12 / 48
12.主人と執事の攻防その2
しおりを挟む
『・・うん・・何!?』
珍しい事もあるものだ。
我がギネオア伯爵家の執事、キヤギネ・・
恐らくこの世界で一番有名な執事・・・というのも、その見目麗しさと優秀さ、掴み処の無さと、(ご婦人方が言うには)どこか危険な香り・・・が、ご婦人方に圧倒的に人気で、5年連続B(バトラー)-1グランプリで優勝→殿堂入り、バトラー・オブ・ユニバース→殿堂入り、貴族が選ぶ本当に使える執事大賞→殿堂入り・・・等々、執事の頂点を極めている男だ。 が、本人は至って冷めている・・そこが更にご婦人方を熱くさせるらしい・・・ちょいムカ。
この、俺より5才年上の、いつもはどこかヒラヒラと掴み処の無い、だが優秀で忠実な執事の様子がおかしい。
結婚前は女性関係が派手だった俺・・複数の女性がこの屋敷でかち合ってしまい泥沼修羅場になりかけた時も顔色一つ変えずに冷静沈着にほぼ全裸の女性達を屋敷外に放り出し、何とか血を見ずに済んだという事もあった・・・
ほぼ全裸の貴婦人たちに顔色一つ変えなかったイケメンが、顔は蒼ざめ、額に苦悩を滲ませ・・・そしてひどく言いづらそうに、我が妻ベナの愚行について、フォローを入れながら説明している。
「・・奥様は3階から落下された際、頭部を強打されていると思われまして、とても普通の状態とは言えないので・・・」
『・・それで、ベナは俺に睡眠薬を盛ってどうしようというのだ? 屋敷を逃げ出すか? それとも手っ取り早く俺を殺すつもりか?』
「旦那様? ちゃんとお聞きでしたか? “睡眠薬”ではなく、“ほんの少しの間だけ転寝するぐらいの微量の睡眠薬”でございます!」
・・・この男に注意されるのは初めてかもしれない・・・
「奥様は、旦那様にほんの少しの間だけ転寝してほしいのです。 その間に、旦那様を夫婦の寝室のベッドに縛り付けたいと仰っていて、」
『だから何の為だと訊いている。 その後逃げるつもりか、俺を殺・・』
「ちゃんと最後までお聞きくださいまし!」
オイ! 随分とピシリと注意してくれるな? いつもの恭しい態度はどう・・
「奥様は、旦那様が逃げられない様にベッドに拘束したうえで、旦那様に色仕掛けを仕掛けたいそうでございます・・・」
『・・・・・・』
「・・ええ、奥様は、頭専門の医術師にお診せになった方が・・」
『色々分からないな・・』
「はい、でも一切悪気はないようで・・」
『“悪気無く悪い事をするのが真の悪人”と、お前は良く言っていたな・・』
「はい・・あ、いえ!でもベナ様は本当に悪気無く・・! ただただ旦那様と夫婦らしくなりたいと必死のご様子で・・・」
『俺と夫婦らしくだと!? この3年間、俺の顔を見るのさえ苦痛だと部屋に閉じこもっていた娘がか!? 一体、何を企んでいるんだ・・!?』
俺はベナの前世を知っている・・麗華という女――男達を手玉に取っているつもりで、実際は利用されていただけの、哀しい女・・・
俺は麗華と恋愛関係にあったわけではない。 幼馴染・・それだけだ。 幼馴染として、麗華に幾度となく注意した――ちゃんとした男と付き合え、学校が嫌ならちゃんとした仕事を見つけろ、ちゃんとした人生を送れ、ちゃんとした・・・ちゃんと、幸せを求めろ!――と。 だが麗華は聞く耳を持たず、俺は諦め、麗華の側を去った・・・そう、俺達には前世の恋人が劇的に今世で再会した!などというドラマチックな要素は無い。 麗華も俺を口うるさい幼馴染としか思っていなかっただろうし・・・
結局、麗華が何を考えていたのか最後まで分からなかった・・・
『・・面白い、乗ってみようか・・』
「・・は!? 旦那様!?」
『それでベナが何を考えているのか分かるだろう。 で? いつ俺に薬を盛るつもりだ?』
「はい、今夜の夕食時に・・」
『よし、だが実際には盛るなよ? 俺は転寝する、振りをする。 分かったな?』
ベナはベナだ。 麗華ではない・・・だが、3年前のベナの表情は麗華そのものだった・・男達を侍らせ、貢がせていた悪女・・だが実際は弄ばれていたのは麗華の方・・俺はそれが許せなく、彼女に怒り続けていた・・ちゃんと幸せなら、何も文句は言わない。 そうじゃないから、我慢が出来なかった・・・幸せなら、幸せでいてくれるなら、相手が俺じゃなくても我慢できたのに・・・
「・・はい、かしこまりました。 では、食堂の方へ・・本日から、奥様もご一緒に食事をされたいとの事ですが、よろしいでしょうか?」
『ほぉ、安全地帯の自室から出て俺と食事を共にするか? 本気だな。 何に本気なのかは分からんが・・・な。』
ザワザワする・・ベナ、お前の真意は何だ?
3年前、ベナを見た瞬間から、前世俺を苛み続けた怒りの炎が再び胸に宿って、俺を焦がし続けている・・静かに俺を焼き続ける冷たい炎を、ベナ、お前はどうするつもりだ?
「あの・・・旦那様・・」
ん? 何だ、まだ言いたい事があるのか? 『何だ?』
「はい、奥様は初めてですし、性教育などの類も一切受けておられないようですので、くれぐれもお手柔らかに・・」
・・何の心配をしているんだ!? 全く・・・
『・・そういう事にはならんだろう・・俺はアレに対して、そういう興味は一切ない。 なぜ“妻”にしたのか今となっては覚えてもいない。 バカみたいに3階から逃げようとしなくとも、堂々と玄関から出て行ってくれていいのだ。』
「えっ・・では旦那様は、奥様の色仕掛けに乗るつもりは無いと・・?」
『乗るわけないだろう。 その気になるとは思えない。 だが、話をするぐらいなら別にいい。 俺はアレが、何を考えているのかにだけ興味がある・・・』
「・・旦那様、それって・・・」
『何だ?』
「恋の始まりでは・・・」
・・・フゥ~~~ッ・・・キヤギネ、頭を強打したのはお前の方じゃないのか???
珍しい事もあるものだ。
我がギネオア伯爵家の執事、キヤギネ・・
恐らくこの世界で一番有名な執事・・・というのも、その見目麗しさと優秀さ、掴み処の無さと、(ご婦人方が言うには)どこか危険な香り・・・が、ご婦人方に圧倒的に人気で、5年連続B(バトラー)-1グランプリで優勝→殿堂入り、バトラー・オブ・ユニバース→殿堂入り、貴族が選ぶ本当に使える執事大賞→殿堂入り・・・等々、執事の頂点を極めている男だ。 が、本人は至って冷めている・・そこが更にご婦人方を熱くさせるらしい・・・ちょいムカ。
この、俺より5才年上の、いつもはどこかヒラヒラと掴み処の無い、だが優秀で忠実な執事の様子がおかしい。
結婚前は女性関係が派手だった俺・・複数の女性がこの屋敷でかち合ってしまい泥沼修羅場になりかけた時も顔色一つ変えずに冷静沈着にほぼ全裸の女性達を屋敷外に放り出し、何とか血を見ずに済んだという事もあった・・・
ほぼ全裸の貴婦人たちに顔色一つ変えなかったイケメンが、顔は蒼ざめ、額に苦悩を滲ませ・・・そしてひどく言いづらそうに、我が妻ベナの愚行について、フォローを入れながら説明している。
「・・奥様は3階から落下された際、頭部を強打されていると思われまして、とても普通の状態とは言えないので・・・」
『・・それで、ベナは俺に睡眠薬を盛ってどうしようというのだ? 屋敷を逃げ出すか? それとも手っ取り早く俺を殺すつもりか?』
「旦那様? ちゃんとお聞きでしたか? “睡眠薬”ではなく、“ほんの少しの間だけ転寝するぐらいの微量の睡眠薬”でございます!」
・・・この男に注意されるのは初めてかもしれない・・・
「奥様は、旦那様にほんの少しの間だけ転寝してほしいのです。 その間に、旦那様を夫婦の寝室のベッドに縛り付けたいと仰っていて、」
『だから何の為だと訊いている。 その後逃げるつもりか、俺を殺・・』
「ちゃんと最後までお聞きくださいまし!」
オイ! 随分とピシリと注意してくれるな? いつもの恭しい態度はどう・・
「奥様は、旦那様が逃げられない様にベッドに拘束したうえで、旦那様に色仕掛けを仕掛けたいそうでございます・・・」
『・・・・・・』
「・・ええ、奥様は、頭専門の医術師にお診せになった方が・・」
『色々分からないな・・』
「はい、でも一切悪気はないようで・・」
『“悪気無く悪い事をするのが真の悪人”と、お前は良く言っていたな・・』
「はい・・あ、いえ!でもベナ様は本当に悪気無く・・! ただただ旦那様と夫婦らしくなりたいと必死のご様子で・・・」
『俺と夫婦らしくだと!? この3年間、俺の顔を見るのさえ苦痛だと部屋に閉じこもっていた娘がか!? 一体、何を企んでいるんだ・・!?』
