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第三章

04 匂わせは無意味

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あぁ、申し訳ございません、つい‥‥と侍女が謝罪し、ソールがさらに続ける。



「ステラ様のお察しの通り、キール殿下には大変に御心労な事だったと思います。
ですが、殿下はこの6年間で、血の繋がりよりもっと深く尊い絆を得られた様ですから、大丈夫です!」

「あぁ、そうだったのですか?
そんな話は、私にはしてくれませんでしたが‥‥
でも、大丈夫なら、良かったです!」

「「‥‥‥‥」」



笑顔のステラの前から数歩離れ、ソールと侍女がコソコソと話し合う。



「侍女殿、ステラ様は全然分かっておられないようですね?」

「この一ヶ月、お世話させて頂いて分かったのですが。
他の事には凄く鋭い御方なのに、殿下に関しては鈍くなられる様で‥‥
ステラ様には匂わせは無意味ですわ。
キッパリハッキリ言って差し上げないと!」

「その様ですね。
ですが、キッパリハッキリ言うべきなのは殿下ご自身。
ここはもう、我々の出る幕ではないでしょう」

「そうですわね!
そうと決まれば――
決戦は卒業式場ですわね!
殿下から例の物は!?」

「ああ、バッチリ預かって来ました!
おい!」



ソールが玄関ドアの外へ声を掛けると、『はっ!』という返事と共に、次から次へと荷物が運び込まれてくる。

何事?と目を丸くしているステラに、ソールが跪いて告げる。



「こちらはキール殿下からステラ様へ、
卒業のお祝いの品でございます。
是非、お受け取り下さい」

「ええ!?
こんなにたくさん!?
い、一体何を‥‥」



ソールの前にズイッと割って入った侍女が興奮顔で答える。



「勿論、本日着用頂くドレス一式ですわ!
良かった!
何とかギリギリ間に合いましたわね!」

「え?
私は制服で出席‥‥」

「いけませんわ!
壇上でスピーチされるのならドレスでなければ!
それに‥‥
人生最大のイベントもあるかもしれませんし‥‥」

「あ‥‥そうですね。
卒業は大切なイベントですね。
だけど‥‥あれ?
聞いてない‥‥」



侍女とソールが


『匂わせは無意味とご自分で言ったでしょう』

『うぅぅ、もどかしいですわ』


などとコソコソやっていると――


ザッッ!


中堅侍女数人が祝いの品を手に立ち上がる!



「侍女長様!
時間がありません!
ただでさえ美し過ぎるステラ様にさらに完全武装して頂かなくてはッ!」

「‥‥ハッ!
そう、そうだったわね!
ステラ様、こちらへ!」

「え!? ひ‥‥
恐い‥‥
な、何でしょうか?」


お支度ですわッ!


ステラには、チーム侍女が声を揃えてそう叫んだ後の1時間ほどの間の記憶が――

――無い。
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