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第二章

34 義母の嘘

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「ディング!?
何もそこまで‥‥」



父上が私に困惑した様な目を向ける。

どれほど着飾ろうとも薄汚いだけの淫売を庇おうとする父上。



「父上、大きな問題になった時、国に差し出さなければならない罪人です。
庇うべきではありません。
庇う理由もありません。
‥‥クレアが今日、カロンに向けて攻撃魔法を放ちました」

「‥‥ッ!!」

「では、私は執務がありますのでこれで」



私は執務室に急ぐ。

魔力に関して異常なまでに敏感な父上なら分かるだろう。

ショボい威力ではあったが、『攻撃魔法を放てる』という事は、クレアはそれなりの魔力量を持っているという事を意味する。


子供は、両親のうち、強い魔力を持っている方の親から魔力を受け継ぐ。

子供の魔力量は、強い魔力量の方の親と同じ量となる。

父上の魔力量は低い。

故に、攻撃魔法を放てない。


という事は、クレアの母の魔力量が強いという事になる。

だが、クレアの母は、自分は魔力量ゼロだと公言している。

つまり、クレアの母は、自分の魔力量について嘘をついている。

もしくは、クレアの父親について嘘をついている。


どちらの嘘でも父上には許し難い嘘だろう。


クレアの母は平民。

貴族で『魔力量ゼロ』は少ない。

父上は自分よりも魔力量の低い相手を伴侶としたくて、平民と再婚したのだ。

王家の血を引く自分の血筋に誇りを持っていながら、それでも自分より低い魔力量の相手を選んだ。

それ程に魔力量に関する弟への劣等感が父上を支配している。



「おかしな話だ。
私の母上は魔力量ゼロだったというのに」



思わずそう呟く。

父上は母上の存命中からずっとクレアの母と浮気していた。


美しく、魔力量ゼロ。

他国とは言え第五王女。

母上は父上にとって理想の相手だったはずなのにあの性格が父上には我慢出来なかった。

挙句の果てに王兄が平民に謀られるとはな‥‥

母上は母上で自分の性格が『魅力的』だと信じていた。

『掴み処が無くて、次に何を言い出すか分からない小悪魔的な私の性格は、男でも女でも夢中にさせちゃうのよね』

随分経ってから『頭の中がお花畑』という言葉を知ったのだが、まさにそれだと頷いた。



「‥…ん!?」



執務室に向かい机の上に置かれた書類に目を通そうとして、気付く。


執務よ、お前もか!?
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