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第三章

05 笑う国王

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「ハッ‥‥灯が‥‥
スタード公爵邸から灯が消えました!
赤く煌めく強く美しい灯が‥‥!」



ティスリー王国一の魔法師が国王ウィーツにそう報告してから半月。



「ふ~~む‥‥
ふふふ‥‥」



国王ウィーツは笑いを抑えられない。


『ティスリー王国の要』
『ティスリー王国の影の王家』
『スタード公爵こそが真の国王』


などともてはやされて来たスタード公爵家。

魔力量が低い故に弟ウィーツに王座を譲り王家を出された兄が、逆に国の要と称賛され、兄の方が国王に相応しかったのでは?などと陰口を言われるのはウィーツにとって不快でしかなかった。


そんなスタード公爵家が、突然崩れ始めた。

国としては笑っている場合ではないのに、国王ウィーツはどうしても口角が上がるのを抑えられないのだ。



これまで目立ちまくっていただけに、スタード公爵邸の異変はすぐに大きな話題となった。


最初は『時の番人』としての役割を果たせなくなった。


次に、フロル王国王太子夫妻が青い顔で予定を切り上げ帰国すると告げて来た。

理由は詳しくは明かさなかったが、彼等の帰国前にスタード公爵が公爵夫人の首を持って現れ、謝罪した。

20年以上も気に入って公爵夫人にまで据えた平民の女を差し出すとはと驚いたが、もはやその女に微塵も愛情が残っていない様子だった。


その後も、スタード公爵家に滞在した国内外の要人達が口々に不満を漏らした。

『自在にお湯が出る魔道具があると聞いて楽しみにしていたのに、水すらマトモに出なかった』

『かの美食の国の国王が大絶賛したしたという料理は平凡で――』

『いつでも快適な室温だと聞いていたのに暑くて不快そのものだった』

『おもてなしの天才だなんて誰が言ったのか‥‥
気の利かなさに腹が立った』

『噴水ショーも美しいランプによる幻想的な夜景も見られず失望した』


現在は邸内を改修工事中だなどと言って滞在を望む人々を断っているらしい。


ふん、兄にしては賢明だ‥‥

いや、そうせざるを得ないだけか、と国王ウィーツは自慢の顎髭をさする。


国王ウィーツはスタード公爵邸を探らせた。

結果、2人の人物がスタード公爵邸を去った事が分かった。


一人は令息ディングの右腕と言われた有能な執事、カロン・マ・レッツェル。

公爵令嬢クレアにクビにされ、ディングも認めた為、邸を去ったという。

そしてもう一人は――


涼やかなヘブンリーブルーでありながら猛禽類の様なウィーツの目がギラリと光る。



「もう一人はステラ。
化物令嬢か‥‥」



ふむ‥‥
ふふふ‥‥


ティスリー王ウィーツは含み笑う。



「その化物令嬢、王家で見受けしてやろう」
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