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第三章
12 侍女はヒヤヒヤ
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カロンは、まさかと思い聞いてみる。
「もしかして『白クマさん』というのは、スタード公爵邸別邸の城を囲んでいた森に住んでいた白い体に紫色の険しい眼をした凶暴そうな‥‥」
「あ、そうです!
白いモフモフした愛らしい子グマさんです!
ロイヤルパープルの美しい瞳の、高貴な雰囲気を漂わせた、ツンなのにすごく優しい白子グマさんです!」
「‥‥私が駆除しようとして、ステラ様が猛反対した、あの?」
「あ、そんな事もありましたね。
‥‥そう言えばあんなに可愛い子グマさんを、何故駆除しようと?」
「‥‥ッ」
カロンは、同じ生き物について話しているのだろうなとは思う。
互いにまるで認識が違うが。
それよりも、『白クマさん』について話す時のステラのトロンとした目が‥‥
(何なのだ、この黒いモヤモヤした息苦しい感情は‥‥?)
「ゴホッ、
子グマが邸を用意とは?」
「あぁ、え~~と、
私も詳しくは知らないのですけど、
白クマさんは呪いを掛けられていて、
でも本当は高貴な‥」
「ンッ!
ゴホン! ゴホン!」
侍女が咳払いする。
「‥‥ハッ!
(そうか、喋っちゃダメなのね?)
それで、何故私を捜されていたのですか?
スタード公爵邸の事ですか?」
(確かに白くて小さいクマだったが――
森の近くを通った時、物凄く険しい目で私を見て来た。
あれは呪いを掛けられた人間だったのか?
獣人か?)
「カロン様?」
「――あ、いえ、
スタード公爵邸の事ではありません。
その、ステラ様に、ウチの領地へ来ませんかとお誘いしたくて‥‥」
「まぁ!
スカウトして下さるのですか?」
「スカウト‥‥
あ、まぁ、
そういう事になりますか‥‥」
「ありがとうございます!
嬉しいです!」
「では!」
「「ステラ様!?」」
喜びの声を上げるカロンと同時に侍女達が悲痛な声を上げる。
あぁもうキール殿下は何をノンビリしているのッ!?
黒目黒髪の超絶美丈夫にステラ様を攫われてしまいますよッ!?
そんな不安で涙目になる侍女達を不思議に思いながら、ステラはカロンに告げる。
「あ――いいえ。
お誘いは凄く嬉しいのですが、私は魔道具を作成販売したいのです」
「魔道具を‥‥」
「はい。
カロン様のレッツェル子爵領では、果物から作るお酒など特産品を商売にしていますよね。
ですから――」
「ステラ嬢!
魔道具の作成販売を自由にして頂いていいのです!
勿論、私に出来る事は全力で手伝わせて頂きます!
私はただあなたに来て頂きたいのです!
私はあなたが――」
「わぁぁぁぁぁッ!!
ステラ様ッ!
スピーチの時間の時間の時間ですわッ」
必死な侍女のよく通る声がカロンの声を完全に消し去る。
「もしかして『白クマさん』というのは、スタード公爵邸別邸の城を囲んでいた森に住んでいた白い体に紫色の険しい眼をした凶暴そうな‥‥」
「あ、そうです!
白いモフモフした愛らしい子グマさんです!
ロイヤルパープルの美しい瞳の、高貴な雰囲気を漂わせた、ツンなのにすごく優しい白子グマさんです!」
「‥‥私が駆除しようとして、ステラ様が猛反対した、あの?」
「あ、そんな事もありましたね。
‥‥そう言えばあんなに可愛い子グマさんを、何故駆除しようと?」
「‥‥ッ」
カロンは、同じ生き物について話しているのだろうなとは思う。
互いにまるで認識が違うが。
それよりも、『白クマさん』について話す時のステラのトロンとした目が‥‥
(何なのだ、この黒いモヤモヤした息苦しい感情は‥‥?)
「ゴホッ、
子グマが邸を用意とは?」
「あぁ、え~~と、
私も詳しくは知らないのですけど、
白クマさんは呪いを掛けられていて、
でも本当は高貴な‥」
「ンッ!
ゴホン! ゴホン!」
侍女が咳払いする。
「‥‥ハッ!
(そうか、喋っちゃダメなのね?)
それで、何故私を捜されていたのですか?
スタード公爵邸の事ですか?」
(確かに白くて小さいクマだったが――
森の近くを通った時、物凄く険しい目で私を見て来た。
あれは呪いを掛けられた人間だったのか?
獣人か?)
「カロン様?」
「――あ、いえ、
スタード公爵邸の事ではありません。
その、ステラ様に、ウチの領地へ来ませんかとお誘いしたくて‥‥」
「まぁ!
スカウトして下さるのですか?」
「スカウト‥‥
あ、まぁ、
そういう事になりますか‥‥」
「ありがとうございます!
嬉しいです!」
「では!」
「「ステラ様!?」」
喜びの声を上げるカロンと同時に侍女達が悲痛な声を上げる。
あぁもうキール殿下は何をノンビリしているのッ!?
黒目黒髪の超絶美丈夫にステラ様を攫われてしまいますよッ!?
そんな不安で涙目になる侍女達を不思議に思いながら、ステラはカロンに告げる。
「あ――いいえ。
お誘いは凄く嬉しいのですが、私は魔道具を作成販売したいのです」
「魔道具を‥‥」
「はい。
カロン様のレッツェル子爵領では、果物から作るお酒など特産品を商売にしていますよね。
ですから――」
「ステラ嬢!
魔道具の作成販売を自由にして頂いていいのです!
勿論、私に出来る事は全力で手伝わせて頂きます!
私はただあなたに来て頂きたいのです!
私はあなたが――」
「わぁぁぁぁぁッ!!
ステラ様ッ!
スピーチの時間の時間の時間ですわッ」
必死な侍女のよく通る声がカロンの声を完全に消し去る。
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