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キール

03 呪われた理由2

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それは『徐々に』ではなく、『突然』起こった。

11才になった第二王子キールの髪と瞳の色が突然王家の色に変化した。

コバルトグリーンの髪が白銀髪に、

マンダリンオレンジの瞳がロイヤルパープルに。

正妃を監視していた王家の影がその報告を入れた。


『正妃はまだキール殿下の変化に気付いておりません。
気付けばすぐに殺すでしょう。
王家の色に変化したという事は、父親が陛下であるという事ですから。
『弟は否定したが、もしかして愛した弟の子かもしれない』
正妃のその想いがキール殿下を今まで生かしてきたのですから』


これを受けて王は第二王子キールに会いに離宮へと急いだ。

そこで初めて第二王子が実母である正妃に虐待されて過ごして来た事を知った。

離宮に居たのは妃と第一王子のみ。

キールは敷地内の囚人用の塔に閉じ込められ劣悪な環境で生活していた。

やせ細り、年令よりずっと小さなキールの姿に、そしてその容姿に王は絶句する。

髪や瞳は勿論の事、痩せていてもその面立ちが自分や自分の父によく似ており、王家の血を引いている事、自分の息子である事は疑う余地が無い。

あぁ、そう言えば、自分もそうだったではないか!

と、王は思い出す。

自分も生まれた時は母親の色で、成長と共に王家の色に変化したのだった。

最初から王家の色で生まれた側妃の子供たちより自分に似ているという事だ。

何でこんな大切な事を忘れていたのか――二度とあの違和感を感じたくなくて――正妃への疑いが決定的になるのが‥‥嫌で‥‥逃げた‥‥

一度も会う事無く捨て置いていた息子に駆け寄り言葉を掛けた王だったが、返ってきた言葉は、

『僕――価値無い――死んだ方がいい――母上の子供――第一王子だけ‥‥』

だった。

実母の憎しみで乱れた罵声は言葉として聞き取れなかった為、11年間でキールが掛けられた言葉は生まれたばかりの時に母と同じ顔をした男に言われた

『コレは私の子ではない!‥‥‥‥‥』

と、兄である第一王子が気まぐれに塔へやって来ては気が済むまで繰り返される

『母上の子供は第一王子である僕だけだ。
お前は母上の子供として何の価値も無い。
父上も国王もお前を自分の子供として認めなかった。
お前は誰にとっても価値の無い子供。
――ただ憎まれ疎まれるだけの存在なのだから。
死んだ方がいい‥‥
死んで楽になれ』


それぐらいだったので、キールはマトモに話す事も出来ず、『僕――価値無い――死んだ方が‥‥』を繰り返すだけ。

王が本宮殿に連れ帰り、自分の傍で体力をつけさせ、教育を施し――

キールは奇跡的に短期間で普通に育った王子のレベルに達した。

さらに急激に体が成長し体力がつくと強力な魔力が目覚めた。

魔力はキール自身を守る為、体が強くなるまでは眠っていた様だった。

国王は第二王子キールを王太子にする事を決めた。


それを知り、実母である正妃は怒り狂う。
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