39 / 120
第二章
06 始まり
しおりを挟む
それからカロンは大忙しで魔玉保管庫と邸内を駆けずり回った。
そして‥‥
「お待たせしました。
厨房魔道具、生活魔道具、ランプ魔道具の魔玉を6年前のものに交換完了です!」
「さすがに、仕事が速いですね!」
「いえ、私は指示しただけで、実際に作業したのは魔玉管理者たちです。
交換作業を見たのですが、ステラ様が充魔された魔玉は赤いので驚きました。
魔玉は魔力が空なら黒
充魔されていれば銀、
ですが保管庫のほとんどが美しい赤で‥‥
そう、ステラ様の髪の色‥‥シグナルレッドに輝いていて‥‥
まるで芸術品の様で見惚れてしまいました」
ちなみに泥を落としたステラの髪は美しいシグナルレッド。
6年間も毎日髪に塗り込まれていた泥は髪をダークグレーに染める染料なのだが。
以前、白クマさんがステラの髪が暗く染まり始めたのを嫌がったので、それ以来、ステラは髪に染料が入らない様に魔法で防いできた。
ステラは白クマさん次第なのだ。
「危険でなければ残して行けるのですが‥‥
仕方ありませんね。
では回収してこの裏門から出て行きますね」
「え、回収って‥‥
ここで、どう‥‥」
戸惑うカロンにフワリと微笑んで、スッと左手を上げるステラ。
と、邸内のいたる所からキラキラとシグナルレッドに輝く光がステラの左手に集まって来る。
キラキラ輝くシグナルレッドの光に包まれるステラ。
その姿はまさに女神!
夢の様な美しさにカロンは言葉も無く見惚れてしまう。
やがて光が治まると、口を開けたまま見惚れていたカロンに挨拶するステラ。
「お世話になりました。
カロン様にはたくさん学び、たくさん助けて頂きました。
ありがとうございました。
またどこかでお会いできると嬉しいです。
奥様やお子様も御一緒に。
それでは‥‥」
そう言って裏門から歩いて出て行くステラにハッと我に返ったカロンが叫ぶ。
「お待ち下さい!
そのまま、何も持たずに出て行かれるのですか!?
せめて金品‥‥装飾品だけでも‥‥」
「何も要りません。
それに、私が持っていた装飾品は子供の頃にディング様に頂いた数点のみ。
子供用ですし、そのまま置いて行きます。
捨てるなり何なり、ディング様が処理されるでしょう」
「‥‥なッ!
ディン‥‥公爵令息はあなたに何も贈り物をしていなかったのですか!?
あぁもう、本当に、別れて正解ですよ、ステラ様!」
「‥くふっ、はい。
贈り物は要りませんが、婚約解消はとても嬉しいです。
それではお元気で」
「あッ、待‥‥」
尚も追いすがろうとするカロンだが、邸の方から騒がしい声が上がり始めているのに気付き、ハァと深く溜息をつくと、邸に足を向ける。
あの馬鹿達――スタード公爵家にどう説明しようか?
気も足も重いカロンである。
そして‥‥
「お待たせしました。
厨房魔道具、生活魔道具、ランプ魔道具の魔玉を6年前のものに交換完了です!」
「さすがに、仕事が速いですね!」
「いえ、私は指示しただけで、実際に作業したのは魔玉管理者たちです。
交換作業を見たのですが、ステラ様が充魔された魔玉は赤いので驚きました。
魔玉は魔力が空なら黒
充魔されていれば銀、
ですが保管庫のほとんどが美しい赤で‥‥
そう、ステラ様の髪の色‥‥シグナルレッドに輝いていて‥‥
まるで芸術品の様で見惚れてしまいました」
ちなみに泥を落としたステラの髪は美しいシグナルレッド。
6年間も毎日髪に塗り込まれていた泥は髪をダークグレーに染める染料なのだが。
以前、白クマさんがステラの髪が暗く染まり始めたのを嫌がったので、それ以来、ステラは髪に染料が入らない様に魔法で防いできた。
ステラは白クマさん次第なのだ。
「危険でなければ残して行けるのですが‥‥
仕方ありませんね。
では回収してこの裏門から出て行きますね」
「え、回収って‥‥
ここで、どう‥‥」
戸惑うカロンにフワリと微笑んで、スッと左手を上げるステラ。
と、邸内のいたる所からキラキラとシグナルレッドに輝く光がステラの左手に集まって来る。
キラキラ輝くシグナルレッドの光に包まれるステラ。
その姿はまさに女神!
夢の様な美しさにカロンは言葉も無く見惚れてしまう。
やがて光が治まると、口を開けたまま見惚れていたカロンに挨拶するステラ。
「お世話になりました。
カロン様にはたくさん学び、たくさん助けて頂きました。
ありがとうございました。
またどこかでお会いできると嬉しいです。
奥様やお子様も御一緒に。
それでは‥‥」
そう言って裏門から歩いて出て行くステラにハッと我に返ったカロンが叫ぶ。
「お待ち下さい!
そのまま、何も持たずに出て行かれるのですか!?
せめて金品‥‥装飾品だけでも‥‥」
「何も要りません。
それに、私が持っていた装飾品は子供の頃にディング様に頂いた数点のみ。
子供用ですし、そのまま置いて行きます。
捨てるなり何なり、ディング様が処理されるでしょう」
「‥‥なッ!
ディン‥‥公爵令息はあなたに何も贈り物をしていなかったのですか!?
あぁもう、本当に、別れて正解ですよ、ステラ様!」
「‥くふっ、はい。
贈り物は要りませんが、婚約解消はとても嬉しいです。
それではお元気で」
「あッ、待‥‥」
尚も追いすがろうとするカロンだが、邸の方から騒がしい声が上がり始めているのに気付き、ハァと深く溜息をつくと、邸に足を向ける。
あの馬鹿達――スタード公爵家にどう説明しようか?
気も足も重いカロンである。
15
お気に入りに追加
1,048
あなたにおすすめの小説
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる