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第一章

21 だってバカだから

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ある日、いつもは夜に森の奥を訪れるステラが、夕方近くに現れた。

と言っても、白クマさんと会う場所とは反対方向。

ステラの前には、クレアとメイド2人が歩いている。



「クレア様、ここがこの森の一番高い場所で崖になっています」

「なるほど、いい場所ね」



そう言って足を止め、後から付いて来るステラを振り返る3人。

その顔は醜悪に笑っている。

だが、泥を髪に練り込まれ、結い上げられているステラは頭部が重くて首は前に倒れ、重さで顔を上げられない状態‥‥

つまりずっと下を見ている状態である為、3人の悪だくみでギトギトの顔には気付けない。


『話がある。
内密な話なので付いて来い』


とクレアに言われて付いて来たものの、森の中の一番高い場所まで登って来るのは、頭に重しを乗せているステラにとって大変な苦行だった。

ハァハァと息は激しく、首も顔も真っ赤で、全身汗でグッショリである。

そんな、肩で息をするステラをニヤニヤ笑いながら見る3人。



「クレア様、こんな高い場所、危険ですわねぇ?」

「そうね、落ちたら大怪我するのは間違いないわね」

「大怪我で済むでしょうか?」

「頭が重い状態だったら、死んじまうでしょうよ!」

「ハァ、ハァ、
‥‥ハッ!?」



いつの間にか近付いていたメイド達が両側からステラの腕を取り、一番高い場所へ引きずる様に連れて行く。

緩やかな坂を登って来たが、一番高い場所の向こう側は崖になっている。

こんな所から落ちたら、別に頭に重しが乗っていなくても死んでしまうのではないだろうか?



「あ~あ、可哀想に!
ステラはバカだから、散歩中に道に迷っちゃったのねぇ!」

「そして森を彷徨っているうちに、誤って足を滑らせ、崖から落ちたのですわ!」

「ん~~~、完璧ね!
誰も疑わないわよ、
だってバカだから!」

「‥あ、何を‥」



事態を把握して逃れようとするステラだが、10才の頭に重しを乗せた少女は左右から腕を取る19才と21才の大人の女達から逃れられる訳が無く。

さらに後ろからクレアに思いっきり背中を蹴られ、声を上げることも出来ずに崖から落ちて――――


ゴキュッ!



「やった! 死んだ!
見てよあの首!
アレ完全に折れてるよ!」
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