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第二章

05 スタード公爵邸から灯が消える時

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カロンがうんうんと頷きながら決定するのを見ながら、ステラが続ける。



「私が心配なのは魔道具の保守点検の方です。
6年前には新しくてそれ程問題が発生しなかった魔道具ですが、今は公爵邸のあちこちで壊れたり、動作が狂ったりと、頻繁に問題発生しています。
昨日までは私が修理出来ていましたが、これからは人を雇って行わなければなりませんので、その事をお伝えしなければと」

「ああ‥‥一体どれだけのものをあなたは‥‥
あなたを蔑ろにした挙句追い出すなど、スタード公爵家は本当に救いようがない。
どうせ魔力や魔法を馬鹿にしているんだ、
魔道具など使うのをやめるべきだと進言します。
彼等には魔道具の恩恵を受ける資格が無い‥‥」



カロンは額に掛かった艶やかな黒髪を無造作にかき上げ、悩まし気な視線をステラに向ける。

女なら誰でも腰を抜かすほどの色気がダダ漏れしているが、ステラはモフモフに夢中なので一切感知しない。

カロン自身も意識してセクシーオーラを出しているわけではなく、全くの無自覚なので、セクシーがスルーされていても気付かない。



「アハハ‥‥
私への評価が高過ぎです。
でも、仰る通り、必要無い魔道具は使うのを止めた方がいいですね。
噴水とか‥‥
広大な公爵邸に張り巡らされている水路に大量に設置されている噴水は一番魔玉を消費していますから。
今までは私が庭を歩きながら充魔していましたが、充魔師に頼むとなると、一ヶ月の費用だけでも今年の公爵家の動力費や設備管理費などを合わせた予算をオーバーしてしまいます。
厨房など、やめるわけにいかない場所は、とにかく点検をしっかりやる様にして、
‥‥って、もう私が口を出す事ではありませんね」

「歩きながら充魔って
‥‥そんな事出来るんですか!?
あなたは一体‥‥
あぁいや、あなたは女神だ。
女神には不可能など無いのですね」

「えぇっ? 女神!?
アハハ‥‥?
あ~~と、一番重要な事を伝え忘れるところでした。
私はスタード公爵邸を出るのと同時に、今現在スタード公爵邸にある私の魔力を全て引き揚げて行きます」

「‥‥え?」

「ごめんなさい。
でも、意地悪では無いんです。
私の魔力は、暴走しやすい性質なんです。
私が近くに居ればコントロール出来ますが、去るとなると無理です。
私が制御出来ない状態で私の魔力が暴走すれば‥‥
人が死ぬでしょう」

「なッ‥‥!」

「ですから、魔玉一つも残しては行けません」

「ですが、どうやって‥‥
魔玉保管庫に保管されている物だけでも膨大な数になります。
‥‥今邸内で稼働している魔道具に使用中の魔玉を含めると‥‥
取り外しにも時間が掛かりますし、ましてや邸外に運ぶとなると‥‥」

「あ、そこは大丈夫です。
魔力だけを吸い上げますから。
空になった魔玉は新たに充魔師に充魔してもらえば使えますし。
魔力の入っていない魔玉だけでも結構なお値段ですからね。
使いまわして下さい」



あぁそうだった、女神に不可能など無いのだったと虚ろな目で納得するカロン。





スタード公爵邸から灯が消える時はもうそこまで迫っている‥‥
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