7 / 48
7.主人と執事の攻防その1
しおりを挟む
俺はフザケたノックが聞こえた執務室のドアを睨みつけ、言い放つ。
『・・キヤギネか・・。 何度も言わせるな。 俺は別に、ベナが目覚めたと聞いて戻ってきたわけではない! ちょっとした用事があったのだ!』
キィ~・・・ やはり。
静かにドアが少しだけ開き、優秀で忠実(?)な執事、キヤギネが半分ほど顔をのぞかせる。 目も半目になっている。 ・・・どーゆー表情だっ!?
執務室のドアから顔を半分だけのぞかせたまま、キヤギネが提案して来る。
「・・・はぁ、では、ちょっとした幼児・・いえ、用事のついでに、奥様に声を掛けられては? 旦那様がお戻りになった事は、リークを通してご存じのはずですからなぁ・・・お待ちなのではないでしょうか・・・」
何ッか気に障る! 顔半分だけのぞかせてるのが気に障る! 半目なのが気に障る! 10分間隔でしつこくベナに会えと要求して来るのが気に障る!!!
『“命の恩人”に礼を言いたいなら、それこそお前が聞いてやればいいだろう!』
「私の優秀な妹が、“命の恩人”は旦那様だとお伝え済みでございます。(ニコニコ) ささ、妻の話を聞くのも、夫の大切な務めでございますぞ。」
『・・知っているだろう! アレは、俺を嫌っているのだ・・連れてきた当時、何度か話し掛けたが、完全無視された・・今回だって、15才最後の日に出て行こうとしたのは、16才になったら、大人として扱われ、俺に求められるかもしれないからだろう。 俺に触れられたくないからだろう。 そもそも、俺は彼女の同意も得ずに勝手に妻としてしまった・・そんな俺を夫だなんて、認められないんだろう・・』
「おやおや、“ガラスの少年時代”返りでございますか? 繊細な美少年時代に戻っても、何もいい事はありませんぞ?」
『・・う、うるさい! お前、俺をからかって遊んでいるだろう!? 俺は、塩対応されるのが分かっているのに、アレに会うつもりなんか・・』
ドアから半身をのぞかせていたキヤギネが、不意に室内に入り、俺の机の前まで来ると、俺の眼を見据えながら静かに言う。
「会っておあげなさい・・・あまり女性を待たせるものではありません。」
今までのどこかふざけた声音よりずっと低い、重厚で威厳のある声。 キヤギネの地声、ムカつくほどのイケボだ。
『・・・!!!』
出た! イケメン! 男前発言! この男は、いつもはヒラヒラしてるのに、突然こういうイケメンを発動する厄介な男なんだ・・・そりゃモテるわな・・俺も女なら惚れてただろう(くそッ)・・すましたイケメン面しやがって・・・あぁもう!
『と、とにかく、まずは手紙を書く! で、ベナが本当に俺に会いたいなら、日時を決めるとしよう!』
俺はその場でサッと手紙をしたため、キヤギネに渡す。
『まずは、その手紙をベナに渡してくれ。 どうだ、これでいいだろう?』
「・・・あーーー、・・・ですか・・・。」
・・なっ、何だ、その反応は!? おまっ、お前、顔に“ヘタレですか・・”って書いてあるぞ!! 失礼だろうが! 俺は年下とはいえお前の主人なんだぞ!?
「ちなみにコレ、私がお届けするので? この3年間、奥様の部屋には、たとえ私であっても子供であっても小動物であっても男は一切近づけない様にしてきたのに・・」
『いいんだ! メイドに託して中を見られたらどうする!? お前にしか頼めないだろう!?』
ちょ・・ 見るな! 俺を可哀想な子を見る目で見るな! サッサと行け!
ん? 何か変だな? 何か、俺が頼み込んで手紙を届けてもらおうとしている体になってないか? 俺は、キヤギネがあんまり煩いから、仕方なく、キヤギネを黙らせるために、ベナに手紙を書いたのだ! べ、別に、無理に届けてもらわなくても・・
「すぐにお届け致します。 では。」
カッカッカッカッ・カチャッ・キィッ、パタン、カッカッカッカッ・・・
キ、キヤギネ! 何て頼りになる男だっっ!!