俺はベナの前世を知っている・・麗華という女――男達を手玉に取っているつもりで、実際は利用されていただけの、哀しい女・・・
俺は麗華と恋愛関係にあったわけではない。 幼馴染・・それだけだ。 幼馴染として、麗華に幾度となく注意した――ちゃんとした男と付き合え、学校が嫌ならちゃんとした仕事を見つけろ、ちゃんとした人生を送れ、ちゃんとした・・・ちゃんと、幸せを求めろ!――と。 だが麗華は聞く耳を持たず、俺は諦め、麗華の側を去った・・・そう、俺達には前世の恋人が劇的に今世で再会した!などというドラマチックな要素は無い。 麗華も俺を口うるさい幼馴染としか思っていなかっただろうし・・・
結局、麗華が何を考えていたのか最後まで分からなかった・・・
『・・面白い、乗ってみようか・・』
「・・は!? 旦那様!?」
『それでベナが何を考えているのか分かるだろう。 で? いつ俺に薬を盛るつもりだ?』
「はい、今夜の夕食時に・・」
『よし、だが実際には盛るなよ? 俺は転寝する、振りをする。 分かったな?』
ベナはベナだ。 麗華ではない・・・だが、3年前のベナの表情は麗華そのものだった・・男達を侍らせ、貢がせていた悪女・・だが実際は弄ばれていたのは麗華の方・・俺はそれが許せなく、彼女に怒り続けていた・・ちゃんと幸せなら、何も文句は言わない。 そうじゃないから、我慢が出来なかった・・・幸せなら、幸せでいてくれるなら、相手が俺じゃなくても我慢できたのに・・・
「・・はい、かしこまりました。 では、食堂の方へ・・本日から、奥様もご一緒に食事をされたいとの事ですが、よろしいでしょうか?」
『ほぉ、安全地帯の自室から出て俺と食事を共にするか? 本気だな。 何に本気なのかは分からんが・・・な。』
ザワザワする・・ベナ、お前の真意は何だ?
3年前、ベナを見た瞬間から、前世俺を苛み続けた怒りの炎が再び胸に宿って、俺を焦がし続けている・・静かに俺を焼き続ける冷たい炎を、ベナ、お前はどうするつもりだ?
「あの・・・旦那様・・」
ん? 何だ、まだ言いたい事があるのか? 『何だ?』
「はい、奥様は初めてですし、性教育などの類も一切受けておられないようですので、くれぐれもお手柔らかに・・」
・・何の心配をしているんだ!? 全く・・・
『・・そういう事にはならんだろう・・俺はアレに対して、そういう興味は一切ない。 なぜ“妻”にしたのか今となっては覚えてもいない。 バカみたいに3階から逃げようとしなくとも、堂々と玄関から出て行ってくれていいのだ。』
「えっ・・では旦那様は、奥様の色仕掛けに乗るつもりは無いと・・?」
『乗るわけないだろう。 その気になるとは思えない。 だが、話をするぐらいなら別にいい。 俺はアレが、何を考えているのかにだけ興味がある・・・』
「・・旦那様、それって・・・」
『何だ?』
「恋の始まりでは・・・」
・・・フゥ~~~ッ・・・キヤギネ、頭を強打したのはお前の方じゃないのか???
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】
雪乃
恋愛
「…パリスごめん…」
わたしの婚約者は今日も可憐なひとを腕にぶら下げながら困ったように言う。
「ロビーは悪くないのっ…ぼくが…っ」
…………わかってんなら、離れてくんないかな?
確実にかはんしん狙われてるのにそれに気づかず、浮気してないのに「ただの友だちだから!」真実なんだけどなぜか浮気男のような言い訳にしか聞こえない婚約者(に、まとわりつく病弱幼なじみヒロイン(♂))との攻防。
※ゆるふわです。なんでも許せる方向け。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる