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第一章

15 クレアは昔からクレア(クズ)

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10才で公爵邸の別邸に住む事になったステラにとって、ディングからの制約が多い事や、公爵夫妻の厳しい態度など、辛い事が多かった。


それに、ある理由により、その頃のステラは常にぼ~~~っとした状態だった。

そのせいで、ある日突然訪ねて来たクレアとその母親ラン――初対面の二人は、



『何だ、この子、バカなんじゃん!
ぼ~~~っとしちゃって、マトモに返事も出来ないんじゃ、公爵夫人なんて務まるワケないよね!』

『そうね、やっぱりクレアがディング様と結婚するべきよ!
ディング様は、今は見た目の綺麗さにやられてるだけ。
大人になって色々分かれば、ルックスだけじゃ生きていかれないって分かるはず。
クレア、希望が見えて来たじゃない!
アンタ、頑張んなさいよ!』

『頑張んなくたって、コイツ相手なら楽勝!
フンッ、マトモに会話も出来ない役立たずなんか、すぐに捨てられるはずよ!
そうじゃなかったら殺しちゃえばいいし』

『シッ!クレア、そーゆー事は口に出しちゃダメ!
実行あるのみよ!』



――というような会話を延々ステラに聞かせ続けた。

既にティスリー王国語を習得していたステラにとって、辛い時間だった。



「オラッ!」
ドゥッ!


突然、クレアがステラの腹に蹴りを入れた。

倒れ込むステラ。



「ウッ、ゲホゲホッ」



苦しさに咳き込むステラの腹に更に蹴りを入れ続けるクレア。

その顔は無表情で、取りつかれた様に蹴り続ける。



「オラッ!
オラァッ!
バカのクセにディング様に色目使いやがって!
ディング様はアタシのものなんだよッ!
このクソがッ!
オラァッ!
オラァッ!」



反応が遅いステラは、なす術も無く床に転がったままクレアとランの蹴りを受け続けるしかない。

そう、娘の暴挙を止めるどころか、その母は一緒になって10才の少女を暴行しているのだ。

娘の為と言うよりは、あまりに美し過ぎる美少女に対する女としての嫉妬から。



「奥様、お嬢様、そろそろディング様がこちらにお見えになるかもしれない時間です」



二人の息のかかったメイドが二人に告げる。



「ハァ、ハァ、クソッ
本当は顔を蹴り潰したいのに!」

「バカ、クレア!
そんな事したらバレちまうだろ!」

「わかってっけどさァ‥‥」

「ホラ、さっさと行くよ!
アンタたち、バレない様にコイツをソファにでも座らせといて――よ!ッと」



ドゥッ!
「アッッ」



「キャハハ、ラスイチいいねママ!
じゃーアタシも!
死ね、バカ女!ッと」



ドゥッ!
「‥‥ッッ」



ステラの背中と腹に強烈なラスイチ蹴りを入れてやっと去って行くクレア達。

ステラが住むことになった森の中の公爵邸別邸に突然やって来て長々と罵倒し、揚げ句に暴行して来た母娘に、ワケも分からず震えるステラ。

体が痛くて、倒れたまま動く事が出来ない。

そんなステラを二人のメイドが乱暴にソファに座らせ、乱れた髪やドレスを整え、冷めたお茶を置き、『お茶を楽しんでいた体』を整える。



「どう?
こんなもんで」

「オッケーよ。
どこから見てものんびりお茶を楽しんでいる様に見えるわ」



メイド達は自分達の仕事に満足すると、座って固まっているステラに近付き、その頬を打つ。

軽く、赤い痕が残らない程度に。

次いで、額や後頭部を小突く。

足を踏む。

ドレスに手を入れ、太腿を強く抓る。


悪意と暴力への理不尽さと、次に何をされるか分からない恐怖にステラは固まって声も出ない。



「フン、いい気味!
外国の小娘がティスリー王国の公爵夫人になろうなんてするからいけないのよ!」

「アンタ、早く国に帰りなさいよ!
クレア様は見た目通りのバカだから、加減なんて分からない。
その内、殺されるのがオチよ!」



メイド達の執拗で陰湿な虐めは、ディングが訪ねて来るまで続くのだった。
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