そのまさか

ハートリオ

文字の大きさ
上 下
20 / 48

20.問題、発生

しおりを挟む
・・・とんでもなくカワイイんだが・・・


耳まで真っ赤にして、震えながら“色仕掛け”の方法を模索中の幼な妻、ベナ・・・もし君の前世の記憶がはっきりしたものであれば、色仕掛けなんて簡単な事なんだろうに・・・
何せ、君の前世“麗華”は一度に複数の男達を夢中にさせていたザ・イイ女だったのだから・・俺一人骨抜きにするのくらい、目を瞑っていても出来ただろう・・

そう思い及ぶと、ベナと麗華は全然違う存在なんだと改めて納得する。

『ベナ、おいで。』
そう声を掛ければ、おずおずと枕元にやって来る。 可愛い、愛しい・・・


『まさか君は、拘束されて逃げられない俺にキスをするつもりなのか?』


「・・えっ!? キスを!? あっ・・・そ、そうですわ! その、まさかですわ・・!」


そう言うと、少し考えた後、獲物を狙うように俺の唇を見つめ、自分の唇を突き出しソロリソロリと顔を近づけて来る・・フッ、どうして上げたらいいんだろうな?
キスの成功率は、かなり低い気がするのだが・・なぜならベナは目を閉じている・・あ、ちょっと目を開けた・・軌道修正して・・来るか!?

んっ、惜しい! 彼女の唇は俺の唇を僅かに外れて、俺の頬に触れた。
残念! ん? ベナ、どういう事だ? その“やり遂げた!”的な表情は・・?
違う違う、失敗してるぞ、キス失敗、だ! ・・あぁもう、しょうがないな・・
今のは成功という事にしておいてやる・・オマケだぞ? オマケの成功だからな!?

『ベナ、まさか君は、さらに“大人のキス”を畳みかけて来るつもりなのか?』


「・・え? オトナノキス?」


『激しく舌を絡め合う・・』


「ひぇぇっ!? えぇと、そんな、それはさすがに・・う、そ、そう、その・・まさか・・です・・わ・・」


『うん・・・(カワイイ・・)』 


「・・あ、あのっ・・嫌なら、イヤと言っていいのですわ・・そうしたら、諦めて、あっちの、”奥様の部屋”で大人しく寝ますわ・・さ、早く言わないと、言って下さい、イヤって・・」


『イヤじゃない。 欲しい。』


「!!!・・・・・・う、あの・・・私、・・あぁ、ダメ・・ごめんなさ・・ムリ・・」

ベナが何か言い掛けた時、夫婦の寝室のドアが激しくノックされ・・


『なっ、何事だ!? 今、いいところ・・・』
言ってる途中で、ドアが開かれ、キヤギネが滑り込んでくる!? オイッ!!


「申し訳ございません、実は、邸内のどこかに、第一王女様が・・」


『・・はっ!?』 「??」 


「旦那様と奥様、それに私がこちらでゴタゴタしている間に突然訪問されて、有無を言わさず門を通り抜けられ、玄関においでになられたので、取り敢えず広間にお通ししたという事ですが、お茶を準備している間にお姿が消えてしまったという事で・・つまり、この屋敷内のどこかにいらっしゃいます。」


『なっ・・・・』 「・・・・・・」 「・・???」


第一王女・・・この国の最高権力者である、現王の最も覚えがめでたい娘・・・第一王子よりも優秀な彼女が、次の王になるだろうと言われている。
前王の、広く各方面の意見を取り入れ議会主体で進められた政治とは真逆の、完全独裁政治を執る現王。 従わない者は裁判すらせず拷問の末処刑するような、恐怖政治を行う残酷な現王は、溺愛する第一王女クニンニ様の言いなり・・・

つまり、第一王女クニンニ様は、何でもやりたい放題が許されている存在なのである。

こんな突然の訪問も、極端に言えば訪問中ギネオア邸で誰かを殺そうとも、ギネオア邸に火を放とうとも、ギネオア邸側の罪なのだ。

そして、そんな恐ろしい存在は、何故か俺に好意を持っているのだ。

彼女も女・・・俺に懸想しているとはいえ、イイ男には弱い。
今までも何度か襲来してきたが、その都度キヤギネがやんわりと追い返してくれていた。 だが今回は、キヤギネがこちらの事に掛かりきりになっていた所で、侵入されてしまったという事か・・・しかも、あの女は頭がおかしい・・・何を考えているのか、何をするつもりなのか想像もつかない・・・

くそッ、どうする!?


ガタガタッ・・・


その時、“夫婦の寝室”の続き部屋の、“奥様の部屋”から物音が・・・!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ
恋愛
 とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。  しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。  最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。  わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。  旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。  当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。  とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。    それから十年。  なるほど、とうとうその時が来たのね。  大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。  一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。 全36話

処理中です...