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第二章

12 必死のクレア

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「ッ、
触るなッ!」



鬼の形相でそう言い捨てて浴場を出て行ったディング。

その後ろ姿を呆然と目に映しながら虚脱感に襲われ、浴場の床に座り込むクレア。

そのまま倒れ込んでしまいたいほどに体は疲労し、力を失っている。


(ま‥‥また!
また赤い魔力が消えている!?)


いつもは一度吸えば数日持つはずの赤い魔力が、さっき吸えるだけ吸ったのに、もう消えてしまっている!

何故‥‥

今は原因究明より、一刻も早く赤い魔力を補充しなければ!

ディングが出て行った後の彼の私室で何とかドレスを着、体を引きずる様にして自室へ急ぐクレア。


(早く! 早くぅッ!
あぁ、体が辛くて急げない!
もどかしいッ!
ガンバレ、私!
ディング様は又去ってしまったけど、アレさえ‥‥
赤い魔力さえ吸収すれば、何もかも上手くいくんだから!)


何とか自室に辿り着いたクレア。

魔玉保管庫から盗み出し、隠し扉の奥にしまっておいた赤い魔玉を手に取ろうとして――



「何なのコレはッ!?
真っ黒じゃないのッ!
キラキラとしたキレイな赤い魔力は何処へ行ってしまったの!?
あぁッ‥‥
どうしたらいいの!?
そうだ!
保管庫でまた盗んでくればいいわ!」



部屋に隠しておいた、今は魔力が空となり黒くなってしまった10個の魔玉を袋に入れて保管庫に急ぐクレア。

足はフラフラで目眩までする。



「ハァ、ハァ、
どうしてこんなにリン様と体力が違うの!?」



美しく、欲深く、強い。

それがティスリー王家だ。

王家の血を引くディングは絶倫だ。

そのディングに激しく抱かれたせいで、クレアの体は疲れ切っているのだ。



「私だって王家の――
同じ王家の血を引いているのに!」
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