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第一章

29 させない

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スタード公爵家は大切な一人息子の婚約者として、ステラを認めていない。


魔力封印の為に応答などの反応が遅れがちなステラしか知らない彼等は、

『綺麗なだけのバカじゃ、公爵夫人は務まらない』

と厳しく言い切る。


現公爵夫人(クレアの母)は綺麗ですらないバカで、さらに性悪の淫売である事は頭の片隅にも無いらしい。


だが、10才の少女を婚約者として届け出もせずに別邸に住まわせたと後でバレたら非難の目を向けられるだろうという事で、こっそり届け出を出し、こっそり婚約させている。

何年経ってもステラのバカが治らなければスッパリ婚約解消して追い出す。

多分そうなるだろうと、現公爵&公爵夫人は思っている。


ステラはそんな大人達の思惑に気付いていないが、白クマは気付いて、『スタード公爵家、クソだな』と思う。



「‥‥ディングを好きか?」

「‥‥え!?
う~~~ん‥‥
好きじゃない。
顔を合わせれば恐い顔でワケの分からない注意して来るし。
髪に泥を塗り込んでセットしろとか変な要求ばかりして来るし。
‥‥はぁ‥‥
そう言えば、明日からは肉襦袢付きのドレスを着なきゃいけないんだっけ‥‥
すごく重いんだよ。
泥髪もそうだけど。
‥‥うん、でも明日からは大丈夫!
魔力を使えるようになったから、上手く誤魔化せる。
私が辛そうじゃないと満足しないから、辛そうに見せつつ、魔力で体を守る!」

「何だソレ。
虐めか!?」

「分からないけど‥‥
髪の泥セットも、私が辛くなるまで‥‥
頭の重みで首が前に倒れて頭が上げられなくなるまで泥を増やされて行ったから。
ディング様はホント謎な人‥‥
私、そんな人と結婚するのかぁ‥‥」



まだ10才。

『結婚』が全然ピンと来ていないステラは他人事の様に言う。



「――させない」

「‥‥えッ!?」

「着いたぞ。
城だ」

「え‥あ、」



いつの間にか歩きながら話していて。

大きな茂みを抜けたら不意に視界が開けて城の真ん前で。



「あ、送ってくれたんだ!
ありが‥‥あれ?
白クマさ~~ん?」



お礼を言おうとしたら白クマは既に後方の茂みにガサガサと消える所。



「あのッ‥‥あぁ、
行っちゃった‥‥」



『――させない』って言ったよね?

何をだろう‥‥

どういう意味?


もう、白クマさんだって謎だらけだよ?
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