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キール
06 木の枝を拾って
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特殊な育ち方をしたキールは、現在特殊な状態にある。
実母から掛けられた呪いによって、全身白い毛に覆われた獣(白クマ)の姿をしており、魔力と言葉を失い、ミッドシップ王国から遠く離れたどこかの森の中にいる。
分からない。
何故こんな目に遭うのか。
この状況で何をどうしたらいいのか。
ミッドシップ王国へ帰りたいとは思わない。
ここにこんな状況で居たくもない。
分からない。
考えた事も無い。
自分が何を欲し
それがどこにあるのか
(きっと一生分からない。
俺は一生、何も分からないんだ。
存在に価値が無いから‥‥)
「ガウ(価値)‥‥」
暗い夜の森。
頭上には細く頼りなげな月。
雲間に微かに光る月をぼんやりと見上げ、キールは思う。
『価値』はふつう曖昧だ。
そこにはいつだって『誰(何)かにとって』という条件がくっついている。
その条件が変われば価値も変わる。
古いものが好きな人にとって骨董品は『お宝』だが、新しいものが好きな人にとっては『ゴミ』でしかない、という様に。
『お前は誰にとっても価値の無い子供。
――ただ憎まれ疎まれるだけの存在なのだから』
もう全身に滲み込んだ異父兄の言葉。
(俺は『誰にとっても価値の無い』存在)
だから呪いを掛けられ
ここにこうして居る。
『死んだ方がいい‥‥
死んで楽になれ』
異父兄にそう勧められても実行しなかったのは方法が分からなかったからだ。
監禁、虐待されていた為、思考する力など無かったのだ。
もし異父兄にその言葉と共に毒薬を渡されていたら素直に飲んでいただろう。
(父上に本宮殿へ移され言われるままに勉強した今ならどうすれば死ぬか分かる)
足元に移した視線の先に木の枝が落ちている。
丁度剣の様に固く頑丈な木。
これを心臓に刺せばいい。
それで終わる。
キールは木の枝を拾い、尖った先端を自分の心臓に向けた。
強く刺し込む為にグッと木の枝を握る。
人間の手と違い握り辛いが、何とか両手を使って握り込んだ。
(‥‥‥)
言葉で思考する事無く一気に枝を刺し込もうとした瞬間、
実母から掛けられた呪いによって、全身白い毛に覆われた獣(白クマ)の姿をしており、魔力と言葉を失い、ミッドシップ王国から遠く離れたどこかの森の中にいる。
分からない。
何故こんな目に遭うのか。
この状況で何をどうしたらいいのか。
ミッドシップ王国へ帰りたいとは思わない。
ここにこんな状況で居たくもない。
分からない。
考えた事も無い。
自分が何を欲し
それがどこにあるのか
(きっと一生分からない。
俺は一生、何も分からないんだ。
存在に価値が無いから‥‥)
「ガウ(価値)‥‥」
暗い夜の森。
頭上には細く頼りなげな月。
雲間に微かに光る月をぼんやりと見上げ、キールは思う。
『価値』はふつう曖昧だ。
そこにはいつだって『誰(何)かにとって』という条件がくっついている。
その条件が変われば価値も変わる。
古いものが好きな人にとって骨董品は『お宝』だが、新しいものが好きな人にとっては『ゴミ』でしかない、という様に。
『お前は誰にとっても価値の無い子供。
――ただ憎まれ疎まれるだけの存在なのだから』
もう全身に滲み込んだ異父兄の言葉。
(俺は『誰にとっても価値の無い』存在)
だから呪いを掛けられ
ここにこうして居る。
『死んだ方がいい‥‥
死んで楽になれ』
異父兄にそう勧められても実行しなかったのは方法が分からなかったからだ。
監禁、虐待されていた為、思考する力など無かったのだ。
もし異父兄にその言葉と共に毒薬を渡されていたら素直に飲んでいただろう。
(父上に本宮殿へ移され言われるままに勉強した今ならどうすれば死ぬか分かる)
足元に移した視線の先に木の枝が落ちている。
丁度剣の様に固く頑丈な木。
これを心臓に刺せばいい。
それで終わる。
キールは木の枝を拾い、尖った先端を自分の心臓に向けた。
強く刺し込む為にグッと木の枝を握る。
人間の手と違い握り辛いが、何とか両手を使って握り込んだ。
(‥‥‥)
言葉で思考する事無く一気に枝を刺し込もうとした瞬間、
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