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第二章

35 遠い目

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執務に関して、カロンは何と言っていたっけ‥‥?

確か‥‥



――最終的に公爵令息が受け取る書類は事務員の作った書類をステラ様が仕上げたものです。


具体的に言うと、

まず、事務員それぞれから上がって来た書類を優先順位をつけて仕分けします。

次に、書類の不備――というより、最終的に公爵令息が判断しやすいように資料を整え、新たに調査が必要なら的確な指示で調査を命じ、資料、調査結果、過去や外国の例なども参考に分析、考察しまとめ上げたものを公爵令息に提出しておられました。

公爵令息は明確に正解の分かる形で渡された書類に、優しく親切に示唆された通りの答えや指示、サインをするだけでしたから、『公爵令息の執務』は大層楽だった事でしょう。

以上のステラ様が担って来た仕事は、本来、公爵令息の仕事ですので、今後は公爵令息がなさって下さい。

事務員の仕事ではありませんので丸投げしない様に――

しない様に――

様に――

――




遠い目でカロンの言葉を思い出したディングは立ったまま気絶し、そのまま3日間寝込んだ後は死に物狂いでスタード公爵家を立て直す為に必死に仕事に励み出したという。

だが、カロンから事情を聞いたディングの隠し恋人がディングの隠し子を連れてスタード公爵邸を訪ねて来て、丁度様々な罪で騎士達に連行されようとする半狂乱のクレアと鉢合わせて大喧嘩をしたり、領地から代表が訪ねて来て『自分達の主はステラ様だ!』と主張したり、問題は山積みで。

それでもディングは潰れずに頑張り続ける。

そのしぶとさはさすがに王家の血を引く者である。

最近、ディングは仕事の合間にふと遠い目をする様になった。

遠い目の、視線の先にはステラがいる。



そのステラは―――
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