後、生皮を剥いでやろうかと思っていたけど、そんなんじゃ全然!! もっと、もっと苦しめてやらなきゃ、気が治まらないわ・・・!!


アレコレと良からぬ思考をめぐらせながら、第一王女はフラフラと無意識にベナに近付いて行きます。 (憎いわ! この女が心底憎い!!・・どうしてやろうかしら・・!?) そんな風に思いながら、ベナの真ん前まで来ると、パチンと扇を閉じ、ベナを打つ為に思いきり振り上げ、そして力一杯振り下ろし・・・・・・


ガシッ!!  『「「 はっ!! 」」』


扇がベナを打つ前に、キヤギネが第一王女の腕を掴み、止めます。


「・・ッ、離せッ! 離しなさいッ! この、無礼者が!! 何なのよ!? 伯爵家の一使用人の分際で、お前は私に逆らってばかり・・はッ!!」


第一王女は、キヤギネが今まで見た事もない程鋭い、冷たい眼で自分を見下ろすのを、掴まれた腕がさらに強くギリギリと締め上げられるのを、ボンヤリと見つめます。 こんな視線も、こんな乱暴な振る舞いも、今まで一度だって受けた事はありません。

(ア、に、憎まれている!?)そう気付くのと同時に、痛みに耐えきれず、

「アゥッ、痛い! 痛い、痛いわよ! キヤギネ! 痛・・キヤギネェ!!?」


「・・・・・・」

キヤギネは無言のまま、更に第一王女の腕を締め上げます。 何を考えているのか、誰にも分かりません。


「痛い、痛いのよォ!? ねェ、私・・はッ・・キヤギネ、まさか・・」

痛みでボロボロと涙を流しながら、(・・折るつもり!? この私の腕を・・)

「キ、キヤギネェ・・あァ・・はァッ、はァァッ、キヤギネ、キヤギネ、あァン」

(いいわ、折って、もっと痛くして、あなたみたいな男になら、何されたっていいわ・・! キヤギネ、さァ、全部、好きにしていいのよ・・)


あまりにも信じられない事態に、誰も何も言えず、身動きも出来ません。

多分ここにいる誰にも止められない男と、この国で一番厄介な女・・・その女が、そう、まさしく“女”に変化していくさまに、一体何が起こっているのか、誰にも分かりません。 しかし第一王女の変化は歴然で、無法者のように暴れもがいていた体は、女らしくシナを作り、媚びる様にくねらせ、熱く荒い息には、時折甘い小さな悲鳴が混じり、性的快感を得ているのが明らかで、痛みに涙が止まらないというのに瞳はウットリと、鋭く冷たい表情を崩さない男――キヤギネの顔を見つめます。


その時、ベナが動きます。 第一王女を締めあげているキヤギネの腕を両手でそっと包み、


「いけないわ、マ・・キヤギネさん・・」 と、たしなめます。

環さんがマロにした数々の暴力を思えば、たとえキヤギネさんに前世の記憶が無くても、環さんだった第一王女を許せない気持ちが生じてしまうのでしょう。
全ての前世の記憶が戻ったベナは、そう想像するのです。


視線も体もピクリとも動かさないものの、キヤギネの瞳が切なげな色を湛えます。


「ちょッ・・! 私とキヤギネの二人だけの世界を邪魔しないでよ!!」


第一王女がベナに向かって怒鳴った瞬間、キヤギネが第一王女の腕を離し、少し後方へ恭しく移動します。


「あッ・・ン、キヤギネェン・・(折らないの? 折っていいのに・・あァ、イヤッ、止めないで、離さないでェ・・・)」


「・・大変失礼いたしました、我が女神様。 あまりの美しさに、つい力が入ってしまいました・・・お許し、頂けますよね?」


そう言って薄く微笑めば、ゾクゾクするほどの色香を放つキヤギネに感極まって腰が砕けてしまった第一王女。 倒れこみそうになったところを、いつの間にか入室したものの第一王女の信じられない姿に呆然と立ち尽くしていた第一王女の側近たちがワッと駆け寄り、支えます。 第一王女は側近達に支えられながらウットリと、

「ええ、許すわ・・許すに決まっているわ・・私の暴君サマ・・」

と、夢見る様に言い、更に皆を驚かせるのです・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

処理中です...