『・・キヤギネか・・。 何度も言わせるな。 俺は別に、ベナが目覚めたと聞いて戻ってきたわけではない! ちょっとした用事があったのだ!』
キィ~・・・ やはり。
静かにドアが少しだけ開き、優秀で忠実(?)な執事、キヤギネが半分ほど顔をのぞかせる。 目も半目になっている。 ・・・どーゆー表情だっ!?
執務室のドアから顔を半分だけのぞかせたまま、キヤギネが提案して来る。
「・・・はぁ、では、ちょっとした幼児・・いえ、用事のついでに、奥様に声を掛けられては? 旦那様がお戻りになった事は、リークを通してご存じのはずですからなぁ・・・お待ちなのではないでしょうか・・・」
何ッか気に障る! 顔半分だけのぞかせてるのが気に障る! 半目なのが気に障る! 10分間隔でしつこくベナに会えと要求して来るのが気に障る!!!
『“命の恩人”に礼を言いたいなら、それこそお前が聞いてやればいいだろう!』
「私の優秀な妹が、“命の恩人”は旦那様だとお伝え済みでございます。(ニコニコ) ささ、妻の話を聞くのも、夫の大切な務めでございますぞ。」
『・・知っているだろう! アレは、俺を嫌っているのだ・・連れてきた当時、何度か話し掛けたが、完全無視された・・今回だって、15才最後の日に出て行こうとしたのは、16才になったら、大人として扱われ、俺に求められるかもしれないからだろう。 俺に触れられたくないからだろう。 そもそも、俺は彼女の同意も得ずに勝手に妻としてしまった・・そんな俺を夫だなんて、認められないんだろう・・』
「おやおや、“ガラスの少年時代”返りでございますか? 繊細な美少年時代に戻っても、何もいい事はありませんぞ?」
『・・う、うるさい! お前、俺をからかって遊んでいるだろう!? 俺は、塩対応されるのが分かっているのに、アレに会うつもりなんか・・』
ドアから半身をのぞかせていたキヤギネが、不意に室内に入り、俺の机の前まで来ると、俺の眼を見据えながら静かに言う。
「会っておあげなさい・・・あまり女性を待たせるものではありません。」
今までのどこかふざけた声音よりずっと低い、重厚で威厳のある声。 キヤギネの地声、ムカつくほどのイケボだ。
『・・・!!!』
出た! イケメン! 男前発言! この男は、いつもはヒラヒラしてるのに、突然こういうイケメンを発動する厄介な男なんだ・・・そりゃモテるわな・・俺も女なら惚れてただろう(くそッ)・・すましたイケメン面しやがって・・・あぁもう!
『と、とにかく、まずは手紙を書く! で、ベナが本当に俺に会いたいなら、日時を決めるとしよう!』
俺はその場でサッと手紙をしたため、キヤギネに渡す。
『まずは、その手紙をベナに渡してくれ。 どうだ、これでいいだろう?』
「・・・あーーー、・・・ですか・・・。」
・・なっ、何だ、その反応は!? おまっ、お前、顔に“ヘタレですか・・”って書いてあるぞ!! 失礼だろうが! 俺は年下とはいえお前の主人なんだぞ!?
「ちなみにコレ、私がお届けするので? この3年間、奥様の部屋には、たとえ私であっても子供であっても小動物であっても男は一切近づけない様にしてきたのに・・」
『いいんだ! メイドに託して中を見られたらどうする!? お前にしか頼めないだろう!?』
ちょ・・ 見るな! 俺を可哀想な子を見る目で見るな! サッサと行け!
ん? 何か変だな? 何か、俺が頼み込んで手紙を届けてもらおうとしている体になってないか? 俺は、キヤギネがあんまり煩いから、仕方なく、キヤギネを黙らせるために、ベナに手紙を書いたのだ! べ、別に、無理に届けてもらわなくても・・
「すぐにお届け致します。 では。」
カッカッカッカッ・カチャッ・キィッ、パタン、カッカッカッカッ・・・
キ、キヤギネ! 何て頼りになる男だっっ!!
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる